ここ二日でひと山越えた感のあるわたしたちは
次の山あるいは谷を想像できないでいる
見上げる山 天辺が雲に隠れて見えないほど
見下ろす谷 闇へかき消えるほど底なしの
....
収穫もできずに
ただ腐らせるしかないような
果物を育てるひとはいない
いたとしても続かない
両面の鏡なんだ
鏡のなかのまたその鏡なんだ
自分だけ棚にあげておくな ....
泥まみれの夕立一粒に願懸け命懸け
立ち上がろうと 己に跪き独眼に見渡す
屍の点描
永遠の夕立 その隙間で呼吸を呼吸を途絶えないように
大事に大事に膝に触れ 感触の泥まみれを皮肉にも このだ ....
木影に影を重ね 静かに見送る
蟻たちに運ばれて往く
ことば 肉から零れ落ち
熱い 取っ手を掴んだ
わたしは夏に生まれた
きっと夏に死ぬだろう
光の色彩が教えてくれる
....
いっちょまえに
子(娘)が親(母)に意見(もんく)をいう
いっちょまえに
子の方が稼ぎが多くなってきた――
一緒に道を歩いていたら
いきなり娘に腕を掴まれた
「なにするん?」
背後か ....
ナニ、か、腐った臭いが立ち込める部屋で、老女が横たわっている。毎日堆く詰まれていくソレらに、埋もれて隠れたモノ。老女が自分の背中のジョクソウと、タオルケットとの間に挟み込んだモノ、が生きたまま腐ってゆ ....
パソコンのシステム用語の七並べ これ読めますか これ読めますか
独りでも楽しみ方なら知ってます不正アプリの読書コーナー
ネットすら関係なしに生きてます母の身元は世界でシェア
あ ....
枝から青くふくらんだ
健やかなる実をはずす
茶色いしみのようでいて
何かを主張している風の
そんな模様を持つ実は
捨てた
捨てたあと
なぜかもう一度この手に取り戻し
親指と人さし指 ....
ー「安全保障関連法案」衆院通過の日にー
医師は
腰の痛みを訴えるワタシの
積み木のような背骨のレントゲン写真見ながら言う
ここがずれていて傾く
それを正 ....
こんなひは
ひんやりとした床で
寝たふりをするより
とったばかりのいんげんと
てんぷら油の格闘に
歓声をあげてみたり
....
こんなの詩じゃないと
お叱りを受けそうですが
まあ、いいだろう
と、寛大な心の方はご覧ください
*
小さい頃のわたしは
引っ込み思案で 恥ずかしがり屋
自分から友だちを ....
口がぱっくり開いていては 無様極まりない 故
嫉妬と憧憬を繰り返し腹式呼吸に整えてゆく 否
めない惚れ
火の打ち所のない情熱 つまらぬ炎の揺れ
非が天へ掻き消されて 冷静霊的にのみ或
....
生あるかぎりです
だれしも遮れない旅をしているとおもうのです
たぶん滅びるのもちかいのかもしれません
ちょっとなにかを選択するのもめんどうくさいのですが
いつも可能性と不可能のコードの端を ....
手垢にまみれたコトバたちを 洗濯機に放り投げて洗い流す
駅前で叫んでいた主義主張たちを アイスノンにして頭で溶かす
空っぽの冷蔵庫から 私が居そうな卵を見受けて目玉焼きにする
フライパンか ....
赤く透き通った
血の様なワインを飲んでいる
酔っているので
詩は
書いてはいけない
酔っているので
なおさら書きたい
自制心が効かない時ほど
熟成しないまま
今すぐ
投 ....
神様が作った骨の成り立ちを考えれば
猫背であることはとても自然な成り行きであるのだけど
猫背である自分をウインドウ越しにうっかり見てしまえば
あんまり素敵じゃなくて
ちょっとだけ無理をして背中 ....
冷たい窓ガラスに
一匹のヤモリがいた
わたしとヤモリは
互いの存在を
ほんの一瞬で認め合う
空気がほんの少しだけ
動いた気がした
目が合ったのだよ
確かに
あの時
人間と虫
....
お腹から卵を一つ取り出して 私は一つの「し」をつくる
月に向かって 卵を放り投げておくと
月は空で泪目になるころ 「し」をこぼす
私は卵を産むために 屋根裏部屋で猫とじゃれ合い
卵を夜 ....
【幸福な魚】
福はあなたのまわりに 居ますか?
幸福のフクですよ。何言ってるのですか?
福は生き物に決まっているじゃあありませんか
なになに幸福が生き物だとしたら
め ....
{引用=お隣りさんから伸びている皐月の枝に腹を立てて
お父さん、チェーンソーで切ったのよ
根元から
}
母の愚痴のほぼ全ては父のことで占められているから
電話はいつも父への悪口で終わるの ....
自然にできたグループに分かれて
植民地時代のボストンの街並みを色画用紙で再現している
春陽に包まれた5年生の教室
その穏やかな空間に一瞬そよ風が吹いて
支援クラスに行っていた娘がひらりと入 ....
それでも時は流れていく
ゆっくりと
淀みなく
立ち止まる想いを押しのけ
焦る足元も
掬いあげ
鳴り響く発車のベルの音
口ごもる詩を
何度も試み
置き去りにされる記憶を
追いかけ ....
容赦なく
照りつける太陽から
逃れるように
白い日傘が路地の奥へと入ってゆく
打ち水をしたアスファルト
ゴーヤ棚が繁って日陰をつくっている
縁台でのんびり寝ている野良猫
軒下には硝子 ....
夕方にややふくらんだ足があり人も満ちて夜をむかえる
それぞれの耳にはそれぞれの音あてがわれてイヤフォンの白い線
半分にきっちり分けること出来てやっぱり冷たいアイスモナカ
飛び立ったば ....
蒸発しそこなった昨日の雨は
道路の上で
小さな鏡になり
今日を映している
赤犬がうわずみを飲むたびに
現れるさざ波は
やがて左岸に消える
わたしは
人生において しそこなったことの
....
「生きて 在る」 ということを想えば
やはり不完全だ
「生きて 在る」 ただそれだけでは
感じ 考え こうして思念で交信する以外
何もできることはない
私たちはどんな姿をしているのか
....
あなたを焼く炎は
煙さえ立てることなく
空に消えて
後には
黒枠の中で
ほほえむあなただけが
残っている
空に
光りの砂
さざめき
大地に広がる
夏草の波
....
何故きみが
僕の腕を枕に
眠っていたのか
眼を開けて
「素敵だった」
などと言うのか
「ずっと一緒」
などと言うのか
思い出せない
思い出したくない
腕の血流が
完全 ....
こころに色があるならば
わたしが失くしたこころは 金の色
みずうみの底ふかく
沈んだ金の色の こころを
探しだしてください
いえいえ それは メッキの剥げた はがね色
わたしの ....
うすみず色のかなしみを
あなたは あなたの絵の具で塗り変えようと
悩んでる
何色差したら
ピンク色になるのかと
うすみず色のかなしみに
すこし赤を 添えてみる
それは くすんだむ ....
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