昔住んでいた家に居た
夢の中で
とても広い家だった
廊下を歩き
部屋から部屋へ移動した
懐かしかった

ふきぬけの階段を駆け上がり
手すりにのぼって
下を見た
 
  *

 ....
ときどき
胸がつまるような感覚に襲われ
苦心して 小さい毛玉を吐くのです
それから少し楽になって
ソファの 昨日と同じ場所に
まるくなります
窓の外が
この頃妙に明るいと思ったら ....
  
       

君はさながら落下した蝙蝠
五体投地のごとく身を投げ
泥に翼を打ち付けながら恍惚と匍匐する

堕胎した言葉の数々を
霧の森の果てる處に埋めに行く

生まれよう ....
山育ちなので 傷は自分で嘗めて治した
月がしだいに瘦せ細り また少しずつ太るのを
薄目を開けて時々見ながら
朽ちた倒木の根元の洞に潜り込み
飲まず食わずで幾晩も

痛みは知りません 傷つい ....
   

分厚い雨雲の真ん中が綻び
底なしの穴の遥か遠く
水色の空が薄氷越しに透かし見えると
遠い夕焼けが破れ目の縁を
なぞるように湿らせる

逝く人の
輪郭を切り取るだけの硝子窓
 ....
   
かさこそと微かな音を立て
木の枝に残った枯れ葉がささやきあっていました
きれいな空だね
うん、きれいだね
風が気持ちいいね
うん、きもちいいね
もうすこし吹かれていたいものだねえ ....
秋の夜は 濃さを増してゆく群青の空の深い深い奥のほうから
細い真鍮の鎖が二本 長く垂直に吊り下げられ  
両の手でそれに掴まり
先端の細い横棒に ピエロがひとり腰かけていたのでありました
 ....
小人たちが落ち葉に掴まり
空の浅瀬で波乗りしている

深い眠りに沈んだ夏を
呼び覚まそうとする者はいない
さらさらと風は
思い出のほうから吹いてくる

小人たちは歌っている
こん ....
ベンチよりも
ブランコがいい

想いきり漕いで空まで行けるかと錯覚し
失速して引き戻される

そしてまた反動で舞い上がる
思いもよらない高さまで

雲梯をコツコツのぼる握力も根気もな ....
周りのみんなが眠っているのに自分だけが目覚めている夢を見た
起こそうと呼んでも誰も返事をしてくれない

窓の外で陽射しだけが明るい
いびきが響くま昼間の午睡

眠っている大人たちの間に身を ....
ホームで見上げる架線の五線譜
トンボの音符が泳いでいた

雲のト音記号のとなりに
カラスの休止符が舞い
壁の時計はフェルマータ
パンタグラフはデクレッシェンド

発車を告げるアナウンス ....
川辺で凹んだサッカーボールを見つけた
泥に汚れていたので 水際で洗った
すると驚くほどつやつやと輝きだした
それは幼い頃に亡くした僕のボールだった

日に当てて乾かすと次第にへこみが膨らんで ....
 

部屋の灯りを消し カーテンの隙間を覗いたら
霧に滲んで電線にひっかかっている
ミカンの房のような月がいた

おやすみ 泣き虫の月


夜の周縁を震わせて
電車が横切ってゆく
 ....
花ならば
一番うつくしいのは咲き始めの頃
おずおずと開きかけたつぼみの輝き

咲き誇る満開の時を過ぎ
花びらを散らす
それで終わり?
歎きながら枯れる日を待つ?

いいえ そこからま ....
  
         
叔母さんのお葬式の日
その娘であるいとこが言った
お棺の中に手紙を入れてもいいんだって
良かったら 手紙を書いてくれない?

控え室に便せんとペンが用意されてい ....
疲れ果てて目が覚めたのは
眠っている間によほど遠いところまで旅してきたからかもしれない

虚脱した魂を空っぽの器に見立て
ピクニックのお弁当のように
ひと品 ひと品 飾り切りして詰めていく
 ....
14歳の頃 心から信じていた先生が言った
「今の君には無限の可能性がある」
「でも君がそのうちの1パーセントの可能性を選択した瞬間に、残りの99パーセントを失うことになるのだ」と
それは冷酷な  ....
押しボタン式の信号が青になったので、
数名の幼児を連れた保育士さんとおぼしき人が声を掛ける
「さっ、渡るよう」
すると先頭の子どもが尋ねた
「どうしてわたるの?」
すかさず若い保育士はこ ....
網にかかるのは風に騙され
流れ着いたポリ袋
それとも詩の振りをしたがる風が
書き散らしたメモ書き

アパートの一室で
誰にも知られず
死んだ男の履歴

携帯電話を所持していても
誰 ....
張り巡らされた枝の投網を
小鳥はすり抜ける

月の形に貼られた和紙が
空の水色を透かし

細い絵筆を並べたような
ポプラの ....
 
