まだ未熟な羽をもつ
小鳥が
高く 
遠くに
羽ばたくことを求め
嵐の日に
強風に乗って飛び立つ事を
選んだように
君は
わざわざ試練の時に
身を捥ぎ離すようにして
 ....
そよとも揺れないすすきの穂が
あたりに白く浮かぶ

とおくを
スローモーションの足どりで
駆けて行く
赤いセーターを着た少女

お腹がみるみる膨らんで
まんまるになったかと思 ....
駅へ降り立った時
まだ空は青みを帯びていた
ちょっと買い物をした隙に
すでにとっぷりと暮れている
荷物を提げて
街灯が薄く照らし出す歩道を急ぐ
呼ばれた気がして
見上げると
鎌のように ....
古いノートに書かれた文字を
辿って行くと
余白にぶつかって
そこから先へ進めなかった私がいる

もう書けない
諦めてしまおうと
何度も思った

余白の裏に
余白の隅に
挫折の名残 ....
成層圏の牧場に
幾千匹もの
群れなす羊

どこまでも透明な
追憶の彼方

舞い降りる
黄色い{ルビ木=こ}の葉

堆積する秋

深海の底に届いた
月光のように
青ざめた記憶 ....
平然と響く
アナウンス

「一番線を 列車が 通過します
 ご注意ください」

急流の中に
取り残されてある中洲のように
ホームは心細い

トンネルの出口のように
はずれに開ける ....
空き地を渡ってきた風が
草の匂いを閃かせながら
耳もとで
ささやく
「ただいま・・・」

あっ
帰ってきたの?
君と出会ったのが
いつだったか
どこだったのか
思い出す前に
懐 ....
お昼休みの中庭に
理科部の男子が
窓から放したハムスター

クローバーをむしゃむしゃ食べた

タンポポも食べるよって
誰かがいった
ストローみたいな茎のはじから
食べていって

 ....
王女の名を持って生まれ
運命のいたずら
雑草の間に
根を下ろすことを余儀なくされても
小公女のように気高く
品位を忘れぬ立ち居振る舞い
汚れない肌
たとえ
嵐になぎ倒され
獣に踏みに ....
にぎりしめていたこぶし
ノックすることも許さず
かたくなに
閉じられていた小部屋から

誰にもうちあけたことのないまま
幾重にも折りたたまれていた
願いが
決意のように
ひらく

 ....
サーカスも消えた広場に
日付が変わった南瓜の馬車
燃え落ちた隕石
既に 青くない地球


十二色のクレヨンを握り
極彩色のテレビに見とれている児


やり過ごされていく毒の風に晒さ ....
大きな雲は
空の広さを証明する

こんなに空が深くて
澄んでいることを

青空だけでは
はかりしれない
秋の午後を脅かして
突然の雨
雷の轟音に
台所から急いで
手をエプロンで拭きながら
昼寝している児のもとへ
布団に起き上がり
今まさに泣きだそうとしていた彼は
私の胸にかじりつく
よ ....
慕情とか
郷愁とか
そんな古めかしい語句を
あてはめてみたくなる
吊り革につかまってみていた
車窓の風景

たくさんの人々の日常が
幾重にも重なり すれ違っているはずの
それでいて私 ....
あかねにきらめく雲母の
ひとひら
水面に
さかさまの
稜線
今も
背伸びしている梢

憎しみだった


どこから
逆流したのか
痩せ細る
影を滲ませ
それは 確かに
 ....
縮む花びらを
沈め
冷えてゆく水
固まる空に
さらに羽ばたく翼を見ようと
折れ曲がる
言葉の湖に生き延びる
魚の一匹ではなく水面に辛うじて浮かぶ
枯れ葉の一枚でなく
怒涛となって
 ....
屋根を叩く雨がやみ
木の葉の触れ合う音に換わる

近くで車のドアが閉まり
ガレージのシャッターが
じわじわと上がる

子どもたちが
何か言い合いながら通る
窓があいているので
はっ ....
その崖のほとりに
一輪咲いているはずの花は
どうしても一目見たくて
見ると 手折りたくなって
手折ると持ち帰りたくなり
持ち帰ると
さて どうしても
挿した花瓶から引き抜き
力任せに叩 ....
夜明け前の
ビルの間の木々を揺らす

薄暗い雫に濡れた窓を叩き
乗り捨てられた自転車の汚れを洗い
ゴミバケツに溜まる闇を濯ぎ

梢をふるわせ
立ちのぼる

人通りも途絶えた路地裏の ....
無表情な父に声をかけると
その霧深い意識のずっと奥の
宇宙のかなたから
帰ってくるのかと思うほど
遠いところから
ゆっくり
微笑みが皮膚の上に戻ってくるのが
見える

