せめて一つだけでもいいからさ
願いを叶えてよ神様よ
不敵に微笑む神の影は
僕を見下ろし踏みつぶした
そんな夢を見て何回目か
消えていく君と僕との平衡感覚
....
「ここじゃあ 夢は釣れないか」
神様はそう呟いて
雲の上をのそのそと移動した
人間界に落とした釣り糸には
申し訳ない程度の『希望』が
ぶらさがっている
神様は眠そうな目をこすり ....
きっちりきっちり巻いたのに
はなれてみると優しく見える毛糸だま
早く終わらせたくて必死だったのに
もう少しで終わりと思うと
何故か腕に鍵が掛かる
はやくはやく巻き終えて
マフラーと手袋 ....
あのクエスチョンマークのような雲は
描いたの
ひみつのゆびが
あの子の涙は
ぬぐったの
ひみつのゆびが
涙でちょっとしょっぱくなったから
海で洗ったら
もっとしょっぱくなった
....
誰も通らない道端の
枯れ葉が揺れるその場所は
風が自由に向きを変え
空へと戻る交差点
風と風とが巡り会い
互いの全てを確かめて
冷たい空気に温もり添えて
どこからともなく寒いねと ....
裸足で入口に立つ
じんわりとあがってくる床の冷たさ
白い光に浮かぶほこり 小さな窓
僕は 笑いをこらえながら
ゆっくりと走り出す
ぐるぐると 何周も何周も
時計回りに走り回る
....
落第してゆく大人たちを
進級してゆく子どもたちが
通り過ぎてゆく
落第する大人たちは
進級することは過去にしかないと
思いながら
冷えた体で下を向いて歩いてゆく
丸まった背中が小さく ....
ずいぶん遠くまで歩いて
きみのクツはまるで
最初と違うカタチのようにみえる
たくさん土の上を転がって
きみの服はすっかり
元の色を失ったようにみえる
何度も傘が破れて ....
どんなに世の中が豊かになって
ごちそうが食べられるようになっても
お母さんが作ってくれるお茶漬けが一番うまい
漬物を肴にお茶漬けを食べる
そのうまさは格別なんだ
漬物を出 ....
今日より、明日、明後日
舟が古びようと
櫂で水しぶきを描かずにいられない
来週より、来月、来年
からだの影が深まろうと
羅針盤の先を指差さずにいられない
蜃気楼を揺らして
永遠に届かない ....
黄昏時には不意をついて
冬が何処からか現れ
桜の枝で褐色になった枯れ葉と
わたしのこころを繋いでしまう
ポケットに入れた手が
ほんのりと寂しさに温まる頃
去年届いた便りの
名前が消え ....
たとえば
あたしがこうしてパソコンに向かっている間
森林がものすごい勢いで消えていって
いくつもの種類の生き物が絶滅していたり
たとえば
あたしがタバコを一本吸っている間
死を決意する ....
ここは田舎町だから
電車の中はいつもの様子
ポツンポツンと
どこに座れば良いのか
迷ってしまう
どうせ辿り着いてしまう
ガタンゴトン
揺れる
窓の外には
見慣れているという
さ ....
ふるい手紙を火にくべたんか
けむたい朝に眼をしょぼしょぼさせとんね
一番遅くに寝たもんが
一番早くに目を覚ます
土鳩鳴いとるよ
くるくっく
卑しい国には正しい言葉なんてありゃあせん
....
知らない町にやって来て
四畳半のアパートで暮らす
目に映るモノは
何もかもが新鮮で
同時に僕は
どうしようもなく
一人であることを
実感する
部屋
かつて人が住んでいた部屋
そ ....
人生につまずいたそこの君っ!
君はつまずいたのではない
ズッコケたのだ
言葉を変えれば
少しは気分が和らぐだろう
そして君が落ち込んだ時は
ガーンと効果音が鳴るのだ
君の頭上にガーンとい ....
まいにちは
ふしぎなくらい
いじわるで
かなしいことや
つらいこと
いっぱい
いっぱい
どこからか
せっせと
あつめて
くるけれど
....
夢の中の街は
思っていたよりもずっと
重化学工業だった
建物はすべて
高度経済成長だった
メインストリートでは
地元の人々が
それぞれに近所話をしながら
いろいろな店へと入っていた ....
古い記憶を呼び覚まし
懐かしさにかられて思考が浮遊する
輝いていたあの頃
怖いものが何もなかった
未来は希望に輝いていた
飛ぶことを ....
なにかがうごきだすとき
すいっち
のおとがきこえると
ほっとした
とてもとおくで
かすかに
かちっ
おとがして
そうするとあとは
まえにすすむだけでよかった
そのつみかさねが
い ....
一人でいる寒い夜は
温かいミルクを飲みます
スプーンで雫を落とすと
ミルククラウンができるのですが
それがあまりに一瞬のことなので
私には何も見えません
あなたがそこに
いれくれ ....
かみ合わない歯車に、また少しだけ時がずれる
秒針のきしみは それでも
壊れたメトロノームのように 私を、
追うから
逃げ込んだいつかの雪原で 私は、
細雪がわずかに切れる夢を見た
....
栗林沿ひの道を歩いて行くと
コツンと固い音が
地に弾けてやんだ
少し行くと
また同じ音がして
生きものめいて
転がつていくものがある
――栗の実――
....
砂漠を
旅する少女
らくだを一匹連れて
小さな子どもの手を引いて
今日はどのくらい歩いたかしら。
夜になると
小さな子どもは泣き出して
本当は
泣いてしまいたい少女
砂の塗れた短い髪 ....
切れかけた灯が点滅して
夜の空気をざわめかせている
人もまばらな公園で
赤く染まった爪先が
あなたの頬を蹴りつけた
ちらちらと瞬く安い灯りは
薄暗く二人を纏う
その中で白く浮かぶ ....
森の中を歩いていた
何かを探しているわけでもなく
何かに追われているわけでもない
ただ単に 森の中を歩いていた
しばらく歩くと ある空間に辿り着く
おそらくは森の中心なのだろう
大きく空が ....
風に
どこまでゆくの?
と尋ねたら
わからないけれど
吹けるところまで
と返事をして
どこかへ行ってしまいました
雲に
どこまでゆくの?
と尋ねたら
わからないけれど
....
私の町
海辺の港町
夢うつつに波音で目覚めて
窓を開ければ
かすかな潮の香り
胸いっぱいに深呼吸して
優しい海で満たして
一日が始まる
私の家
高台の一軒家
階段を下りると
....
心が抜けてしぼんでしまった
わたしの身体に
あなたの息を吹き込んで
ちょっとあたたかな
ちょっと煙草臭いあなたの息を
自分までもが赦せなくなった
あの日から
わたしはわたしじゃ無くなって ....
その歌のはじまりとおわりを
わたしは知らない
空を見上げたとき
耳元で起きた風が
どこから来て どこへ行くのか
わからないまま
歩き出してしまったように
そ ....
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