歯磨きが終わり
コップを手に取ると
何かのゼリーのような感触がして
指が中へと沈んでいく
そして右手は
コップそのものになってしまう
これから歯ブラシは
左手で持たなければいけない ....
 
 
鞄を探していた
たった一つの鞄だった
大切にしていた鞄だった
心当たりのあるところは
すべて探した
鞄の中も探してみたのに
布製のハンカチや
プラスチック製の文房具など
必 ....
 
 
木に実っていた最後の世界が
その重さに耐え切れず
落ちる
あっ、という誰かの叫びは
空気を震わせることなく
そのまま大気中へと浸透していく
店頭に並んでいた時計の化石を
少年 ....
 
 
冷蔵庫 冷やしたいから 冷やしてる


洗濯機 洗いたいから 洗ってる


右を見て 左を見たら 眠ってる


霜月の 雨に降られて 眠ってる


椅子がある ただ ....
 
  
  
国道のアスファルトを
食べている様子が映像として流れる
「今朝のカバ」のコーナー
テレビの表面はいつも
山奥にある沼のように寂しいので
スイッチを入れれば
色とりどり ....
 
 
人が地下道の階段を下りて行く
地下道の中には
何も無いけれど
ただ、向こう側に行きたい
というだけで
地下道へと下りて行く
やがて階段を上り
再び地上に出たとしても
同じ空 ....
 
 
夕暮れの校庭で
少年が一人
逆上がりの練習をしている
息はすでに上がり
手のマメは破れているけれど
何度も地面を蹴り続けている
成功したところで
得られるものも
失うものも ....
 
 
僕にヒゲが生えていた頃
あなたは優しくヒゲを撫でてくれた。
今ではすっかりヒゲは枯れ
ビルなどの建築物が建ち
唇の近くまで人も歩くようになったけれど。
あなたの手のことはあまり思 ....
 
 
計算ドリルをしていると
首筋に夜明けがやってくる
近くに声の病院があるので
あたり一面、ささやきや独り言が
しん、としている
隣の人が自転車に乗って
仕事場へと向かう様子が見え ....
 
 
近所の庭先に
みかんが生っている
枝は良く伸び
実は公道にまではみ出している
その下にひとつ
うんこが落ちている
多分、犬の

うんこ
何て素晴らしい響きなんだろう
純 ....
 
 
静かな時計の匂いが
降り積もる教室で
僕らは眠るための訓練をしています
皆、先生に買ってもらったばかりの
蓮根を大事に抱えて
明日の晴れる日を想像しています
教室の隅には
か ....
 
 
デオキシリボ核酸
でおきしりぼかくさん
でおきしりぼすけさん

格さん(渥美格之進)
 横内正
助さん(佐々木助三郎)
 里見浩太朗

正しくは
助さん(佐々木助三郎 ....
 
 
光る小さな玉が
ふわふわと三つ
それぞれに適度な引力を持ち
時にはふわふわと引き合い
ふわふわと離れ
角もないのに接触した拍子に
傷をつけ、傷をつけ合い
そうかと思えば
 ....
 
 
荒野に冷蔵庫はあった

冷蔵庫は洗濯機を冷やしていた

洗濯機は食器洗浄機を洗っていた

食器洗浄機は炊飯器を洗浄していた

炊飯器はマトリョーシカを保温していた

マ ....
 
 
浦島太郎は海を見ていた
浜辺で膝を抱え
亀が海から来るのを待っていた

まだ青年だった
衣服から露出している腕や脚は
しなやかな筋肉で覆われていた

亀をいじめそうな腕白な ....
 
 
世界地図を描くと
いつもはみ出してしまう
そんな遠くの大陸に広がる
乾燥した椅子地帯では
今年もイスコロガシの
産卵時期をむかえている

普段、イスコロガシは椅子を餌としてい ....
逆立ちをしているゾウの足に
流れ星が刺さった
昼間の明るさで
誰にも見えなかった
ゾウは少し足が痛い気がしたけれど
逆立ちをやめてしまうと
子どもたちががっかりするので
我慢してその姿勢 ....
 
 
ハエが世界を一周した
けれどとても小さかったので
誰も気づかなかった

ハエは自分の冒険を書き綴った
ジャングルの中で極彩色の鳥の
くちばしから逃げ回った日々を
港のコンテナ ....
クジラの背中に
独裁者の豪邸が建った
どこよりも高く
民衆を見下ろせた
一匹のカマキリが飛んできて
両手の鎌でそれを壊した
拍手喝采のなか
クジラは大きな口を開けて
悠々と ....
 
