いつしか子どもたちは
走り方を忘れていった
いつしか大人たちも
走らせ方を忘れていった
走ることの大切さよりも
走ることの危険さが
叫ばれるようになった
走ることによって
強くなっ ....
白紙の紙の上には神は宿っている
どんな色にも
どんな言葉も
その白い世界は受けとってくれるんだ
時には失恋の詩を
時には季節風情を
時には魂の知恵を
書き手を紙と ....
夕暮れていく空の
侵略される白と
紫が混ざり合うように
中途半端なまま心は
形を変え続けて年を重ねる
不意に感じる虚無へのやり場のない焦燥感
孤独への抵抗の微熱が
私の中ではあの ....
「一件のメールを受信しました」
薄い透明な膜
電源を入れれば一瞬真っ白になる
僕のパソコンは液晶ではなくて
少しだけ奥行きを感じる画面
ラーメンが茹で上がるくらい
立ち上げる時 ....
カレンダーを一枚めくる度に
当たり前に季節は深くなってゆく
ビルとビルの谷間の廃屋にひとり住む老婆は
知らぬうちに彼方からの者を迎え入れる
表通りでは今日も賑やかな工事が進み
誰も気づかぬう ....
ねむくなったので
さきにおふとんにはいっていると
おねえちゃんはつくえのひきだしをあけて
びんをみっつとりだした
とてもおおきなびんで
とうめいなみずがはいっていた
はなうたをうたいな ....
タイトルだけ見たら、危ないですが、
記憶喪失の話ではなく、
酒乱事件の話でもなく。
さて、本題。
「わたしは詩を書きます。」
ここでいう「詩」という言葉の定義につい ....
小首をかしげて 鳥が
私の胸のあたりを
ついばむ
私は
驚きで声も出ない
鳥は
よくわからない
といった風情で
私の
腕をついばみ
ひょい、と脚に移って
ついばむ
小首を
....
山里深く
美しい女が独り
淋しく庵を結んでいるとの噂を聞きつけ
伊達男や
誇り高い益荒男どもが
我こそはと
鼻孔をうごめかせつつ尋ねて行ったが
その度に女は
こんなときを ....
隣の空から降ってくる
それをわたしは見ていたよ
苦しくて眠れないのか
眠れなくて苦しいのか
孤独な人は羊を愛して
柵を越えて
すぐに行ってしまう
次々に飛び越えて
風に乗って
....
金太郎飴を舐めんなよ
ヤツは世界最強だからな
金太郎じゃなくて金太郎飴がだぞ
どこを切られても平気な顔して
いつまでも若々しくて
最後の最後まで全力で生きている
歳を取れば取るほど誕生日が ....
わずか25cmの彼女は
メルフェンだった
愛くるしい顔をした
庭の番人
彼女の周りにはいつも
伸びてくる草や
季節の花々に囲まれ
笑顔を絶やすことはない
時折り
トカゲや大き ....
できないことを
できないと思っていれば
いつまで経ってもできないさ
できないことを
できようと思うだけでは
それは思うだけで
これも
いつまで経ってもできないさ
できないことを ....
結び目を
ほどこうとする指先は
きみの吐息の熱さのなかで
やわらかに
能動のつもり、の
受動となる
名を呼ぶほどに
ひとみはひとみの鏡となって
きみは時折
ひとりで勝手に向こうへ ....
このひとつぶに幸いあり
このひとつぶに不幸あり
不ぞろいに置いたそのつぶを
くちびるに含んで夢を見る
あのひとのくちづけを
あのひとのかんしょくを
私の恋はいまだ熟さない
....
青い空に白い雲がぽっかりと浮かんでいる日は
私は幸せなのかもしれない
その雲がところどころばらばらで
なんとも不恰好にみえるということも
私には幸せなのかもしれない
得たいのしれない、雲 ....
孤独を繕う句読点を無造作に並べて
線でつなぎとめただけの街
意味のない言葉は
空白を満たし
ちからなく溢れた
(思いのほか冷たい。)
それから
未消化の確執のように
近づいて
近づい ....
家族
焼け跡から一枚の写真
楽しかったあの頃
親を殺した顔が笑っていた
子を殴り続けた顔が笑っていた
ひとのこころ
クルマに顔があるように
ひとの ....
朝露が飾る野原は 可愛い
お澄まし顔の女の子みたいに
しいん、としていて
洗い立ての髪、風に靡かせている
黄色い花、薄紫の野の花の
色々の顔で 僕らを見ている
ねえ 僕らも そんな風 ....
―もう少し生きてみるか―
駅の改札を出てきて
ふと洩らした中年男のことば
連れがいるわけではない
一人で改札を出てきて
ふと洩らした独り言
僕は電車に乗ろうとして
改札に向っ ....
夜
目が覚めて
眠れなくなって
空なんて見上げると
そこに
星があるのです
トボトボとか弱く
消えそうな星が
あるのです
わたしは
自 ....
当て所無い片道切符の遠い駅
尿意に立ち寄ったトイレは
蟋蟀らしき秋虫の音が木霊する
あれは便所蟋蟀だろうか
所業に耐え無為と生きる便所蟋蟀
然し秋虫の類では無いような
さりとて確かめたりは ....
指環をつけようとして
指を眺めたら
関節がすっかり変形した
人差し指と
中指と
薬指とが並んでいる
少しばっかり
痛々しくもあるそれは
持てる以上の力と知らず
がむしゃらに使った ....
空を
見上げようともしない、君の
泣きはらした頬の ぬくもり が
染みる
舌足らずな恋は
時を止めるすべも知らず
いたずらに季節ばかりがすぎて
最後の秋
西日を受けた
一面の ....
{引用=
心を蝕む夢幻の色
叶わぬ願いが埋められた
星の荒野は
あの蒼天の彼方
高すぎる空の輝き
曇った大地から立ち上る幾多の眩暈
行為のシルエットをたどりな ....
前から雨が吹いてくる
上り坂
秋はまだ始まったばかりだというのに
傘を持つ手が冷たくて
両手で持つというよりも
両手を温めている
足元を見ながら進む
雨の上り坂
流れてきたのは ....
遠くに来ている。雨が降ってきた。
ぼくは黒い綿のパーカーを羽織って
霧雨の中を行く。
ふと見ると、砂粒のような、でも
うるおいのある水の粒が
からだいっぱいについている。
ぼくは水の粒をい ....
遊ぶために生まれてきたんだ
それだけだ
それが人間だ
仲良くみんなで遊べばいい
それなのに俺はここ最近
とらわれてる
檻の中に
自分の模様に
なあ月が
見え ....
ぼくは輝きたかった
理由は必要ない
何に輝きたいということも
特別に何もない
世の中に錆びたまま
埋もれてゆきたくはない
誰も知られない自分を
知られるのが怖いのかもしれない
....
東京にいるということは
木葉を隠すならば森へ と同じ意味であり
隠れた!隠れきった!やった!
と思っているのは実は私だけで
その滑稽な姿さらせば
ユニチャームのサンプルをもらうことも出来ない ....
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