小鳥がついばんだ林檎だけ
落ちずに残ったとき
決してこの世は綺麗なものだけで
満たされてはいない
線路の左側を歩いていくと
虹に辿り着くと幼い頃叔父が言った
母について記すとき ....
空をゆく鳥が止まっているのじゃないかって
思う時
あるよね
そんな言葉で恋が始まることもある
わたしたちが本当に見ていたのは
鳥でも
雲でも
小刀のような銀の波濤でも
ウインドサー ....
梅雨雲のような光が降っていた
無菌室で少年が手を振っていた
映画監督が映画で役を演じていた
刑事がこどもに名前を聞いていた
PLUTOのゲジヒトは船越英一郎だ
神が行 ....
世界中の海から集められた
追いきれない広さと迫りきれない深さ
あるいは群れをなす魚の一匹が発した
どこまでも届く一瞬の輝き
そういうものが
個人のはるか遠くまで開け放たれた
借 ....
人類みな兄弟
だから結婚できないの
マーブルチョコ2粒小保方さんの夢レシピ
知り合いに似た形の雲が
空に浮かんでいて
その人の名前は
とうに忘れてしまった
ミシン目で切り取られた海が
安売りされている商店街を抜けると
賑やかな駅前に出る
駅前 ....
バレンタインにもらった砂利みたいな
チョコレートうれしくってポケットに
突っ込んだ手で握りしめてもぜんぜん
溶けなくってへんだな一粒口に入れて
みたらこれっぽちも甘くないってやつ
ぼくの片思 ....
ヘビメタTシャツ率の高い老人会に行く
暗がりの街に、雪がちらついていた。
凍りつく大気、その向こうに雲
際は銀色に縁どられて
放射される天使の梯子
電線が揺れて、僕らはマリオネット
....
いい詩を書く為に
たくさんのことにとらわれながら
ただ書いていた
人の言葉に人の考えや
思いにとらわれながら
ひたすら詩を書いたけど
自分の詩なのに
人のことばかりで
自分がどこに ....
私たち親子の手を見比べると
娘の手は白くて 細くて
張りがあって美しい
私の手は皮膚が薄くなって
血管が浮いて見える
やはり手には年齢がでるね
真面目なだけが取り柄で
洒落っ ....
砂漠の真ん中で
洗濯機が回っている
インド綿のシャツを着た官吏が
時々中を覗きにやって来る
飛行機が上空を通過する
やり場のないコウモリ傘や
目新しい嘘を乗せて
真夏日 ....
踏まれた影は
足裏を剥がれ
午後の陽なたに取り残された
じりじり
地面に焼きついて
暗室に水を滴らせ
白く感光する
幼年の記憶
影を踏んだ子は
逃げていく
どこまで ....
神宮前の小橋で懐かしのフォークソング唄う人
懐かしの?
わたしは懐かしのを知らない
知らない懐かしを知ったふりして心縮めていたの
右肩横をかすめて通りすぎた黒服男はも ....
今日を捨てる人に
終わらない明日をあげよう
振り返りもせずに愛は逝く
小さな誤解を積み重ねて塔のうえに登る
そこから遠望する世界を胸に抱いて
おびただしいビジョンを想い描いて
立ち止まりもせずに愛は逝く
高邁な殻を脱ぎ捨てて脱皮す ....
雨の夜の物語は 濡れた
石灯籠に絡みつく 蛇の赤い舌先に
想いは 蛍火にほの暗く 闇に
浮かび上がる 老いた眼は 涙に濡れている
森が深さを増し 光を拒み始める
明るい陽光に踊る ....
わたしはよくつまづいてしまうから
玄関にある靴は
どれもこれもつま先がはげていたりする
つま先のはげた靴
可愛い靴なのに残念
そのくせして
きっちゃんを待っている時は
つま先 ....
いっとき
誰かをおもい
泣いたとしても
朝が来れば
人は顔を洗い
食事をし
読みかけの本の頁を開く
晴れていれば
陽を浴びに出かけ
つばめが巣立てば
ほほえむでしょう
四葉のクロ ....
水より安い酒を友としている
しょうがなく付き合うフリ
したけれど
ホントは
誘ってもらってうれしかった
窓を開けると
思いのほか
風が強くて
帽子が飛んで行ってしまいそうだ
海と空が
あんなに近い
....
赤ちゃんの匂い 柔らかい肌の匂い
ふわふわの肌着の匂い あたたかいホッペの匂い
新生児のウンチは 美しいきいろ
お日様の下でひなたぼっこした後の
どんな高価な石鹸の匂いよりも
甘くて 柔らか ....
雨が強くなり始めた頃傘も差さずに泣いていたのは
怯える事を忘れかけていた少女の遊び
似合わない化粧と行くあてもない二本の素足が生を感じている
泥がはね、ワンピースも下着も先程までカールをしていた ....
目の開いたバラバラ死体を私はずっと捜していた
手はお喋りだと口がくちぐちに言うので
うるさい手を切り落として 口に食わせた
口は満足そうに 黙ってくれた
足は突っ立って進むことしか ....
自分の失ったものに色や形があればいい
失ったとき気づくから
何を失ったかわからないまま
生きるのはなんだか切ない
失うものにさようならやありがとう
と言えたらいいのに
ゴダールの気狂いピエロとおなじように
既婚だった彼女と駆け落ちした
海に沈む太陽のような永遠
ランボーの詩だ
彼女の夫は首吊り自殺した
彼女はやがて去っていった
空の碧と海の碧 ....
遠く
遥かに
夢は
朽ち果て
おぼろげに 刻はながれる
空に 雲が ひとつ 浮かんでいる
風が 木の葉と 遊んでいる
おだやかな 初夏の午後
死んだ魂のように
はたはたと
....
出来損ないの文章を
むやみに並べる日は
気が狂った人の
最後の手紙のようになる
溢れる前に飽和された言葉は
心の中で壊死していくから
二度と口にしない方がいい
肺がすっかりしぼんでしまったから、
彼女の吐息で満たしました。
吐息に思えましたが、空気でした。
彼女は存在しません。
しかし、朝やかましいすずめの声などいろんな媒体に憑依して現れます ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87