得た と思うと同時に失う

林檎の皮を剥いていく
螺旋が皿に垂れていく
果物ナイフに映る甘いかおりに
私は涙を告げる

何も動揺することはない
唇はかすかに震えているが
芯は蜜を湛え ....
月が冴えわたる冬の夜
田園の雪の波が
月光に青白くきらめいて
をんなの肌に深く映ります
あぁしんど
酔い醒ましにちょいと表に出てきたけれど
伏し目がちな月影は
わかばにマッチをすっていま ....
卵が呼吸している
産声を内に潜めながら
類ない曲線で肋を明るく丸めて
{ルビ縁=ふち}を暗く発信し
ゆるやかな衝撃で交信するので
次元はゆらぎ鳴いている

重ねてきた年齢に
皺を深く刻 ....
青のお墓で悲しむことはありません

白の立ち姿を遠目で映します

赤のお空で産声は響きます

黒の後ろ姿を光で焼きつけてください


あなたのいた砂の層が
うららかに音を奏でて
 ....
ちろちろと燃える黒い火の
生ぬるさに黒く嘔吐する
塵灰と火種に
胸は重く焦れて
真空を穿つと
はらはらと零れる灰の
薄く瞬く
かすかな衝動を反射して
静止する
膨張の瞳の奥に
光は ....
枯れ落ちる
葉の上に声を震わせて
蒸散することのない深さ

やがて機能しなくなるであろう涙の透けた色に眩暈して

ああ雨の夜の崩れゆく{ルビ慟哭=どうこく}
スローモーションの叫ぶ先に
 ....


鏡に沈む
愁いは波紋となって
私を揺らす

深さの計り知れない底から
ひきあげて
ひきあげて起し
唇に秘密を添えて
黒髪を噛み薄ら笑う
見苦しくはないかと

歪なのは私 ....
きっとくる
いつものことながら
風は 遅れている

いっそ青の真空中の扉の
鍵を稲妻であけてしまおうか
ウロボロスの純真は
宙にくちづけして
星を孕んでしまったようだから

いつか ....
(足音が空に響く)
木枯しの吹く 門の影にひとり
傘を片手に
かんざしをなおし空をぼうっと見つめる
黒髪がしん
と光る寒さに
空はなにもいわず
そのままの形で をんなは立ち
「あ」
 ....
一歩一歩沈む
沈む
さ迷う森のあなたに
黒く湿った土が香り
白日夢の欠けた月が
まあるく青ざめて眠る

白む指先で
鼓動にふれる声が
ふるえて腐蝕へ沈む

をんなは
なぜか黙り ....
「      」

昨夜のあいさつは、耳からこぼれる雨のよう
に切なく潤い熟し、さららと色を空を映す欠
けては満ちる月の鏡。

お早う
もうこんな時間
そろそろ失礼します

耳に残 ....
どういう
ことかしら
丸い物を転がすなんて
何も転がさなくっても
わたしは、ひとりよ
自転する内臓が
閃いて

新陳代謝している
ぷふ
それも
わたしの限界を

諦めず
つ ....
視線をゆきます。

ひっそりとした
鋭角な色のない
告白にも似た存在の道

とぎすまされた意志の果てには重く輝く種子が宿る

涙で
洗われた深い瞳
そこに秘密を映す

答のない ....
真夜中の
骨の色素が熱を帯びて
暗く
暗く蒸発してゆくのです
未だに守れぬ約束へと

恐ろしく白い
わたしの骨は
いったい何を支えている
夢か幻か否現実か
未来は己で決める

 ....
つぶやいた名が深く響く
空は{ルビ鈍色=にびいろ}をして時を孕む

いらっしゃい必然的本体
欲する無欲が降ってくる
浴びる黒髪

月光のもとの
涙する獣道で
懐かしく鋭い爪が轟く
 ....
母の小さな手が
ざわさわと高菜をもむ
塩と合わせる音が
その歴史を刻むリズム

器の底に横たわる思念
そこには計り知れぬ
脈々とした息遣いがある

その高菜を味見した母が
{ルビ辛 ....
肌にふれる
ざわめきの波に
もういいよ
さすらうため息

とまどうことなく消した
たばこの残り火が
灰皿に冷たく燃えていく

おびただしい熱が
さみしいからだを満たす夜
かえりみ ....
黒いドレスの少女の目差は
夢を射貫いて遠く羽撃く

永遠に透けた墓場へと
涙のあとが堕ちてゆく

約束のための雨垂れが
含んだ土へと帰る

私は時を経て
最果てに芽吹く

お早 ....
アスファルトの上に落ちていた
虫の亡骸を
土の上へと
いつかその身を
風にゆらす花へと
帰すまで
この身のゆらぎを
諦めに似た憂うつで
{ルビ現=うつつ}にゆらします