 
忘れかけていた三行の約束を
同時通訳していく
身体が沈んでいくのがわかる
劣化して重たくなった雨傘みたいに
 
トイレットペーパーが
自動で巻き取られる音がする深夜
ブルペン ....
 
 
今日買ったばかりの枕が
突然海になる
髪が濡れて痛む
航行中の大型の帆船が
三半規管を横断する
 
交番の裏側をパトロールしている
詐欺師だった父は
水を泳ぐことができな ....
 
 
きみの肩こりが酷い満月の夜
ぼくは錆びた味のみかんを食べてる
朝からコタツがあり得ない
それでも決して負けはしない
ぼくは白い黒ヤギ
 
自由を求めて飛び跳ねる
自由の意味も ....
 
 
色鉛筆のケースの中で
弟が眠っている
一番落ち着ける場所らしい
父と母はテレビを見て
時々、笑ったり泣いたりを
繰り返している
ケースから出された色鉛筆で
僕は絵に色を塗る
 ....
 
 
見たことのない言葉で
あなたと話す
関係のある足音と
関係のない足音の狭間で
 
時々、古い橋の匂いがする
目を凝らすと橋の形はあるのに
渡る人々のため息が聞こえてこない
 ....
 
 
本の索引をめくる
たくさんの指紋がついている
たどって行くと
エスカレーターがある
エスカレーターに乗って
植物の茎を昇っていく
やがて一枚の葉が終点となる
葉の先端には小さ ....
 
 
酸性雨の結晶が
そこかしこに降り注ぎ
背負った荷をさらに重くする
だからいつしか私は
四足歩行を諦めてしまった
抑揚のない耳鳴りの中
規則正しく並ぶ高層建築物の群像
そのわず ....
 
 
ほの暗い飲食店で
たった一人食パンを食べている
六枚切り位の厚さだろうか
食べ終わると給仕が来て
新しい食パンを置いていく
本当はご飯の方が好きなのに
運ばれてくるパンばかりを ....
 
 
プルプル
携帯電話がプルプル
マナーモードでプルプル
プルプルのゼリー
ゼリーの中に子ども
子どもは内側から食べる
だからますます
ゼリーは大きくなり
携帯電話は擦り切れ
 ....
 
冷たい直線が
流れていく
今日は朝から
ろれつが回らない、
白い紙へと
その先に長く続く
生物の住めないプール
それは時計にある
二つの瞳孔
人が唇を触りながら
ゆっくり ....
 
 
帰りのバスの中で
母と娘と思しき二人が
楽しそうに童謡を歌っている
曲名も忘れてしまったし
所々歌詞も覚えていないけれど
一緒に声を出さずに歌ってみる
 
他に何もない停留所 ....
たもつ(1766)
タイトル カテゴリ Point 日付
歯磨き自由詩310/12/7 18:11
自由詩210/12/6 19:25
採光自由詩710/12/3 22:53
「本日の五七五」より川柳410/12/2 5:56
モーニングショー自由詩310/12/1 20:11
地下道自由詩210/12/1 6:10
ソーダ水自由詩410/11/29 20:46
僕にヒゲが生えていた頃自由詩8*10/11/28 17:30
口実自由詩410/11/27 11:51
約束自由詩210/11/26 8:54
合宿自由詩310/11/25 6:01
デオキシリボ核酸自由詩210/11/20 6:18
ふわふわと光る玉の話自由詩810/11/16 21:39
みんなの話自由詩410/11/15 21:32
浦島太郎の話自由詩110/11/14 10:18
イスコロガシの話自由詩510/11/13 9:15
ゾウの話自由詩1610/11/10 21:45
ハエの話自由詩1210/11/9 17:49
クジラの話自由詩610/11/8 19:09
顕微鏡を覗くと自由詩710/11/4 21:47
レシート自由詩310/11/3 8:38
白い黒ヤギ自由詩210/11/1 22:16
色鉛筆自由詩1910/10/30 10:27
別れの言葉自由詩510/10/28 19:59
索引自由詩510/10/26 22:30
耳鳴り自由詩110/10/25 18:05
給仕自由詩8+10/10/24 18:09
プルプル自由詩310/10/22 22:12
副題自由詩1210/10/19 21:28
喫煙自由詩810/10/18 22:07

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