沈む街
青の群れ

行き先のことはわからない
水中で俯瞰する 沈んだ街
絶え間なくぶくぶくと
光にむかって昇っていく

義足をつけて歩く人魚が
満員電車に身体を押し込み
やがて泡になるまで
探す かつてのこの街を観察する

鐘を鳴らす 帰る場所を知らせる

海水が傷口に染みることも忘れたころ
明るい瞳の持ち主
流れ出した感情のぶんだけ
まばゆい水面

逆らわなければ
いずれ浮かび上がる肉体

ヴェール越しの白い建物
すれ違う鉄塊にかき消される
海から出た魚が泳いでいる

快速電車より速く進む

窮屈に身体を揺らして
密着していたとしても
一つにならぬように

枯れた花を水に浸し滲む色
避ける よろける 浮かばれない
憐れむな 今を

空気の循環は続く
絶え間なくぶくぶくと
光にむかって昇っていく


自由詩 沈む街 Copyright 青の群れ 2018-03-05 16:30:33
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