壁には緑十字。
せわしなく響く電子音、明滅するランプ。
工場で人を動かすものは。言葉以前の。

  *

あぶらぎったシニフィエが
タンクになみなみと揺れ。
それは銀色の極太チューブに ....
蚊柱の中でこぼこの肌さらして立つ
蚊よ虻よ好きなだけ
私の血を吸うがいい

痒みならば感じることができる
傷を癒やすためにではなく
傷口を広げるために
ふたまたにわかれた赤い舌が
私の ....
朽ちた栗の切り株のそばアシグロタケ
硬くて喰えないのだけど
それなりに旨いダシがでるらしいので
ちょいとひっくり返してみたら

みたことのない黒い甲虫がいて
鮮やかな赤い星を背負って
せ ....
あいつがスペインの爆弾を落とした
私がねむっているすきに
まだ続いているとどろきに
ざらつき乾いてゆく私の舌

枕のしたに隠す靴下
あいつの彼女がきたときに
靴下を見つけて大騒ぎに
な ....
かつて高貴なひとびとは
憂き世離れた恋に身をやつし
夜空を見上げては月に思い寄せ
浜辺を見やっては海に思い投げ
紫の綺羅 星のごとく

そのころ私のご先祖さまは
きっと真っ黒けに日焼けし ....
温室の入口にある日章旗の
赤い円を凝視する。
凝視する。
ツと目を逸らすと、
隠された神の緑があらわれる。

それで緑のためには赤が必要なのだと知った。

穴を掘るのは重労働だが
い ....
処女性は半減してゆく、
いちどの行為で半分に、
いまいちどの行為でさらに半分に、
しかしけしてなくなることはないのだ。

雨音を聴きながら少女は肉に舌を這わせる。
それは反応しない。

 ....
簡素な水色のシャツが夏のお気に入りである。
短いスカートから突き出た貧弱な脚。
フラッパーの髪はもつれて乱れている。

秋は青灰色のワンピースが好きだ。
胸にラピスラズリのブローチをとめる。 ....
何か書くと誰かを傷つける、つー話はすでに書いた。今回は、すでに何かを書いて、そのあと何も書かずにいたとして、「何も書かないでいる」そのことによって誰ぞを傷つけることもあるのよとゆーことを書きたい。最初 .... 昨日チャットしながら書けない理由について考えていた。書けない理由は明白だ。書くと誰かを傷つける気がして怖くて、それで書けないんである。しかし何を書いても誰かを傷つける恐れは常にあり、単なる冗談書いても .... 嫉妬、
というものが理解できない。

私にわかるのは薄い青灰色した感情だ。
そんなものは嫉妬じゃない嫉妬の色は紫なんだと
昔むかし恋人に言われた。
私はそのときとても傷ついたけれど
傷と ....
さんざ酔っぱらって目がさめたら
三人でベッドに転がってたよ
どうやら3Pやっちまったよわはは

という話を
ともかくそういう話ができる男に話してみたが
(上記三名にその男は含まれない)
 ....
午後の熱に散乱する
私の欠片を
拾い集めているひとがいる

ポケットのなかの綿くずのような
灰色の球が
ふよふよと窓から入ってくる

これが夏だったろうか
こんなのが夏だったのだろう ....
青いタイルのベランダに降り積もる羽蟻の死骸
雨のない夏 睡魔に襲われる夕刻

ゆっくりと旋回しながら
飛行少年が落ちてくる

脚を尖らせて私は歩く

あなたはコンパスで地球を計り
風 ....
眠りこけていた君を
ふとみると
蛹になっていた

ジャコウアゲハの蛹に似て肌色の
妙になまめかしい蛹だ

蛹の下部の
やがて尾になるであろう部分だけが
ぴぴんと動くが
だからといっ ....
キャー!
と悲鳴をあげる彼女は、
スクリーミング・クイーンです。

彼女はほんとにいろんなものが怖いのです。
ゴキブリが怖い。
ヘビが怖い。
ナイフが怖い。
電車に乗れば乗客の視線が怖 ....
飾り気のないティー・カップにアッサム
白濁の理由はミルクではなくて

「また毒いれてんの 飽きないねえアンタ」

白い家の少女は声の主を見上げる

そのひとは少女にとって憧れのお姉さま
 ....
ある年の秋
青空に爆炎のあがる映像を見た直後
私は外に出て夜空をみました
九月の半ばでした
ひくい空に
みずがめ座がじんわりと広がっていました

みずがめ座の星サダルスードは
大地に幸 ....
新しいリズムはとりあえず不要です、
ただ一つのリズムを繰り返してください。
確実に、丁寧に、譜面を追ってゆけば、
高まりゆく陶酔がそこにあります。

