寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
明日のための『今』を食べる
『今』を吸収した体は少し古くなり始める
古くなる体を抱えて、明日の続きに怯えたり、期待する
明日の続きは死へと確実に繋がっている
一つの歯車が錆始める
きゅるきゅ ....
君は
よわくて
その選択は正しい
うまく隠れすぎて、呻く
君の声が聞こえたときには遅かったのだね、そして
そうさせたのはたぶん私だ
君は
わがままで
その選択は正しい
魔 ....
ありがとうを言い忘れて
今日もぼんやり青空を見る
さようならが言えなくて
今日もぼんやり夜空を見る
君に伝えたい
コト
いっぱいあるんだ
明日の朝
誰もいない原っぱで
手 ....
とうりゃんせ と唄われた
神社の裏手
一本の老樹が
わずかに肩をいからせながら
両手を広げ
しどけなく枝先を垂らす
関所と謂われたこの地で
何のためらいもなく
敷きつめられた白 ....
自分の友人のことについて語るのは難しい。そこにはどうしても遠慮や照れくささといったものが介在しがちであるし、ましてや彼は僕がやっている「反射熱」という詩誌の同人でもあるので、下手すると仲間褒めといっ ....
豊かさの中で
ぼくたちは泣いている
ほしいと思ったものが
いつでも手に入るから
いつでも捨ててしまう
持つべきものがなくとも
誰かが持ってきてくれる
便利さだけでは
豊かに ....
きみに会いに行く
本当だった
列車に飛び乗ること
それも盲目ではなくて。
灰色の雨に流され
こころの小石が転がる
舞い散った落ち葉を踏みしめる音は
きみの泣く声に似ているから ....
森のなかを流れる
チェロのように
日々が穏やかであればいい
雲母の放つ
光りのように
心地よく剥がれる断面を重ねて
生きていきたい
うまく思い出して
うまく笑う
どんなと ....
もしもここに
うつくしい空き箱があったなら
お風呂のように入って
外を眺めよう
風の吹く
外はやさしいように見える
口笛も吹こう
あの懐かしい歌
箱の片隅には
ヒイラギが落ちてい ....
わたしは夜を求める
濃紺の空と赤い星を求める
きみは夜を求める
藍の雲としろい月色を求める
ふたりが求めた夜の中で
風見鶏は廻ってゆく
流れ着く先を知らず
また
愛情、の何かも ....
わたしって
よく道をたずねられる
どこかやさしげにみえるのかな
近藤さんの朗読した「夕焼け」って作品大好きで
繰り返し読んだりしたけど
登場する娘さんのように
「やさしい心の持ち主」なんか ....
それはきっと嵐の夜で
鈍色の雨に混じって
空が降っている
寒いね寒いねって言いながら
冷たい体を寄せ合って
天井の無い朝を迎える
硬くなったパンを分け合って
薄いコーヒーを ....
最初はマジで嫌だった
スタッフのひと替えてもらいたかったけど
お気に入りのお店だったし
いつものひと不幸があって急に休んだらしいし
どうにでもなれって心境だった
助手のひとがわたしの好み ....
さよならさよなら
聞いて、聞いて
まだ笑ってるね
まだ泣いてはだめ
だめだよ、えがおで
いっしょに おどって
忘れるまでくやしいなら叩け
わたしは大丈夫だから
腕も足も折っていい ....
砕けたアイボリー
平和な、この世界から
(脱け出せずに)
白黒の斑点
澱んだ苔色の空
引っ付いては離れない未来を
どれだけの戯言で埋めれば
救われるんだ、
吐く息白く ....
風が鳴る
凍える魂を
ひき連れ去る寒月を
湾曲する星夜の岸を
鋭く細く鳴っている
{ルビ居炉裏端=いろりばた}の数え歌は
今宵も尽きることはなく
月影の枝が
障子に透けて心細くゆれ ....
ちいさな雲を
いちまい、いちまい、風が縫って
空に真っ白な衣を着せている
あそこへ往くの?
問いかけても
もう動かない唇は冷たく
ひかれた紅の赤さだけが
今のあなたとわたしの今を
....
都会に住みはじめ一番変わったのは
靴が汚れなくなったこと
母に駅まで長靴持ってきてと頼んだのは
実家に帰った際の笑い話しとなったし
でこぼこ道に足をとられることもなくなった
色とりどりに ....
自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら
陸のいたる所では ....
まどろみの向こうで
たまごが焦げる
かしゅ、かしゅ、と三つを割って
手馴れた指は
ぬるく充満した昨夜の空気と
朝とを掻き混ぜたのだろう
ふっと白くなる意識と
休日の実感とを
贅沢に ....
ほんとうの事が知りたいけど
正しいかどうかはどうでもいい
つまり、とりあえずは磁北を信じて
夜どおし動かない星を探し出す
北極星、と呼ぶのは僕たちだけで
イトスギ達にはきっと別の呼び名がある ....
大好きな人の肌に唇を押し当てるのが好きで、
その熱と、鼓動を。
生きていることに感謝する。
生きていたことに感謝する。
熱と鼓動を確かめる。
余計なことをすべて省いてしまえば、生きるとは ....
つまりわたしは苦手なのだね
この、人と争うということが
漢字を書くと
はなまるとばつが生まれ
走ると
一着とビリに分かれるということが
途方もなく苦手なのだ
誰かに尻で叩 ....
孕まないことにすがるのはよせ、と
男は背中にいろいろな武器を背負う
産卵を邪魔しないで、と
女は腹にいろいろな楽器を抱える
部屋の中がけむくじゃらになって
お互いの顔も見えないのに
ど ....
空はいつからか
うそをつくことを忘れたようだ
また 冬に近づいた
寄せ集めた言葉で
とりあえず冬を迎える準備をした
....
めまいがするほどに単純な設問の数々
「はい」か「いいえ」のいずれかで答えよと記されていた
簡単な筆記試験だからと
人事部のひとはわたしを残し出て行った
小一時間もあれば出来るよね
何だかなあ ....
おめかししてまいりましょう
からす瓜もほんのり色づいて
アザミの花が熱いため息ついたから
あなたに逢いたくなりました
おめかししてまいりましょう
赤いカエデに負けないように
くちび ....
柔らかく重なる
雲の色彩は
思う
あなたの
帆走する
今を、未来を
かすかに拓かれる
澄んだみずいろは
呼吸
わたしの
アクアリウム
泡よ、せつなよ
いつのまにか、ふた ....
きれいに片付いた部屋で
自分の時を戻したくて
タバコに火をつける
儚い夢の破片を一つづつ丁寧に集めて
一つの夢の結晶を作る
この世に降り立つ以前は
俺も天使の一人だっ ....
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