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定期券が消えた
ある日こつ然と定期入れから消えた
懐かしい色の子供たちが
僕の知らない歌を歌いながら
道の一箇所に立っている
煙草を吸う
定期券が消えた
煙草を吸う
あおいだ ゆびさきから
つむぎだされる よるの とばり
その やみのなかで てらしつづける
ゆらめき つづける
ふかしぎな かたち
さまざまな ゆくえ
ねがわくば わたしの あとは
....
過ぎ去るものがあって、僕は奏でられているものを聞いている
耳から耳、手から手
それから
夕立に降られそうになって、傘を買った
小さく折りたたまれた傘で、雨が降らなかったので広がることはなか ....
街角に立った色とりどりのクラゲ達を通り越し
遠い異国の地を見た
花を売り
花を買い
枯れていく買い手
クラゲ達は幼い日に見たガラスの目
ここにはなく
海ではなくて空を踊る
しかめっ面の ....
ポケットの中は未明
取り出すほどの時間でもなく
今日は雨が降っている
最近降り続いた雨は
最後まで雪にはならなかった
そして僕は冷えた手を
ポケットの中にもぐりこませる
....
さっきまで
うなりをあげてたヒーターが
お構いなしに突然黙る
きっと勤勉なセンサーは
こう告げたのだ
もう十分
暖かくなりました
わたしの仕事はここまでです、と
寒々とし ....
時は風を越えて
嘶く鳥の藻屑を溶かす
はじめて母が「アボジ」「オモニ」と言った今日
はじめて母が自分の言葉に朝鮮を滲ませた
思えば母の話す言葉に朝鮮語はなく
日本の中で生きてきた自分 ....
あなたの降る
ひとひらから重ねて
いちにちが実をつける
まっすぐな廊下から壁の掲示物から突き当たりの部屋から放さないでと思うここのこころから
ゆれている
ゆらゆらと
のばしている色 ....
雨が降「る」
12時をまわるたび
今日が終わって昨日になって
明日が今日になって
昨日は一昨日になって
年をとって
少し後悔して少し大人の振りして
同じ失敗を繰り返して
二度としないと ....
昔住んでいた家の近所の円柱形のポストから
私に 手紙を出したいんです
近くには小さな神社 小さなトカゲが住んでます
土を掘って数センチ グレーの粘土質の柔らかい土が現れて
ころ ....
振り子時計をながめていたら
暗示にかかってしまった
コチコチと刻まれて
時の砂ほどになって
それをライターであぶって
思い出が浮かびます
ひとつ
またひとつと
燃え尽きてゆ ....
えんぴつの上についてる
消しゴム は
何を書いてるのか
知らないけど
間違いは 消す
正解も 消す
庭の木にセミの抜け殻があった
手にとって握りつぶすと
ぬちゃ
それはセミの抜け殻ではなく
抜け殻のようなセミ
もて余した僕はこっそり
ぬか床に隠してしまった
夕食の時
今日のぬ ....
手はくりかえし空を混ぜた
遠くなり 近くなり
ひとつの重なりにはばたいた
触れる色 触れる音
傷のような軌跡に満ちた
溶けては響きと光になった
水と水をつないでいた
....
グレープフルーツを半分に
ぱっさり、と
切ってごらん
まんなかにはいつも
記号
が
ぎゅう、
と
しぼったら
記号のしずくが
溜まるから
飲んでごらん
沈殿するのは
....
ボクはスノーマン
お日様が
君を想う温度とすれば
ボクはスノーマン
手も足も
出せないままで溶けてゆく
明日は
水に戻るのだから
ボクはスノーマン
芯まで
氷
....
描きかけの自画像が口を開き始めると
ぼくは目を逸らさずに耳を閉じて
おれは と唱えて入れ替わる
寂しい背景を抱えて
冷えたキャンバスにだけは ほこりが確かに積り
袖 の 小鶴 が 遠のく
こすれた城への 道 薄れ
つづられて ひろげられて
すすけた手 にじみよる矢
玉揺り篭の奥 くり抜かれ
流れに咲いた 冷たい刺青
すすり ....
かつて
わたくしは
花、だったのですよ
よろしければ
咲いてみせましょうか
と
言うと
水、のようなそのおかたは
しなしなとゆびを左右に
ゆらして
ていねいに
それをこばむ
....
夕暮れになると
ばくは星間に漂いはじめるのだった。
追いつめられてすきとおっていた
声なき声は銀河の構造
肉体を失って誘いを待つあなたは光の粒子
粒子は崩れぼくは光速で見えないあなたを通 ....
そこにあった かこに
おもいが もっていかれる けしき
わたしたちは ながれゆく ときの
だくりゅうに のまれて
ひきとめられず ただ やどる
やわらかな おもいで
あたたかな ....
覚えたての九九を妻が口ずさむ
大切なものは奪われても
忘れなければいいのよと妻が歌う
夕暮れ前に一瞬空が明るくなり
テーブルのりんごやみかんやバナナが色を手に入れた
頬杖つきながら
文 ....
上ったら、下る、上っては、
下る、彼らが散らかっている、彼らの街で
折れてひざまずいた巨人が、ほろほろと朽ちてゆく
それは、もうずっと歩道橋に見えている
或いはそれは、もう ....
軽犯罪の発生率がとんでもなく高い
いわゆる要注意都市
そこに私はずっと暮らしている
千代田線各駅停車
マッドシティあたりに暮らす人間は
みなそう呼ぶが
本当は常磐線なんだ
東京メトロ ....
そっといじけたような光でいる
まるくまるくなでられたいのに
そっぽをむいて目を閉じて
大きな花の実を食べている
ずっとむずがゆく思っている
ときどき次の次がほしくなる ....
メタンガスもフロンガスも
もうどうでもよくなってきたけれど
おれは戦うしかないらしい
最後まで いや
最期まで
おれは抵抗すると誓ったのだから
ポケットに手を突っ込む
最後のパイ ....
1
電球頭とオルゲン 下弦の夜に光る雨陰
0朱-音霊韻に道化るアルゴン時計は
針ニ非ズのラマーズ刻みのマルス避け
星がお留守の空に電球頭が
全ての(オール)銃(ガン)を撃ち込んだ、銃声!
....
ガラス玉の中で夜が
凍ったみたいに動かない
だからここには何も来ない
昼も夕方も往ってしまって
世界がポツリと佇んでいる
私は夜を握ったまんま
電車に乗ってひとり
闊歩している
こ ....
娘は将来アイス屋になりたいと言う
好物のアイスを好きなだけ食べられるから
ではなくて
沢山の人を幸せにしたいからだそうだ
いっしょにお風呂に入ると必ずその話題になって
バニラ ....
花占いをする少女の背中から
日向の匂いがしたりして
指先からこぼれる花びらがオレンジで
昨日降った雨の湿土を
温かく変えて行くのは
その答えが「イエス」だからなのでしょうか
お幸せに ....
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