                

冬の地下室へ下りていく軟らかい階段を
見つけられない影たちが
窓枠に囲まれた薄闇の奥にたむろするので

もうないはずの衝動に駆られ
割れて逆さま ....
それは自分が発した小さな声の反響
何度も何度も岩にぶつかり
誰かの心に跳ね返り
大きく育って
戻ってくる
私が生んだ子どもです
だから私が引き受けなければならない
彼らを駆除し根絶する事 ....
もがいて水面から顔を出す
ように息をするかろうじて
ポジティブ思考
が大事です
足首に錘
つけられても
まだ笑えます
夢も見れます
今日一日を楽しみに
起き上がります
階段をおりて ....
線路の脇の赤茶けた砕石の荒野
そこに芽吹いてしまったジシバリ
細長い茎のてっぺんに
ちいさいタンポポに似た花を掲げ

電車が来れば車輛の下に潜り込むほどレールに近いのに
倒れずに
ふらふ ....
国道で
風上に向かって泳ぐトンボをみた
光の隙間を
上流に向かうメダカのように


少し斜めに傾いて揃って空を見上げる街路樹

一斉に翻る木の葉
光を透かして揺れるエノコログサの長い ....
わたしがぞうさんだったころ
大きな大きな夢と希望と
ありあまる時間と可能性と
努力すればいくらでも磨ける若さと才能と
確かな記憶と集中力と
眠らなくてもどこまでも歩ける体力と
持て余すほど ....
そこまで惨いことをしてみせなければ
わたしたちが
気付けなかったとお思いですか
それほどまでして
ただ懸命に生きていた人たちをいたぶり苦しめなければ
地道に生きることの大切さと
命の尊さを ....
毒があるんです そういって
その花は泣いた
拭っても洗い落としても 
緑の茎を伝う紫の雫
花びらの裏側に
にじみ出てくる薄暗い素性
どうしても許せないという
戸惑い 悩み
毒などない振 ....
浅い眠りがぷつぷつ切れて
各駅停車の鈍行便
どこまでも続く雨音
霧のかなたで零れる警笛
深く
時間の底を潜っていく
ナイフのように黒光るレール
見覚えのある景色を切り割き
鈍く軋む
 ....
あなたから
教わったのは
こころの殺しかた
海に染み込んでいった夕陽は
逆さまの血のしずく
波にたゆたう血の油

何度も殺しました
あなたに気に入られようと
あなたに見つけてもらえ ....
Lucy(485)
タイトル カテゴリ Point 日付
夢の中自由詩822/12/26 22:32
薄明自由詩1222/12/16 20:21
解読を拒み続ける狭い迷路だ自由詩922/12/12 20:49
水脈自由詩1422/3/1 22:29
終章自由詩1421/11/22 20:01
木の葉自由詩3*21/11/5 13:06
空中ブランコ自由詩5*21/10/24 20:06
波乗り小人自由詩7*21/10/15 20:58
ブランコ自由詩5*21/10/2 16:38
午睡自由詩5*21/9/12 21:14
プラットホーム自由詩2*21/8/30 21:47
ボール自由詩4*21/8/24 20:51
おやすみ自由詩9*21/8/20 21:25
花ならば自由詩421/7/23 10:05
手紙 ─ 人を悼む ─  自由詩7*21/6/14 12:56
朝のうた自由詩421/5/27 22:18
空の扉自由詩12*21/5/11 23:08
「さっき駅前の横断歩道で…」自由詩3*21/4/20 21:16
変死自由詩7*21/1/25 21:20
光の春が自由詩8*21/1/25 20:30
地下室へ下りる階段を自由詩7*21/1/19 21:06
レイシズム自由詩320/12/24 22:15
発信自由詩11*20/11/25 20:21
いつからそこにいたのだろう自由詩10*20/10/15 20:50
ポプラ並木の上の空自由詩7*20/8/26 15:57
わたしがぞうさんだったころ (童謡「かくざとういっこ」によせ ...自由詩620/8/20 21:09
平和の祈り自由詩1120/8/9 22:00
毒のある花自由詩9*20/7/11 20:34
夜が更けていく自由詩8*20/7/10 22:02
夏の思い出自由詩10+*20/7/8 17:06

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