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夏 夕暮れて
逃げ水の空は
ひかりの端から
てのひらに現れる
なんてあざやかな文字盤を濡らす
鎖されて昏く
放たれて赫ぎ
ふりかえれば
くるりくるほそ長い螺旋
胸の人の絵姿にも見 ....
雨の気配を感じて手のひらを空へ差し出す
つるりとして
なだらかな
わたしの丘に
今日の雨粒が流れたら
くぼ地の枯れた水路が
一瞬よみがえる
かつて
そこへ流して遊んだ
笹の葉や
....
眠れない夜 眠れない夜。
窓の外には月明かりが照らしている。
その一方で、
西の国では大風が吹いている。
雨は来るのか?
雨は来るのか?
期待と不安の狭間で、
心は風鈴のような微 ....
ホソカミキリムシよ、
君はぼくのひみつの友達、その一人、
君もまたいつの日かのぼくに似て、その身動きはまったく取れず、
やがて本格的なスピードで走行され始めてもなお、けっして振り落とされまいと、 ....
秒針が力なく明日を告げる、残骸だらけの街を抜けていくと海があるはずだ
けれどもあなたは空気の抜けた風船、口づけても口づけてもすうすうと抜けていく
今日のために買った靴を捨て 鞄を捨て 指輪を捨 ....
あの……おれ、夢見るんですよね、海の。ときどき夢のなかに海がでてきて、おれはサーフィンやってるんです。でっかい波にのってると、そのままヒューッて空に飛んでっちゃったり……あと……パイプ・ラインのなか ....
死んだ草が風になるのを待っている道の秩序を
ソールで滅茶苦茶に荒らしながら歩いた
深い湿気のもやが身体中にまとわりつく
携帯プレイヤーのバッテリーは音を上げ
音楽は記憶の中だけでコードを探 ....
いつもの街道沿い脇に
群れ開いていた紫の花、
今朝一斉に萎み縮んで
この移り変わる命の顕
改めて感じ入る私に
どろんと地平に上がる月、
その赤々とした巨大な異様
纏わり沸き上がる感情襲い ....
日曜日の夕方
猛暑です
私がどこで何をしていても
ここは猛暑です
この世に参加して随分経ちました
参加賞を貰いましたか
まだですか
もうぼろぼろですがいつもポケットに入れています
....
部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教え ....
波リズミカルに打ち寄せる
浜辺 灰白にて広がり
貫く漆黒の直線、
後光帯びる弧空、
やがて訪れる
深い夜闇に
点る明澄な灯り
手を繋ぎ寝そべる二人に
対立し合う世界の響き、 ....
真夜中に点灯した冷蔵庫の奥であらゆる向きに齧られたチー
ズケーキが発見された\反射的にわたしもかじりつき\素早
く体温を加え咀嚼を開始\ねっとりうっとり\うまれるチー
ズケーキのかがやき ....
半月のゆらめき昇る時
哀れにも
恋の嘆きのリフレーン
がらんどうの
もはや、夢をつくり得ぬ
心
何もかもが
その中で共鳴するから
全てが 一様に化合さ ....
みじかい夜が始まったとき
どうすればいいかはわかっていた
どんな夢を見て
どこへ行けばいいかも
その先でかならず
あなたを失うことも
夏の熱風、
唸る
大地天空宇宙に
肉の苦と魂の闇、
突き刺し
抹殺の誘惑に
白くたじろぎ魅せられながら、
この世に在るもの在るもの
すべてと交わる
確かな霊性のひとひらと成る ....
昔のように
直ぐに見られる場所は
かなり少なくなった
山奥の綺麗な川に行けば
たくさんの蛍に逢える
まるで銀河のように
魅力的に飛び交う
蛍な夜
蛍の歌が聞こえてきそう
....
祇園の石段の上から
灯の街を眺めさせたいと
私の腕をむりやりつかんで
つれて来た あなた
遠い異国の昔
王宮の血汐がはねあがった日
革命の巴里祭
そして日本では祇園祭 ....
この夜陰、
向かいの家
ガラス越し、
灯る明かり
忙しく動く人影
ふと吹きつける暖風に包まれ
やわらか わたしは私を感じ
只 静かさ奥に横たわる
夏の夜空に
打ち上げられた花火を
僕の車輪にして
遠く離れた
君のいる場所まで
漕いで行く
群青の草原を
駆けて足りるなら
炎の縁に
君を飾りたい
花火が街を照らす間に ....
願いが叶わなかった日
遠く、命の向こう側から聞こえてくるのは
ニイニイゼミの声
毛穴から染み入り、毛細をとおって
脳内に聞こえてくる
頭上を爆撃機がかすめて飛んでいた
なのに街は箱庭の ....
会社の大会議場のお客様控室に
ちょっとアンティークなドレッサーがある
清掃に入ると鏡を拭くついでに
ヘアスタイルを確認したりしてしまう
くもりない三面鏡が私を映す
一面に ....
灰青色のかなしみが
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で
六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた
....
線で満たされていく
形ばかりの電話帳と
電話帳ばかりの形
ただ笑い続けるコップが
羨ましかった
助走
午後に向かって
身体や言葉から
剝がれていく
ちぐりすからの手紙が届く
....
雨上がり、片足の鳥はしっとりとした
青い匂いに近づいてくる
昨日と星を糸に結んで
夢を夜空を浮かべている
爪先には
赤い月が撓んでいて
その下には時が這いつくばっていた
廃線の駅にも ....
夏の昼間の空は
澄んでいて
空っぽの
わたしの頭のようだと思う
どこまでも青くて
遠く冷たい宇宙と
頼りない月に
手を伸ばしている
呼吸も
愛情も
欲望も
暑くて仕方ない ....
君達はすべてのものに、ほんとの社会の窓を
開け放つために生きている。それを抑えつけ
る、真実のない化け物たちに立ち向かい。
ふたつの気持ちが重なって消えてしまうこと
はよくある ....
雨は涙ににていてね
いつかこぼれるものなのよ
どんより空を見てごらん
うるむ瞳にみえるでしょ
雨は涙ににていてね
とまらなくなるものなのよ
空がわんわん泣くのなら
今はいっし ....
小さなグラスにウイスキーをなめなめ
夜更けて
行くのを知る
そういえば私の影は何処へいったでしょう。
「探しにでもいったのでしょう。」
あら、何 ....
目の前に一本の道が現われた。
この道を行けば、海に出る。
ほら、かすかに波の音が聞こえる。
見えてきた。
海だ。
だれもいない。
天使の耳が落ちていた。
....
電車に乗ろうとしたら
頭の先から尾ひれの先まで
すっかり人魚になっていて
人魚は乗れません、と
電車の人に断られてしまった
取引先には遅れる旨連絡をして
しばらくホームで待つことに ....
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