「おとうさん」 ....
コトバなんか信じちゃいけない
コトバになんて
あなたの思いを託してはいけない
コトバに
命なんか
絶対に預けてはいけません

それは持っていかれてしまう
たちまち浚われて
悪魔の手先 ....
空の遥かに
光る雲あり

積乱雲の崩れたあたり

擦れて浮かぶ記憶を尻目に

遠くから呼ぶ
声があり

夕立ちの切れ間に
キノコ雲の翳が崩れて

大上段に正しいことだけを言お ....
わたしたち本当に
三十五年も会ってなかったのかしら

ベルギービールの酔いはまわる

芳醇な香り

懐かしいというより
現在形の友情

ゆうじょう?
友情ってなに?
暫く使った ....
住む人の居ない
山の墓地

お盆には賑やかに花々が供えられている
生まれ故郷を訪れた人の形跡が
風に揺れる

たった今まで
誰かがそこにいた証拠
ロウソクの炎が
消え残り
線香の ....
空を滑り落ちた小鳥のように
翼をたたんで
ムクゲが地面に死んでいる

ぽとり
ぽとり
眼をとじ
命を閉じて

どこまでも拡がっていく夏空の下
次々に開く
新しい花達のふもと

 ....
プラヌラスキフラストロビラエフィラ
呪文のように覚えているのは
予備校の先生が絶対にこれだけは
おぼえておいて損はないぞと言った
生物の秘密兵器

必ず出題されると信じて
歩きながら
 ....
足をつけ
渡ってみたら
浅いせせらぎだった
キラキラ
光を浮かべてた


攀じ登ってみたら
低い壁だった
何一つ遮ることなどできないような


飛び越えてみたら
小さな亀裂に ....
   象

ふるさとの草原も夕日も君は知らない。君の母親も父親もふるさとを見たことが無いからその広大さも見事さも話に聞いたことすらない。そこに憧れることもなく、ただ与えられたスペースを歩き与えられ ....
どの道も
少し進んだところでたち消える
草原の三叉路
生い茂る草は風の方角に
倒れては起き上がる波

恋慕い
探し求めたものを見失い
(つまり触れ得た事のないものの喪失のあげく)

 ....
おいてきたものに
未練はない
きれいさっぱり
忘れるのみ

遠くに
海を見た坂道も
庭に置いてきたつるバラも
咲きかけていたリラも
つぼみだった
ラベンダーも

既に
季節は ....
Lucy(485)
タイトル カテゴリ Point 日付
少年自由詩16*13/10/19 13:49
夕日  (詩人サークル「群青」10月のお題「無」から)自由詩12*13/10/17 21:42
三日月自由詩15*13/10/14 15:34
余白自由詩13*13/10/10 22:58
赤いスカーフ自由詩28*13/10/6 21:26
ホーム自由詩18*13/9/30 14:32
野を渡る風自由詩13*13/9/26 21:40
ダンデライオン自由詩19*13/9/25 8:52
孤島の白い髪飾り自由詩20+*13/9/23 20:56
風の花自由詩15*13/9/21 21:36
午後の祈り自由詩19*13/9/19 10:17
今日の空自由詩12*13/9/18 19:55
雷雨自由詩12*13/9/18 9:40
夕暮れ自由詩14*13/9/14 15:06
山の学校 ー秋ー自由詩8*13/9/8 10:36
秋の祈り自由詩9*13/9/8 10:26
秋の音 (詩人サークル「群青」9月のお題「音」から)自由詩7*13/9/8 0:31
崖のほとり自由詩11*13/9/4 21:14
風を見る自由詩10*13/9/4 20:51
父を見舞う自由詩20+*13/9/1 19:23
もっていかれる自由詩11*13/8/28 20:09
8月の青い空 自由詩8*13/8/27 15:59
ピンクの象自由詩11*13/8/21 22:25
お墓参り自由詩19*13/8/18 17:18
「ムクゲの咲く朝」 (詩人サークル「群青」8月の課題「漠」 ...自由詩17*13/8/14 17:28
ミズクラゲの一生自由詩26*13/8/8 23:26
思い切って自由詩18*13/8/3 19:55
動物園(2)自由詩19*13/7/17 21:59
旅の終わり   _渡らない鳥に自由詩23*13/7/13 22:37
おいてきた自由詩13*13/7/1 23:34

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 
0.1sec.