繰り返し繰り返し繰り返すリズムは ....
長いこと油を注してくださらないので
歯車がきしみます。
近ごろはゼンマイも巻いてくださらないので
動きはすこしずつ鈍くなってゆきます。

けれどわたしはまだ動けます。
きこきこと歩きます。 ....
手に吐きダコができてるじゃない
吐いてばかりいると歯がボロボロになるよ
下剤を使った方がまだマシだけど
吐かなければならないのなら吐くしかない

気が滅入ったら口紅を変えるといい
 ....
私の部屋には通り者が出ます。
半透明の身体に半透明の武具をつけて
ゆらりゆらりと私の部屋を横切ってゆきます。

私はかれを放っておきます。
かれの半透明の武具が鈍くひかるとしても。

そ ....
夜の底で
とうめいな液体を
グラスに注ぐと
風景がゆがみはじめる

どこにもない空間の
だれのものでもない腕に
すがろうとしている
私の指先に

流れるはずのない涙と
あるはずの ....
まだ宵のうちの喫茶店に
吸殻と空のコーヒーカップと
素っ気ない挨拶を残して去る
そのひとを見送ったあとで

私は煙草に火を点ける
何気ない仕種に見えるよう
すこしだけ気を使って
(そん ....
五月半ばの空は晴れ渡り
真っ暗な空に星と太陽が並んで光る
という風景を見るためには
大気をすべて消去する必要があるけど
そこまで無理することないわ
面倒だから五月闇で充分
まだらに曇る空か ....
1.

手紙は書きかけのままテーブルの上で黴びてゆく。
青黴、赤黴、黴の色ってそんなに単純だったかしら。
ふくりと黴が起きあがる、
まき散らされる胞子は常に薄い紫で、
私の部屋はすっかり煙 ....
ヴィレブロルト・スネルは己の運命も未来も悟りはしなかった。
しかし光は己の運命を知っていた。

もっとも速くあれ

それが光の命題であり運命であり
屈折しても反射しても散乱しても構わなかっ ....
歌舞伎役者は
立っているだけで美しい
その凛とした立ち姿は
長い鍛錬の賜物だ

私の言葉よ
おまえは立っているか?
インターネットの言葉の荒野で
おまえは立っているか?  ....
あなたは幸福ですか?
あたしは幸福です

あたしはいれたての珈琲の香りを楽しんでいます
ずっと昔に録音されたうつくしい音を楽しんでいます
江戸時代に記録されたルポルタージュを楽しんでいま ....
女子高でてから十ン年間、ずーっと女の花園みたいなところで働いてきた。だから女ばかりの現場には慣れている。女特有の(と思われている)陰口いじめ噂話嫉妬、家庭や生理を理由にした甘えだらしなさ腕力不足そのほ ....
佐々宝砂(921)
タイトル カテゴリ Point 日付
工場安全週間[group]自由詩606/8/6 11:26
虫の女王自由詩206/8/6 11:23
黒い針金自由詩706/8/6 11:22
Spanish bomb自由詩506/7/15 4:49
むらさきにほふ自由詩14*06/7/15 4:39
緑のために自由詩2*06/6/21 22:19
赤のために[group]自由詩606/6/21 22:18
青のために[group]自由詩406/6/21 22:17
あるいは書かないでいて、さえも。散文(批評 ...2*06/6/10 23:15
書けない理由(mixiより転載)散文(批評 ...9*06/6/10 18:54
トリプトファンレス・トリプル3[group]自由詩006/5/29 0:06
トリプトファンレス・トリプル2[group]自由詩106/5/29 0:05
朱夏の鳥自由詩406/5/22 20:23
風の名前自由詩706/5/22 20:22
自由詩206/5/22 20:21
スクリーミング・クイーン Part.2自由詩206/5/22 19:28
スクリーミング・クイーン自由詩106/5/22 19:27
サダルスードの星の下自由詩106/5/22 19:21
Don't move too fast, please自由詩4*06/5/21 19:51
あけがた[group]自由詩206/5/21 19:49
あからさまに言うなら自由詩0*06/5/21 19:48
殺してください[group]自由詩4*06/5/20 3:01
ウォッカ自由詩3*06/5/20 2:58
シケモク自由詩3*06/5/20 2:57
さみだれ自由詩7*06/5/15 2:52
姿見のうしろの物語自由詩12*06/5/13 4:59
もっとも速くあれ自由詩10*06/5/7 9:40
詩論以前[group]自由詩12+*06/5/5 17:38
幸福論[group]自由詩5*06/5/5 17:33
男のいる職場散文(批評 ...9*06/4/19 8:55

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