使い方のわからない
キッチンのスパイス
去年の日付の賞味期限

クミンやカルダモンを
ゴミ箱に放り込んで
鍋の中には
ニンジンと玉ねぎ、じゃがいも

簡単に共感して
勝手に見切りを ....
瞳の奥の炎が揺れて
捉える差異、収集する印画紙
あなたの心は何処にもないし
永遠はわたしの中にもない

向日葵が項垂れ色を失っても
奪えない若さ、その感覚、愛を
運命のように色付けた
 ....
寄せては返す波に
少しずつ後ずさりする

わたしたちは些細な願望や欲望を叶えて
どうにか生きながらえているね、平成

何か言い訳をしたくて仕方ないだけなら、
たとえば、あの鐘を撞いてみれ ....
並木道のやわらかな絨毯
ざくざくと二足の靴がふみ鳴らす
転がるように進んでいく

寂しい色したフェンスの影
まるでレースみたいだった

ざわめき

小さな音が重なって騒がしく
虫と ....
適当に引っ張り出したTシャツから
今は使っていない柔軟剤の匂いがする

どうせ乾いていく通り雨の先

住宅街の暗闇でこっそりと線香花火に火をつけて
笑い合っているうちにぽとりと落ちた
光の ....
あれっきりだけれどお元気ですか
月と火星を指でつなぐくらいの距離
びゅんと、目をつぶっていれば三時間くらい

インターネットがぼくらの秘密基地から
渋谷の交差点になったころ
あいもかわらず ....
嵐の到来を伝えるラジオの音
突然の雨がアスファルトを冷やす
雲が覆い尽くした赤黒いアーケードを足早に歩いた

湯気のように霧散していくこともなく
ただじっとりと身体に纏わりついている
ぐず ....
白い光があなたの耳を透かしている
あなたの血管が浮かび上がる
透けた肉は赤く
あなたの心臓はいま動いている

あ、また、つい、なんて凝視しては
なんでもないよと手を握る、握り返す
あたた ....
あれから七年、今日も立川行きの快速に乗っています
いつだって反対側のホームに渡ることができるけれど
ルーチンになった行動に、諦めが付くようにもなる

あの頃を取り戻したみたいな窓から滑り込む沈 ....
行き先のことはわからない
水中で俯瞰する 沈んだ街
絶え間なくぶくぶくと
光にむかって昇っていく

義足をつけて歩く人魚が
満員電車に身体を押し込み
やがて泡になるまで
探す かつての ....
対岸の小さな明かりたちを
こぼしたビーズのように拾い集めている

たぶんもう二度と、永遠に来ないだろう完全な夜のことを思う
いつだってやり直したくなった頃には潮が満ちていて
もう引き返せない ....
冷え込んだ街の空気がしつけ糸になる
瞬く間に指先から地球の温度に馴染んでいって
フェルトのように絡み合う

人間も冬眠できればいいのにね

美味しいものをたくさん食べて
寝床に綿を敷き詰 ....
飛んでいったコンビニ袋が
最近見なくなった野良猫に見えました
木枯らしが渦を巻いて

去っていく名前のない怪物は
耳の端を赤く染めている

そのうち冷めるからといって
一瞬のぬくもりを抱 ....
だれかの手袋が車に轢かれる季節がくるね
あと二十四歩でたどり着く家の明かりは暗いまま

金木犀散らす弱い雨に一つの傘をさす
住宅街の自販機にはまだ温かい飲み物がなくて
裏側に隠れた太陽を待ち ....
視線の先、ふたつのほくろ
気づきじゃなくて確認だった
並んで歩くリズムが少しずつずれていく
もうたぶん知っているでしょ

黒い地面に丸い染みが広がりはじめて
柔らかい肉に食い込むスーパーの ....
貰った花束をスマートフォンで切り取ったり
取れてしまったボタンを小さな箱にしまいこんだりすること

連なっているはずの港区の海の匂いは
知っている海と少しだけ違うような気がした
平坦につづく ....
歌う汽笛は下手くそだった
生命波打つ、きみどり色の絨毯の上を航海する船
柔らかな日差しが撫でるように氷を溶かすから、行き先はどこまでも広がる
細かく枝分かれした新芽、太く根を張って、遠くを見通す ....
野良猫に話しかける人を
路地裏の防犯カメラが覗いている
春の陽気はくすぐったいから、似合わない

