亀が道を歩いていた
甲羅をつかむと
慌てて首を引っ込めた
のは
何故かぼくの方だった
亀は空に向かって
首をおもいっきり伸ばし
退屈そうに大きな欠伸をした
ぼくはその一部始 ....
 
 
戦場で扇風機が回る
生活が確かにあった
セミは鳴く
脊椎動物たちが
忙しく生きた夏に
 
 
 
 
 
炊事を終えた
スリランカの水夫たちが
座って西瓜を食べていた
 
出納係はスープ皿に
吸殻を捨てた
 
好きなものはすべて
素手で触りたい
 
水族館の閉館日
すぐり ....
 
 
私腹を肥やした市長と
新人の試験監督が
芝の敷き詰められた校庭で
シーソー遊びをしている
紙魚は紙幣を食べつくし
新月の夜に
湿った子音になる
質問が締め切られると
至福の ....
 
 
水ようかんの沈む海を
泳いできました
手作りの名前を
握りしめて
どこから来たのか聞かれても
お母さん
としか答えられませんでした
今日という日がまた溶けて
明日だけが
 ....
 
 
平泳ぎが得意で
早退した
陽の光はまだ幼く
犬の背中も
温かく照らした
国鉄の線路は
歪んだ円を描き
わたしは
父の利き手を
思い出すのだった
その作業と
役割につい ....
 
 
休日のオフィスでひとり
コピーをとってる
何度とり直しても
文字や記号は
羽をはやし逃げてしまうから
白い紙だけが高く積まれていく
明日までに終えなければ、
と思う
明日が ....
 
 
下着の縦と横が 
垂直に交わる 
そのようなところが 
指定の喫煙所
煙にまみれ 
自転車はすべて 
曲がっている 
下着は優しい 
縦と横があるから 
指は縦をなぞり  ....
 
 
運河に沿って
空の下駄箱が並ぶ
靴はまだ誰かの
想像でしかないから
父は今朝も裸足のまま
戦争に出かけた

船着場で
子どもが遊ぶ
声は聞こえなくても
音でわかる

 ....
 
 
椅子に座ると
海が見える
水平線の向こうでは
犬が笑っている
知らない異国の言葉で

信号が変わり
スクランブル交差点が
背丈の違う人々で
溢れかえる
皆、舗装を痛めな ....
 
 
砂漠にさくらが咲いた
砂漠中の魚が集まってきて
あたり一面、銀色に輝いている

わたしが目を閉じると
さくらは散り
砂は空へと帰っていく

そして魚たちはみな
記憶の届か ....
参考資料の提出があった
瑣末な誤字脱字が散見された
作図と細則の改正が必要と思われた
差額についての催促を済ませて
採光のためにブラインドを開ける
サッカー場の方が
先ほどから騒が ....
 
 
壊れた工作物に
黄砂が降り積もる
梢は公道に木漏れ日を落とし
昏睡する
呼吸と肯定されることのない
告白の中で
コップから言葉が溢れ
子どもは硬貨を握りしめたまま
交差点を ....
 
 
ケイコは献血に行く
ケイコは血圧が低い
血糖値は正常の範囲内で
血色は良く
健康的に見える
ケイコは毛が生えているが
蹴鞠のイメージはない
ケイコはケーキが好きだ
けれどケ ....
 
 
ありがとう
そんな簡単な言葉を
忘れたまま
一応の今日がある
体積は権利
表面積は義務
肉体は続く
魂の原野
そのつきあたりまで
 
 
 
 
椅子は壊れ
ぞんざいに修理された
手と工具によって
曖昧な手順と
矮小な記憶によって
幸福な週末に
唇で話す
小振りの列車で
向かい合って眠る
 
 
 
 
ダムのほとりにある木造の役場に
申請書を出した
数枚の資料を添付した
簡素な手続きで済む些細なものでも
無いと困ることが時々ある
花が咲いている
名前が思い出せない
きみが好 ....
 
 
また春が来て
命のあるものは
業務の引き継ぎに忙しい 
高層ビルの死骸が並ぶ 
空に一番近いあたり 
乾物屋の娘が
花を手向けている
 
 
 
 
コンクリートの上で 
小ぶりの卵が朝露に輝いていた 
トンネルを抜けた役者たちは
そのまま川沿いを進んだ
数メートル手前まで来ている、
あれはたぶん桜前線
ほんの少し音がするね ....
 
