ウシとウマが
うつ伏せになって
ウサギを見ている、そんな
現という名の
美しくない嘘
右折すると
海が広がっている
うまくいかない遊びみたいに
浮き輪が浮かんでいる
 
 ....
 
 
生き物が一匹 
息をしている 
印刷物の新しい匂いは
いつまでも消えない
一昨日、いとこから
椅子に座っている、と 
糸電話で連絡があった 
いま僕は
色と形を見ている 
 ....
 
 
明日と明後日の間に
空き缶が転がってる
ある秋の日
赤い夕日を見に行った兄は
明け方になっても帰ってこない
あれは誰の
アコーディオンだろう
蟻のように
雨にうたれて
  ....
 
 
お坊さんが走る
先生が走る

毎日、たくさんの
言葉を話しているのに
僕らは皮膚の外に
たどり着けない

ふと立ち止まる
地球の匂いがする
 
 
 
 
 
壊れない名刺を刷った
どんな道具を使っても
壊せなかった
時々きらきらと光って
きれいなもののように
良い匂いがした
今日はこれをもって
お得意様回り
でも名刺の真ん中にあ ....
 
 
牛が部屋にいる
一頭と一人とで
ずっと見詰め合ってる

やがて夕暮れ

嘘によく似た沈黙の中
牛の眉間に
世界は収束していく
 
 
 
 
野原の真ん中で 
朽ちていく木のベッド 
愛されていた人が 
かつて確かにいた 
提灯に火が灯り 
祭りが始まる 
ぼくは歩きだす 
何も聞こえない
 
 
 
 
ひまわりの振りをして 
きみが咲いている 
太陽の方を向いて 
きれいに咲いている 
ぼくは影の振りをして 
地面に横たわる 
こうしていると何だかとっても 
時間の無駄だね ....
 
 
速度の中を歩く 
壊れた体温計を 
脇の下に挟んだまま 

街には乾燥注意報が出ている 
人が乾燥に注意している
拾い物が拾われてる
忘れ物が忘れられてる

ポケットに階 ....
 
 
身体と言葉の境界に沿って
路面電車が夜を走る
ミルクをつなぐ、世界はまだ
つぶやきをやめない

みんな季節
みんな瞬間
みんな波、その動き
みんないつか
割れていきたい
 ....
 
 
毎朝なのかもしれない 
ぼくの指は豆腐に刺さって 
抜こうとすればするほど 
意味との距離が遠ざかっていく 
交番に住むアマガエルに 
おはようを言うきみの顔が 
今日もきれい ....
 
 
熱気球が関東地方の上空を
ゆっくりと飛ぶ
放課後のように
見損ねた夢のように
 
今日は世界のいたる所
一面の朝でしょう
と、ラジオの人が朗らかに言う
きみは台所で何か千切 ....
 
 
信号待ちをしている間
わたしたちは話をしました
空は曇っていました
とても長い信号でした
三十メートルくらいはありました
話も長くなりました 
けれどわたしたちの身体と言葉では ....
 
 
山本さんが一人でぽつんと
落ちていた
落ちちゃったの?と聞くと
落ちちゃったよ、と山本さんは笑った
重力には勝てないよ、と笑った
いつか勝てるといいね、と僕も笑った
秋の空は晴 ....
 
 
空の重さを支えるように
家という家には屋根がある
その上をきらきらと
小魚の群れが通り過ぎて行く
人は言葉だけで幸せになれるのに
ご飯を食べないと生きていけない
今日の行事は ....
 
 
犬が僕の名前を呼ぶ
僕が返事をする

また犬が僕の名前を呼ぶ
また僕が返事をする

そんなやり取りが愉快で
何度も繰り返す
そうしているうちに
犬も僕もすっかり年を取った ....
 
 
アルミニウムの陰で 
子守歌を歌う
眠っている人は
おしゃべりだから
わたしも話せることは
すべて話したくなる
秋雨前線が北上して
他に何もないこの辺りにも
やがて雨が降る ....
 
 
頭からキノコが生えている
抜いて良いものかどうか
水や肥料をやるべきかどうか
などと迷っているうちに
毎日少しずつ
キノコは大きくなっていく
キノコ生えてるよ
と心配していた ....
 