回転する
 ....
透過傾向にある
あこがれを{ルビ禁=いさ}めて
風と{ルビ心中=しんじゅう}
(危うげに傾倒する風脈)
距離は
あこがれを侵食するのか
もう発生です
雨天決行よしなに

風はどちらか ....
(行ってらっしゃい)
宇宙の森で生まれた あなたと

あなたは今頃どの辺
七丁目の角かしら
目的は果せた?
わたしは洗濯をすますところ

留守のはざまで
不透明な静けさを淹れて飲むと ....
イチジクを手にとる
あなたの背中を思い出す

いつかの電車内で振った
人体骨格のねじれた手首に
無邪気な笑顔でこたえた少女
そこにみだらな星はなく
鮮烈なスタッカートが鳴り響いていたので ....
欲望の膨張に忠実にあれば
私は一個の無言する絶叫である。

現存する過去の連なりに位置する孤独は
現在の溺れる魚の視界だ。

我がための我の告白は
中心する周回の円の傾き。

彩られ ....
思いも寄らず
潤いすぎれば
うっとうしくも重たくなる時があり
そんな状態では
さっぱりとかわいてみたくもあり
それでいて
方法も知らない
わたしは
煙草に火をつけて
遠い夢を静かに吹 ....
響いた翼はためかせて
風の声へ飛び続ける

閉ざされた約束の傷
脈打つ光へさらして
こえられない私をみつめる
罪色の翼に歌う

{ルビ現在=いま} 解き放つ時
押しつぶされそうな空へ ....
これから、お出かけ

終りに出来ないの
生きることは
終りに出来ないの
私が言った
命を授かった時からとは言わない

失ってから知った
いかること
かなしむこと
よろこび
わら ....
罪色の花が薫ります。

あやまらなくては
いけないことがあるのですが、
これは秘密。

わたしは、わたし
これ以上これ以下でもない事実
ああ絶望を失った
その時から過ちは秘密となり果 ....
意識されない曲線の内側で
永久機関の少女性が調弾する。

その輪郭は振動し
奥深く鳴りつつ最果ての嘘を静める。

お先に失礼
直線的で清音の科白が膨張する空のもと
つきぬける(或いは私 ....
時は無常にも過ぎてゆきますゆえ
おおきな流れを知って
現在地の私を知らなくてはなりません

息を静かにして
痛みの在りか
涙の在りか
かなしみの在りか
在りか
ひとときの微笑
つた ....
わたしの血は
青く青く沸騰し
ゆらめきながら立ちのぼり
はてしなく透きとおった
青をふらせた

しなだれた渇望のからだは
ゆく先のしれないおもいと
めまいの予感を内包していた
いよい ....
こしごえ(898)
タイトル カテゴリ Point 日付
形見自由詩11*05/11/25 10:00
密約自由詩16*05/11/22 16:35
化身自由詩7+*05/11/14 17:06
沙の春(いさごのはる)自由詩12*05/11/11 15:11
黒い火未詩・独白6*05/11/10 12:44
未完の涙自由詩15*05/11/7 10:48
鏡目録自由詩12*05/11/6 8:52
裸眼の行方自由詩11*05/10/28 16:33
冬の葬列自由詩13*05/10/27 15:43
腐蝕自由詩14*05/10/25 12:50
朝帰り自由詩15*05/10/20 9:36
反逆自由詩7*05/10/19 9:46
自由詩15*05/10/18 11:20
虚空の骨自由詩16*05/10/15 7:21
恋時雨(こいしぐれ)未詩・独白7*05/10/12 16:43
漬物自由詩7*05/10/11 12:25
かくれんぼ自由詩15*05/10/10 10:53
上陸自由詩7*05/10/9 16:03
仰ぐ亡骸自由詩8*05/10/9 8:56
運転未詩・独白7*05/10/8 11:51
お留守番自由詩12*05/10/7 9:19
映日果(イチジク)自由詩12*05/10/5 10:33
本能自由詩4*05/10/4 13:29
恋する喫煙自由詩11*05/10/3 11:47
限界飛翔[group]自由詩9*05/10/2 12:25
約束の空自由詩9*05/10/1 17:05
過失自由詩11*05/10/1 17:01
説話自由詩8*05/9/29 10:04
在りか自由詩10*05/9/28 11:19
青い果実自由詩13*05/9/28 9:51

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