冬の裁縫
青の群れ

冷え込んだ街の空気がしつけ糸になる
瞬く間に指先から地球の温度に馴染んでいって
フェルトのように絡み合う

人間も冬眠できればいいのにね

美味しいものをたくさん食べて
寝床に綿を敷き詰めて
そうして何人かとしばらくの別れを迎えられれば
春の目覚めはきっと感動的だ

小さな明かりがたくさん灯っていることと
命の光とが別物だってこと
たくさんの空気ごと包み込んで電波から断絶される
ベッドサイドのスマートフォンが光ることが
存在証明でないことをわかっている

引きちぎった糸を毎夜紡ぎ直して眠ろう
冬の月が綺麗でよかった
針の穴に通すように凍えた部屋の中を一筋照らした








春の航海
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=328034


自由詩 冬の裁縫 Copyright 青の群れ 2017-11-09 00:45:47
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