 
犬小屋を作る
犬がいないので
代わりに自分が中に入る
隣の家から拙いピアノが聞こえる
丸くなりうずくまっていると
昔からずっとこうしていた気がしてくる
前を通る人が
中を覗き ....
 
 
図書館の海に
沈んでいく
『決定版 小林カツ代の毎日おかず』
(今日から使えるシリーズ)

外では間の狭い男が
雨のように泣いている

耳の穴から
半透明の小エビが出て ....
 
 
黄ばんだ紙 
表と裏 
その間に 
地方都市 
雑居ビルの一室から 
産声
産まれることの
懐かしい痛み 
短い言葉は 
短い影をつくり
壁は語られる
曖昧な
理屈 ....
 
冷蔵庫の扉が
閉まらなくなった
代わりに
炊飯器の蓋をつけた
閉まるようになった
炊飯器の蓋には
冷蔵庫の扉をつけた
毎日、ご飯の時が
重くて大変だけれど
つらいことばかりじ ....
死にたいな、
群青
産まれてから今まで
食べたバナナの数を計算すると
予想より多くて
思っていたより少ないから
どんな気持ちになってよいのか戸惑う
親父はすっかりまだらボケ
時々俺を誰 ....
 
 
チケットの音を
握りしめたまま
匂いのない歩行者
側溝の中で
口は燃え尽き
残された句読点は
誇りとは
とても遠い
そして名前は
窒息を始める
一滴の水に
一筋の光に ....
 
 
レモン
その向こうに夕日
そして
落ちていく坂道
 
海老の死体たちは
天ぷらになってしまった
昨晩、わたしが
指を怪我している間に
 
バスが停まる
駄菓子を買いに ....
 
 
傍らに咲く向日葵の肩に
歯車、のようなものが落ちて
僕らは片言で話す
君はカタコトと音をたてて
一面の夜みたいに
目を閉じている
カタコト
カタコト
いつかそんな音がする列 ....
夜、すべての列車が
運行を終えたころ
駅にしんしんと
ネジが降り始める
駅舎の出入口や
線路に積もったネジを
当直の駅員がネジかきをする
やがてネジは止み
夜明けにはすべて溶けて
 ....
 

電話が鳴る
慌てて冷蔵庫の扉を開ける
受話器が耳に冷たい

+

電話が鳴る
慌てて冷蔵庫の扉を開ける
外はすっかり夏のようだ

+

電話が鳴る
慌てて電話機と冷 ....
 
 
湿った自転車を押して
海に向かいます
水つながりで
相性がとても良いのです
防風林の間を進むと
しばらく進むと
ポケットに小銭があります
ものが買えるくらいあります
壁に手 ....
 
 
窓ふきをしていたはずなのに 
気がつくと父の背中を流している 
こうしてもらうなんて何年ぶりだろう 
父が嬉しそうに言う 
十五年ぶりくらいじゃないかな
僕が答える
父の狭い背 ....
たもつ(1700)
タイトル カテゴリ Point 日付
うつつ自由詩311/12/20 18:49
息をしている自由詩711/12/17 17:39
明日と明後日の間自由詩311/12/14 18:44
師走自由詩411/12/11 10:14
壊れない名刺自由詩711/12/9 18:55
収束自由詩511/12/4 21:45
祭り自由詩311/12/2 20:09
増えていく自由詩1311/11/30 19:17
街外れまで自由詩511/11/29 18:21
罫線自由詩911/11/27 17:17
細々と自由詩511/11/22 19:02
ラジオ体操自由詩311/11/20 19:13
信号待ち自由詩311/11/18 19:34
秋の重力自由詩811/11/16 21:27
今日の行事自由詩911/11/14 21:21
埠頭自由詩211/11/12 18:26
秋雨前線自由詩711/11/11 19:51
見守るキノコ自由詩711/11/9 19:33
バイエル自由詩2311/11/6 19:53
小景自由詩211/11/5 20:04
逃げ水自由詩211/11/2 18:51
炊飯器に扉自由詩211/10/31 19:39
群青自由詩611/10/29 18:20
窒息自由詩211/10/28 19:21
レモン自由詩211/10/27 20:05
カタコト自由詩311/10/26 18:31
ネジ夜自由詩711/10/25 21:15
電話が鳴る自由詩311/10/22 19:06
海へと自由詩411/10/21 20:15
窓ふき自由詩10*11/10/19 20:23

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 
0.12sec.