+2℃
青の群れ

そうや、おらんかったね

自分以外の人がいる居間は暖かかった
冷えたこたつの中で丸く、眠るその影に小さく蹴りを入れても
明日もそうだろうね、言い訳することもないよ

灯油を乗せた車の音楽が響く町

厚手のニットを着たり
長袖のヒートテックを着込んだり
ウールのコートをまとったりする
わたしたち寒さに抵抗するすべを持っていないから
無意識のうちに冷えていく

冬の寒さにも、夏の暑さにも
血は流れ続けて常に温度を交換している
7年もあれば体の細胞はすべて入れ替わるらしい

お昼の情報番組のことなんてすぐ忘れてしまうけれど
忘れられないとおもっていたことを考えない日が増えたこと
ブラウン管のテレビが点いたときの音
チャンネルを変えたときのノイズみたいなものに気づく

今観てるんやから変えんとって
観てへんかったやろ
そんなやりとりをしていたはずだったのに

ゴシップにも非常事態にも興味はなかったからテレビはつけているだけだった
人の話し声やCM前のジングルがBGMになって
朝の占いだってそう当たらないから

出来ないこともそうやって確かめたいだけ

階段の下から聞こえない声、軽々と割り切れないな
古紙回収の車のスピーカーにガムでも詰めておこう

埃の被った古い姿見に映る姿に記憶を重ねている
目を瞑って夏の日の時計の針が小さな穴を空ける
うずくまっていたひとはいつのまにか姿が見えなくなった

エアコンの付いた部屋、空気の音
4Kディスプレイは静かにニュースを伝えているけれど
暖かい部屋、注がれ続ける光たちが遮る


自由詩 +2℃ Copyright 青の群れ 2017-02-06 16:38:48
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