きみ、おちた
黒いひとみだけが さいごまでしずかだった
河の底、四月は冷えて
瞑っていなければ 声がでないのであれば
こわくないところへ連れていって
深い水音が ずっとずっと ....
突然の雨
目指すは君
沈んでいる君を
助けるために
走っている最中に
君のローファーが
横断歩道に脱ぎ捨てられていたから
もう時間がない
いつの間にか雨は止んだ
今日 ....
心はいつも籠の中。
苦しさ紛れの言葉遊び。
朝方の霧雨に煙る旅情。
夜はまだ先。
渓流の流れに似たひと時。
我が腰の辺りを啄ばむ猛禽。
湖でもがく 浮上の兆し。
....
蝉がひっくり返り動かなくなっていた
マンションエレベータ前のコンクリート床の上で
僕は危うく踏みつけるところだった
何もこんな殺風景な所で死ななくても
僕はそう思いながら摘まみ上げようとした
....
動かない川の水
淡い陽光に照らされ
タールと銀の陰影混交
濃密に静止して
対岸の雑木林
そよとも揺れず
木々の隙間から
白い空間 奥まり覗く
凝視されている気配
は
確かにアカ ....
唇が口笛が造形する
音響銀河
銀のヒビキ
波紋広げ渦巻く渦巻き
疼く身体
降りしきる雨に
疲労し尽くしながら
既に放擲された己
絡みつく白腕払いのけ
欲望を
情熱を
衝動を ....
真夏は
巨大な安穏スクリーン
透明な被膜の内側を
ふわふわ微睡む
人、森、猫
唐突
道路に
空いた穴
その深淵は
弾け飛んだ信頼の重み
傾く生を朦朧と
夏の熱気に曝け出し ....
海の向こうに
蜃気楼が見えたら
熱帯夜の中で
君の香りがしたら
お水の中に
海月が泳いだら
もう夏の終わり
あの日に
買った金魚は
傷だらけで元気がない
掬い上げた ....
🔶
愚か者は僕だ
笑いながら 手は震えてた
伸ばしかけた手を伸ばす場所さえ
わからなくなった
落ちる雫を忌々しく思い
それに また笑った
いつだって あの頃の君がよかった
....
砂を両手でギュッと握ります
ハートの形になります
ていねいに持たないと
パラパラと崩れてしまいます
砂をギュッと握ったのはカミサマです
このハートをね
シワ ....
発火する手前で
なんとか世界は持ちこたえている
そんな暑さだ
空へのばした緑の手は
もはや力なく横たわり
おそらく
何もつかめないまま
花さえ咲かすことのないまま
明日には
残骸 ....
改札口の向こう側で手を振るわたしを
最後まで見届けて
家路へ戻り誰もいない部屋へ辿り着く
さっきまで一緒にいた
あの景色が嘘のように
すべてがモノクロの世界になって
貴方のいない日 ....
私の気づかない私は
いつも心の中で
感情をむきだしにしている
地団駄踏んでいる
いろいろなものを
放り投げては拾っている
私の気づかない私は
いつの間にか
君を怖がって ....
私はもう駄目だ
そう呟けば俺はもう駄目なのだ
もはや俺には字が読めねえ
腐心する毎日さ
気取り果てた俺だ
自己紹介すらままならない
お立ち台に立って
インタビューされることもない
量産 ....
海だ
荒れ狂い、渦巻き、
静まり返って包み込む
青い蒼い碧い
無限の広がりだ
私を呑み込んでくれ
殺してくれ
生かしてくれ
その波打つ柔軟な腹に ....
単音が積み重なって、コードになっていくように
不運が積み重なって、卑屈になっていくように
努力が積み重なって、成果になっていくように
怠惰が積み重なって、堕落になっていくように
言葉が積み重な ....
今日はひとまず安眠しよう
ため息がひんやりとわたしをなだめる
もう十回読んだ小説はくたびれ
わたし自身と甚平もくたびれ
うながすようにクーラーが冷たい風をはきだす
見事なくらい夏は涼しい ....
懐に忍ばせる 心のよりどころ
片手で開くと 手の一部になる
早くふりたい
香の混じった風が吹き
心の落ち着きをとりもどす
真夏の心のよりどころ 扇子
僕はいつも余所見をしていた
視線の先には他人がいる
それは
嫉妬、恐怖、潮流に乗る時の合図
そのどれもが、自ら発したものではない
普遍的なものを意識した時に、現れる巨大な影
そのどれもが、 ....
月のない部屋で
夜の靴を脱いだら
恋の魔法を閉じて
ひとつの影になり
込み上げる指先で
君を包む線を描く
無くさない強さを
そっと背中で結ぶ
煌めく星のような
刹那を綴りながら
....
書いて 書いて
消せるものは 消せばいい
心にはいつだって
鉛筆と消しゴムがある
あなたとのことは
強すぎる筆圧で
かすかに
残ってしまった
つめをきった
爪を切ったの
もうあの人のために
オシャレなんかしないように
そもそも塗るのがうまくいかないと
イヤなタイプだからさ、わたし
塗ったり落としたり
面倒くさかったんだ ....
夜
ひとつの金属が鳴り
かけらのように冷えてゆく
響くことなく かがやいてゆく
背中を押す手が
ふいに昇る
何本かの指を
残したままで
声を映す手鏡に
....
思い出の街の
いつもの背中で
待ち合わせ
太陽が消える時に
歩幅を合わせて
アナタの名前を呼ぶ
もう決めたの
散り散りの想いを
繋ぎ合わせると
また迷い込むから
も ....
浜辺を歩いた
ここでは きっと どんなことでも
許されるのかもしれない そう思いながら
私は 浜辺を歩いた
ウミウシ そして 砂底にいる
カレイの姿を見た 確かに
海の中にいた ....
なんにもない
なんにもないこの界は
ただ白く白く輝いて
音を響かせ和んでいる
響く音はそのうちに
透き通った奥行き旋律
形造ってくっきりと
光の輪となりループする
あふれるあふ ....
あなたは手紙
生まれたときから
たったひとりの誰かに
宛てられた手紙
行く宛は今は
雨にでも降られたか
少し滲んでて見えない
けど確かに書いてあった
届けば大切に
読んで ....
朝
君が
遠浅で
わたしを
呼んでいる
幸せなゆめを
見ていたいなあ
水がつめたく
感じる様な
繊細かつ
美しい
君の
夢
昼
私は
海の先
蜃気楼を
じ ....
うそをならべて
恋を楽しんだ
全部ほんものみたいににせもの
でも心は痛いし
ふわふわするし
それで目眩がして
でもそれが病みつきなの
深夜のファミレスでいつまでもしゃべっていたかった ....
感情は小石一つで簡単に転んでしまうもの
山脈つたいの尾根を歩いている感情
左は恋愛感情
右はただの顔見知り
笑顔一つで簡単に左に転びます
渓谷に架かるつり橋を渡り切れれば ....
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