この街にまだ雪は降らない
灰鼠色の空は浅い冬のまま
恋人たちの吐息や
ブランコを揺らす手に護られている
わたしの何処か深くにある黒いものや
寒い、と寂しい、が似ていること
それに気 ....
{引用=映写機の音がする}
彼は 人のいない小さな劇場の
古く湿った 客席に座り
白くぼぉっと光るスクリーンを見つめる
{引用=ただ、かたかたと廻 ....
座席を倒し
サンドイッチに舌つづみ
ドアミラーで
OLのしり 眺めながら
午後の紅茶ののど越しに感涙
わたし
いくたびも痴呆する
キーをまわすと
あたたかい振動が泣かす
....
暗闇の中 沈みかけた月の光を 受けて
ぼんやりと その姿を晒す 赤い 赤い ポストの前で
あたしは 酷く 緊張してる
やんわりと 吹き付ける冷たい北風は ジワジワと
あたしの体温を 奪って ....
誰しもが親を持つ
親のいない者はいない
無限に続く時間の中で
巡り合う奇跡
曇りがちな心を抱いて
大切なものを見落としてしまう
一番大切なものは何?
自分 ....
それで ええねん
そんなふうに やさしくしてくれたりな
そんなことでも ええねん
その気がないことだとか
そんなことは ええねん
むしろ 期待することが ....
遠くで
ずっと 遠くで
美しい人が泣いている
どちらの方角やら
聞こえてくる
祭囃子のスピーカー
日が差す昼の部屋
夕暮れの湿った砂
爛れたアスファルト
目の端の折り紙
遠くで
....
北風が吹く朝
何も考えることなく
決められたことを
いつものように歩く通学路
道に何かが落ちている
近寄れば
霜柱の土にまみれ
凍った一匹の働き蜂
この世に生を受け
この世の ....
明日は晴れだそうだ
一ドルは百十四円だそうだ
独居老人が遺体で発見されたそうだ
宝石はみんな鳥に
持って行かれたそうだ
誰かが売春で捕まった翌日に
似たような誰かが
表彰されてい ....
{ルビ都会=まち}のなかで
電線に絡めとられた満月がわたしを見下ろす
おまえは自由なのだとでも言いたげに
「ほんとうのしがらみは見えないものなんだよ」
とつぶやいて
蛍光灯のした ....
古たぬき
冬の我が身を
苦しめん
終わりを告げる声は無く
始まりを告げる声も無い
泣くのは
人だけではないだろうに
それでも再び
巡りくると疑わず
ほら
雪って、生きているのよ
空からここまで辿ってきた足跡が
真っ直ぐじゃない
一粒ずつみてごらん
そうしたら、ね
小さな顔がある
あ、いま 目線が合った
雪はそのむかし 薄紅 ....
雪ん子舞い散る故郷から
童子たちのまぶしい笑顔が消えた
あの頃の笑い声は
顧みることを忘れた古いアルバムのなか
北風ぴゅうぴゅう寒かろう
すっかり刈り取られた稲田を望む
古 ....
古いモルタルの
アパートの二階へ続く階段を
普段どおりに駆け上がる
足音はある意味合図だろう
鍵穴にキーを差し込んで
ここまでは完璧にいつも通り
ドアを開けた途端
部屋はいい匂いに溢れて ....
難しい。あたしは今、自分の気持ちに名前をつけられない。
「センチメンタル」、とか?まさか。そんな安易な名前じゃない。
胸がきゅうきゅうする。いつも味わってる想いなのに。
置いて行かれる側 ....
好きですってね
ためしに言ってみたんだよ
それだのに君はさ
ありがとうって言ってさ
僕は困っちゃった訳だよ
だって僕は君の事
好きだったものだから
本当にどうして良いのか
分からなくっ ....
もしこの僕に翼があれば君の元へと飛んで行けるのに
もしこの僕に翼があれば君が悲しみにくれないようにそっと包んであげるのに
もしこの僕に翼があれば君が二度と泣かないように強く抱きしめてあ ....
サラサラ
サラサラ
時の流れて行く音が聞こえた
ドクドク
ドクドク
血液が流れる音が聞こえた
カーキ色した夜を越えて
浅い眠りか ....
マンションの鍵を開ける
左手にぶら下げた金魚
学校の友達と
お祭りに行ったんだ
金魚すくいでね
僕が取ったんだ
リビングの扉を開けると
ママはソファーで横になっていて
つまらなさそうに ....
今日生きれてよかったと
思える日が一日でもあれば
一週間は生きてゆこうと思える
今週生きててよかったと
思える週が一週間でもあれば
一ヶ月は生きてゆこうと思える
そう思えるのはわず ....
リンリンと初雪がゆっくりと
空から落ちてきます
手で取って見たけど体温で
雪が滴へと変わってしまいました
今日はずっと降っているらしい
明日起きたらスグ窓を見て ....
幻想を かすかに、いだきながら、
ぼくたちは、 恋をする。
それでも、やっぱり、
現実は おそろしくて、
なにかの幻想を いだいている。
もう ....
喜びのうたが
空から零れてくる
おはよう、おはよう、おはよう
躍動するエネルギー
まあるく紅く凝縮すると
ほら、朝が来る
大きな蒼い空に雲
浮かび、たゆたい、 ....
陽だまりのベンチで
あなたの姿を見つけたよ
何気ない仕草のひとつひとつから
幸せのあり方を掬いだしては
これで良いのだと
ひとり頷くあなたの姿
大きな卵でも抱きかかえるように
胸の前で孤 ....
* とまどい *
夢の中で
わたくしは
おんなだった
目覚めても
なお
わたくしは
おんなだった
こんな朝もあるのね
* デイズ ....
今日はこういう日
ざわめきの わけわかんない ピアノ線で かこまれた
ただ ながめるだけなら 許せるんだけど
まえに 進めないジャン
寝ぼけた原色の 雲が あしもとで小さく立ち上がる
....
目に見えない悪魔が僕を操る
虚言と見せかけの優しさで僕の心を翻弄し
前向きに生きてる自分を闇へと誘う
虚言の陰では偽善者と化し
傍観者の如く成り行きを見続ける
悪 ....
あなたはわたしのものではない
わたしはあなたのものではない
うそぶく唇にくわえる煙草はバージニアスリム
煙草を吸うやつは口唇期から抜けてないんだぞと
嘲笑ってはみたが
おれも喫煙者だから薮蛇 ....
はるは さくらのおちるそくどでやはり
おちていく
はるに かぜをまとった やどなしびとと
おなじ ことばで
おちていく
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