見下ろせば宴、地獄の淵はビルの屋上にある
天国の近くは高い金網が必要

恋はいつまでも恋 ....
密室に詰め込まれた人々はただ寝静まっているふりをしていた
目を凝らせば二十六時を指す文字盤が見える

細長いスポットライトが客席をなぞって点滅を繰り返し
エンジンは緩急をつけながら唸り続けてい ....
デパートの屋上で子供の頃の願望が簡単に拾えてしまう
少し汚れたパンダにまたがって、ためらいなくコインを入れた
童心に帰るほど、帰らなきゃいけない距離ができたこと

まだ寒い春の昼間に
花粉症 ....
ぬるい風が強く吹いて、寒さの角が丸くなる
冷たさがもう人を傷つけたりしない

そのうちうんざりするような薄水色の空が広がって春を呼びはじめるね

仄暗い街にとぼけた光が刺すまでのこと

 ....
打ち上げられた六百頭のクジラにナイフを刺した
どうしようもなく大きなかたまり
どうしようもなく身を投げた人の命が溶け込んでいるから
潮の匂いは生の匂いがする

冷えた肉体をプランクトンが分解 ....
そうや、おらんかったね

自分以外の人がいる居間は暖かかった
冷えたこたつの中で丸く、眠るその影に小さく蹴りを入れても
明日もそうだろうね、言い訳することもないよ

灯油を乗せた車の音楽が ....
黄色い海があってもいいでしょう
膠を火にかける、独特の匂い、かき混ぜながら換気扇を回し
くつくつと沸く鍋底を見つめる
足りない色を数えて
描けない絵のことを考えていても仕方がないね

のめ ....
グッドラック、発したことない言葉
語感のよさだけが残る
旅立つ日の特別な高揚感は
からんだ糸をほぐす

まだカーテンのない部屋
白い靴下の大きな男たちが運び込んでいくダンボール
馴染んだ ....
胎内の音は覚えていられないね
夜明けの前のカラスの声も

皮膚の下の七割の水は今も轟々と音を立てているというのに
わたしたちの耳は気づかない

潮で錆びた看板や港町の工場や
点在する小さ ....
軽やかに頭を垂れながら
逃避行の挨拶はこっそりと

カメラに背を向けた
二人きりのエレベーター
秘め事にもならないな
車のキーが揺れていた

流れていくフロアの景色
わたしたちは大丈 ....
次の日の青あざもきっと可愛い
レンタルのスケート靴は湿っているけれど

夜景の中の白いアイスリンクで
恋人たちが不慣れに踊る
ろくに整備もされていない足元
にんげんの群れも氷像のよう

 ....
乾いた太陽、冷え切った指先にほどけた毛糸を巻きつける
赤い手のひらは落ちていくのが早まったし、昼はとても短くなったね
深い夜は夢を見て、朝、現実に戻るまでの道のりはとても長い

桜の花びらのよ ....
視線を奪われた白いカーブ
狭間のプールの匂い
青かったはずの人工的な水の塊も
夏が終われば緑色になってしまう

とてもしなやかに弧を描いて
滑り落ち、そのまま飛び込んで
水しぶきが舞う
 ....
青の群れ(33)
タイトル カテゴリ Point 日付
spice自由詩320/3/11 13:36
秋の啾啾自由詩219/9/20 10:15
はじまりの鐘自由詩718/12/28 2:25
地面を飾る日自由詩718/10/29 23:18
夏の改葬自由詩1418/8/28 11:07
Re:あいもかわらず自由詩918/7/18 11:56
錆びる自由詩1218/6/20 23:02
桜の季節自由詩718/3/27 23:14
百年先で待っててね自由詩1018/3/16 16:34
沈む街自由詩718/3/5 16:30
対岸で迎える朝に自由詩617/12/31 3:11
冬の裁縫自由詩1217/11/9 0:45
受容と共有自由詩1017/11/2 18:09
センチメートル自由詩617/10/12 11:38
左側、右頬自由詩417/6/1 12:51
graduate自由詩417/3/27 14:53
春の航海自由詩617/3/22 16:56
カラスは何色自由詩617/3/15 19:18
夜をゆく自由詩617/3/8 11:20
not sepia自由詩1317/2/26 18:43
昧爽自由詩417/2/22 16:38
浅瀬のクジラ自由詩717/2/14 15:58
+2℃自由詩617/2/6 16:38
藍に似た色自由詩917/1/25 14:55
荷ほどき自由詩1017/1/19 12:55
或る音自由詩517/1/17 17:08
ラストダンス自由詩517/1/5 16:17
ice自由詩416/12/26 15:18
落陽自由詩416/11/9 15:45
25mプール自由詩416/9/11 20:40

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