生まれながらに海にして
私は誰も待っていない
浮かべて揺れる大きさを
舟も陸もが優しさと
讃えはするけど繋がれず
生まれながらに陸にして
私は誰にも出会えない
在り続けるこの風体 ....
ゆるやかな住宅地、カーブに沿って咲いているひなげしの頭をひとつずつ摘みながら目の前を通り過ぎる乳母車を押した女に俺は尋ねる「俺は誰だ」ひなげしまみれの女は重たいまぶたをぴくぴくさせながら言う「知らない ....
はるあさく みどりをまつは 黄卵と よるのせにさく ふくらみゆく月
ゴーサイン、そうあるべきでないこと、線路の交差、乗換え案内、小型化、軽量化、構造の繁雑化.....
冗談、胃袋みたいな鞄、鞄みたいな小部屋、小部屋みたいな恋愛、恋愛みたいな冗談。
腹痛、睡 ....
それがまるでさいごだってみたいにせつないかおしてくれよ。
願うだけせつなくなることをなんでもして
*
いろいろな噛み心地のプラスチックを食んでいる感覚
自分自身をつみあげた先 ....
口のなかの、右側の、親知らずを抜いたところが腫れている。そこはたびたびそのように腫れるのだけど、それは、「ばいきんが入った」せいだと、ずっと思っている。むかし長年歯列矯正をしていたころにも、そのよ ....
かなしみを束ねたように咲く春と 曇天に鳴るあさましい胸
振り向けば 散りながら咲く優しさを 知っているから前しか見れない
長いうでに春風をからませて
すいすいとあるいていく
かび臭いまちを泳ぐように
恋はもう
ずいぶんまえに終わっているのに
曇天に胸が鳴る
彼がふりむいたら
また恋がはじまってしまう
....
好きで、よくライブへ行くのだが(インディーズ・ロック・バンドが多く出る)、どうしてもベースに見入ってしまう。ギターやドラムやヴォーカルやキーボードももちろんそれぞれに素晴らしいのだが、ベースの、あ ....
いろいろな男の子をみてきた。みなすばらしかった。もちろんなかには反りが合わない子もいたけれど。たぶんわたしはもともと生まれつき、男の子がとても好きなのだ。
男の子を、欲しいなと思うとき、心はざわ ....
騒がしい夜が好きだが、静かな夜も好きだ。静かな朝はもっと好きだ。愛しているといってもいいくらいに。
きょう、ここには静かな朝が来た。完璧な朝だ。空はつるりとしていて、朱から藍を見事に染め上げてい ....
朝が来た
すべりこむように穏やかに、
それでいて凄いはやさで
朝が来た
それがどのくらい奇跡的なことかを
きみはもう知っている
つるつるの空は
今日を浮かべている
そのしたに何が起こるかはだれもわ ....
あいまいなかんじで立っていたらたおれた
しおれた花笑ってるばあいじゃなかった
あした会いにいくねって言ったのに行けなかった
あしたはあしたじゃなくなっちゃった
ぼくのことなら
忘 ....
辿りついて
おもうことは
辿りつきたくなんてなかった
行きたい場所に
行きたいときに
自分で行きたかった
流れついて
おもうことは
流れつきたくなんてなかった
おおきなものが
....
むすびめを ほどいてむすび また解く 甲にうずまく 視線の熱よ
はじめては さいごのように あとをひき 最後のときにはしることもなく
風は蒼 夜が海なら君は白 どこへも行けない絵筆が僕だ
桃色の裏側に打つ純情を 絞りだしたら赤黒い澱
君が腕を切った
赤く腫らして痛い痛いと振り回すので油をつけてやった
君が腕を切った
赤黒い血がほんの少しだけ滲んでいた
瓦礫の下からは
今日も顔のわからない人間が出てくる
積み重な ....
愛というのは、感情ではなくて状態ではないかと思う。持続するある関係性の状態を指すのではないか。あるいはその関係性のなかにいる自分自身の状態。
これは愛に限ったことではないけれど、感情があまりに一 ....
花びらははかなくきれいうすいほど おんなのことは少し似てるね
その間際 はかない音を散らすのは つぼみと脱皮するおとこのこ
女ならひとりでに咲くものかしら 触れられることも触れることもなく ....
誘う手のまにまにのぞくかなしみよ ひとりよがりの罰か褒美か
錆ついた猫
が
道路の脇で死んでいる
朝も
夜も
冬も
春も
黒も
白も
雨も
夢も
涙も
なにものも
この猫を
侵略しない
目を閉じると
とても美しい一艘の舟があって
遠くまで来たことを知る
あなたを欲しがることと
あなたとの時間を欲することが
べつものであることも
もう知っている
舫われるべき岸辺に ....
あの日
はみだして
不自由だった
あの日
なにもかも与えられて
不十分だった
あの日
とかげのしっぽは
やさしかった
迷子になった路地で
迷いはなかった
あの日
太陽も月も ....
さて、何から語ろうか。
イメージできるかい?
愛を感じるかい?
どこからはじめようか。
君はイメージすることができるかい?
イメージ、それはたぶんある種の才能だ。それがぜんぜんできな ....
恋人はときどきすごくやさしいので、わたしは我を失ってしまう。
恋人は、完璧に、臆面もなく、溢れるようにやさしい。それはでもただしいことではないのだ。
ニュースをみて泣いたのは、恐ろしかった ....
どんなに嘆いてもかなしんでも
そのかなしみはどうやったっておいつかないさ
だって地面は割れたし津波は来て奪っていった
そのときわたしはドーナツ食べてコーヒーのんでた
わたしはそこにいなかった
....
ふいてもふいても
いっこうにひかない悲しみのなかで
笑わなければならない悲しみを
温めてなお笑っていることを
強さと呼ぼうか
明かりの絶えた街中で
星を見つめるまなざしを
つめた ....
泣く場所を選ばずはらり梅の花
沈丁花香りの先でしなやかに
整えられた部屋のなかで
足をそろえて座っている
でもつま先が冷えるのは
仕方のないこと
海や山や空をゆめみて
窓の近くに立っている
ほそい雨が降り出して
つま先が冷える
た ....
11歳までマンションに住んでいて、そのころそこには同年代の子どもたちがたくさんいた。とくに仲が良かった同い年の女の子が三人いて、よくうちに来たり、家に上がらせてもらったりしていた(マンションなので、行 ....
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