エプロンをつけたおじさんのような
がらがら声のおばさんのような
二人組が立ち止まり
暑いのか涼しいのかさっぱりわからないねえと
言っている横を
私はTシャツ一枚で通り過ぎていくのだが
....
いまさらのように
いきる意味を求めて
精神の荒野をさまようきみは
世慣れした営業スマイルの中で
歯ぎしりギリリと
きしませいきてます
まわりつづける歯車は
どこへもいかず
一日またいち ....
ただただ夜が
石畳のうえで時を数えていた
ささやき声のような星が
いくつか浮かんでいた薄曇りの零時
駆け抜けて行ったモーターバイクが
どんな行先を目指しているか賭けてみ ....
崩落した記憶は
心の底に蓄積するままにしておけ
無理に掘り出そうとしても
指先を傷つけるだけ
荒れた舌のような色の夕焼けを見た日に
幾つかの欠片が取り戻せないところまで ....
初めて貰った時は戸惑いました
「何かしら言わなくては」という責任感で
僕の肌にまとわる空気が ぴしゃり と音を立てて緊張したのを覚えています。
何時も胎の底に すとん と落ちて気分をなだ ....
********
怪物くん
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-(2013/10/05(Sat) 17:43:47)
新月の夜
竹に上下の節あるように
唇に上下の別があるように
新月の ....
あなたが時の鐘を鳴らす時
私は笑い出します
・・・まるで『死神』のように
私はそっとあなたに耳打ちします
あなたに『死の時』が来た事を
・・・それでも、あなた ....
平凡な沿線のこの街に
夕暮れが密度を増してゆく一刻
零れ落ちそうに客をのせて電車がレールを軋ませ
商店街は夕餉の想いに満たされて
帰ってくるあるいは帰ってこない主人を待つ願いも時間が経 ....
寄せ書きに余白が多い
「その食べものを、一つ私に下さいな。
この小さな手にポトリと落として下さいな。」
うっかりと、
すっかりと騙されて。
本当は、
「とっととよこせ!そのエサを‼
ほら ....
私は、今とても腹が立っています。
とてもとても、腹が立っています。
どうしてだか、あなたにはわかりますか?
あなたはとても優しいし、心が広いし、我儘な私を全身で受け止めてくれる、 ....
ある傾斜においてうつむくのでなく
あたまならがっくりと
垂らすせいで
きみの、
頸椎が
くらい空にすっかりひえてむけてしまい
きみの視ないものにちゃんとかぞえられる
都心から二時 ....
秋のまん中で
道に迷って
帰り道
自転車の形をした風に
追い越され
背中の向こうがわが
透けてゆく
ぽつぽつ と
散らばってゆく人影が
視えない帰路へと続く轍の上で
ぐ ....
くちづけが月を隠している
下ネタを言えず息ができない
供養の拝礼を終える
そっと汗を手のひらで拭うと
和尚は顔の皺を刺青で埋めた
浄門の外房には紅白の熨斗が貼られ
それを見た人々の信心は以前よりも増した
(ああ そうじゃよ
冬 ....
彼と彼女の人差し指から、蜃気楼のように苔が蒸しはじめて、臨月を迎えた猿の聖母は二股になった道を駈け下りていきました 麻の衣装を着たみどりのかえるたちが、合唱をします 音階がふりわけられた椎の葉に、天か ....
寝しなに
「おかあさん、
あと二時間くらい手ぇつないどっていい?
やっぱり、
いっしょう手ぇつないどっていい?」
そう言ったかと思うと
すぐに寝息が聞こえてきて
繋いでた手は ....
OMOTENASHIわたくし 妖怪 おもてなし と申します。
わたくしの体のほとんどの部分は 水とコラーゲンなのでございます。
人間の水分量は たったの六割だそうですね。
よくそれで生きていら ....
さよなら準備
歩きながら忘れよう
公園で忘れられていたことも
歩きながら忘れよう
さよなら秋風
いらなくなった紙切れと
いまさらながらの屁理屈も
遠ざけら ....
耳を塞いでよく聞きな
俺の生い立ちはこうだ
頭を巡らせてみると
格子の向こうに四角い光
その中からこっちを見ている一本の木
やっと首の据わった俺が
ベビーベッドの中にいたというわけさ
何 ....
(青年期)
にびいろの空にぶら下がっていた
的をはずれた青い春の無駄矢が
(中年期)
秒針がブツブツしわぶいていた
赤い夏の夢を償却できた気楽さで
(高年期)
白い秋の月が窓を覗きこんで ....
人が集まって満開の桜
もしふと世界が終わるならば
それはきっと
こんな澄んだ青い空の九月の日だろう
そんなことを思うと
なつかしさという古い抒情が
僕らを草のようになびかせてゆくね
小さな桟橋 きらめく ....
父ちゃん
あんお地蔵様な毎日こっちば見よるとよ
戦火でむごう焦げた左っかわ
今日もハンサムよ
父ちゃんに似てよか男ばい
いたばり出てみれば秋ん風のすーっとすると
こん前どか雪降ったつ ....
【つめたい てのひら】
どんなに ちいさな赤ん坊であっても
うまれながらに ちいさな爪があるように
花であるなら 必要とする土が要り様でしように
イヌサフランときたら
土 ....
中庭に迷い込んできた彼岸花が一輪だけ咲いている
とても貴重に映り 華やかな感じがするが
当人(花)は場違いなところに来てしまったと
恥ずかしい思いをしているかもしれない
....
写真の側溝に 子猫がいます。
なぜか、写真の向きは かえられませんでした。
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葡萄の実は はじめは みな 緑色
やがてそれぞれに似合った熟し方をす ....
(瞳をもたない
(いきものの
(においがする
夏が
眠りにつくよりも
早く
底辺の夜は
その
密やかな手のひらを
ひらいてゆく
仄かにひかる土のうえ
満たされない
季節 ....
丘を越え 町を走り
海原にて待つ かの人の元へ
駆けてゆく 駆けてゆく
後ろを振り返る事も無く 澱む間もなく
陽が差すあの海岸の
かの海岸の かの人の元へ
涙、未だ止まらずに
思い出が溢 ....
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