対岸で迎える朝に
青の群れ

対岸の小さな明かりたちを
こぼしたビーズのように拾い集めている

たぶんもう二度と、永遠に来ないだろう完全な夜のことを思う
いつだってやり直したくなった頃には潮が満ちていて
もう引き返せないねって私が言った




砂嵐みたいな海の音は真夜中の部屋の中とすこし似ている
やさしい波に拐われて、しあわせだった

糸に通して繋ぎ止めていてもいつかほつれていくんだね

大丈夫、と少しずつほどいて
あなたの小指に巻きつけたときは無敵だと思っていたよ

無敵も永遠もないことを夜の中では気付かずにいられた
一隻の綿の舟の上、カーテンの隙間から差し込む光

乾いた喉を潤そうと立ち上がって
拾いそびれたそれが足の裏に小さく食い込んだ




吐息が少し遠くのライトに照らされる
思い出だらけのたくさんの貝は青白く光を吸収し始める
冷え切った砂の上は息が止まりそうだったから
コートのポケットの中で強く手を握っている

あなたはきっと対岸で朝を迎える
夜明けに反射する光の粒に、目の奥が痛んだ


自由詩 対岸で迎える朝に Copyright 青の群れ 2017-12-31 03:11:14
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