海辺の町の
夕凪ここあ

私の町
海辺の港町
夢うつつに波音で目覚めて
窓を開ければ
かすかな潮の香り
胸いっぱいに深呼吸して
優しい海で満たして
一日が始まる

私の家
高台の一軒家
階段を下りると
小さなパン屋さん
パパとママが
焼いたパンを
朝食に食べる
サラダと、あったかいスープと
休みの日には
私も少し早起きして

それから
スコーンとクッキーを持って
坂道を下るお昼過ぎ
港まで続く道
一面の海が
光を反射して
ずっと向こうで
船が揺らめく
眩しい午後
港に着く頃には
もう波の向こうで

隣に住んでる男の子は
船の乗組員で
それは小さな船だったけど
少し羨ましかった
すっかり日に焼けて
航海に行く日には
港まで手を振って
私の白い手は
小麦の匂い

パパとママに
短い手紙を書いて
私は海に出たい
小さな船に乗って
すっかり日に焼けて
港も見えないくらいの
海の真ん中で
水平線の向こうから覗く
お日様を見てみたい
それから
私の行ったことのない
知らない国、とか
そのためには
スカートだって
はかない、から

そんな夢を見て
また一日が始まる
遠くで波の音、潮の香り
私の町は港町で
私の家は
高台のパン屋さん
朝には
たくさんの人が来る
あいかわらず
手のひらに
染み込んだ小麦の匂い

今頃、船は
見えないくらい向こう、で


自由詩 海辺の町の Copyright 夕凪ここあ 2006-11-08 00:58:22
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