 
酸性雨が降る
あっけなく陥落した
街のいたるところに
葉の裏で僕らは雨宿りをして
そのままお互いを
好きになった
やがて雨はあがり
空を見上げる
僕らのシルエットは
何も ....
 
 
形のないバスが走ります
手を振ると
形のない手を振りかえしてくれます
お花見でもあるのでしょうか
工事中、というわけでもないのに
いつもよりたくさんの人たちが
息などをしながら ....
 
 
犬の耳を触る
どこか遠くで
冷たい信号機と
同じ匂いがしていて
生きていくことが
懐かしく思えた
今日、初めて
歌を作った
雲の下に捨てれた
鍵盤のないピアノに
腰掛け ....
 
 
誰に手紙を書こうか
考えているうちに
便箋はみな鳥になって
飛んで行ってしまいました
ペンを持った私だけが
窓辺の席に座り
次の遠い春を待つ人のように
外の音を聞いたりしてい ....
 
 
薄暗いプラットホームから
各駅停車の
ジェットコースターに乗る
あの日、僕は
いったいどこに行きたかったのだろう
雨降りの遊園地で
もう手をつなぐ人すら
いないというのに
 ....
 
 
無人のソファーで
出されたクイズが
回答のないまま
水分を保っている
国道の方から
豆腐の崩れる音がする
扉を開ける
流線形の海へと続いている
お父さん、お母さん
あたり ....
 
 
砂漠の真ん中で
電話が鳴っている 
誰も出ることなく 
鳴り続けている
やがて一人の子どもが 
受話器を取る 
要件を聞くと 
急いで親を呼びに走り出す 
足跡は風に崩れ  ....
 
 
今年も兄からお中元が届いた
かわいそうな兄
控除の申請をしている間に
モールス信号の打ち方を
すっかり忘れてしまった
昨年いただいた
魚介を模した玩具に躓いて
午後は三時五十 ....
 
 
蓋のない空だった
懐かしいものは懐かしいまま
浮かんでいればよかった
ジュラ紀の喫茶店で
向かい合わせに座る
また会えたね、何億年ぶりだろう
むかし話せなかったことを
いくつ ....
進化したヤカンが
群れて空を飛ぶ

どうしてだろう
せっかく産まれてきたのに
生きることと
死ぬことばかり考えてる

大通りでタクシーを拾う
そのまま
ポケットに入れる
 
 
学齢期をむかえた父が
レジに並ぶ
帳面と鉛筆を買ったのに
店を出ないで俯いている
帰る場所がわからないらしい
どこから来たの、と聞くと
わからない、とだけ答える
やがて見かね ....
たもつ(1766)
タイトル カテゴリ Point 日付
首男自由詩412/4/27 19:11
生活自由詩512/4/26 20:19
素手自由詩512/4/24 19:42
至福のシンバル自由詩212/4/23 19:17
遠泳自由詩612/4/22 19:10
利き手自由詩612/4/20 20:03
背伸び自由詩1012/4/18 23:05
対角線に進むと自由詩312/4/17 19:01
下駄箱の夏自由詩412/4/16 19:23
水平線の犬自由詩1012/4/15 19:39
砂漠のさくら自由詩812/4/14 17:52
サマータイム自由詩612/4/12 17:57
昏睡自由詩512/4/10 19:10
ケイコの場合自由詩412/4/8 19:07
age45(一応の終わり)自由詩912/4/7 18:58
age44自由詩212/4/6 19:12
age43自由詩312/4/5 17:24
age42自由詩412/4/4 17:57
age41自由詩312/4/3 16:37
age40自由詩312/4/2 19:03
age39自由詩412/4/1 18:42
age38自由詩712/3/31 21:08
age37自由詩812/3/30 21:54
age36自由詩712/3/29 16:35
age35自由詩2+12/3/28 20:02
age34自由詩612/3/27 16:49
age33自由詩312/3/26 21:10
age32自由詩4+12/3/25 21:04
age31自由詩612/3/24 18:40
age30自由詩1012/3/23 21:18

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