すべてのおすすめ
ひと晩中つよい風が吹いていた
翌朝いつもの道には帽子をかぶった
まだ青いドングリがいくつも落ちていた
幼子の首のように見えた
自然の範疇 織り込み済み
きりさめ交じりの風が嘯いた
境目など ....
あまたのことばが虚空を削り
ひとつの卵が残された
閉じ込められた海の幽霊は
体積も質量も持たずに時化たり凪いだり
おのれに欹てることに不自由はなかったが
鳥が縫うような眼差しのおしゃべりに
 ....
いまは夏休みということだ
同じアパートの一年生がアサガオを持ち帰り
朝晩水をやっている
ここ数日の暑さも少しやわらいで
きょう風はさかんに木漏れ日をゆらしている
濃い影から飛び立った 一羽の ....
ふたり分の沈黙を乗せて
笹舟は遠ざかる
意識を過去へ葬るための
ひとつの光の繭となって

むかし使っていた腕時計が
どこかで針を揺らしている
重ねた手が夜の魚のよう
夏の体温に静かに跳 ....
{引用=まなざし}
鉄鋼団地公園の横
線路に突き当たる一本路で車を止めた
遠く路幅いっぱいに電車が駆け抜ける
一枚の幕 昔の映画のフィルムみたいに

時間について考えた
わたしは今という ....
{引用=夏の飾花}
大荷物を咥えて蟻が後じさる
アスファルトの上をたった一匹で
美しい供物
琥珀色に透けた翅
七宝焼きの細いピン留めのような
ミヤマカワトンボの骸を牽いて
小さすぎて読み ....
地は曇天を映し
そよめきに雨の残り香
小舟に乗せられた
遺骨をひもとけば
けむりの舞踊
黒く曲がった釘の群れから
鮮血の唇が この耳に
かすかにからまって
はぐらかす
この惰性 内壁 ....
踏みあぐね
手桶の中の
桔梗色
舌で探した螺旋
ささめく人の葉の
鳥のように途切れた
輪郭を
探るように炙る
ああ破顔
時けちらして
蔓巻く祈りの向こう
海耳にあふれ
見上げる ....
ネズミにかじられた日々
錆びた釘
二階の楽園から逃げ出して来た蝶がテーブルにとまっている
青い翅に書かれた詩
息と息の間の甘い舌のもつれと苦い錠剤の散弾が
古いR&Bのむこうとこちらを煙のよ ....
頬をなぶる風 
ひるがえる恋情のように
雨を呼び
低く速い
雲は濃淡に光をにじませて

空のようにこころをしぼれるか
燃えさしの骨をひろえるか
瞑った太陽の頬をなぞるように
数える指 ....
落胆を胸元からのぞかせて
あやめ色
切る風もなく
地をつたう眼差しに
まろぶ木漏れ日
翅ふるわせる
仰向けの蝉の腹は白く

罌粟のつぼみ
空き家の庭でふくらんで
子音がとける死んだ ....
あこがれとあきらめは一本の棒の両端だ
わたしはあきらめを手に取って
虚空の真中を指し示す
逆ではだめだ 間違っても
あきらめこそがあこがれを純化し
手遅れだからこそ輝きは増し加わる
処刑台 ....
よく聞こえる耳はいらない
なんでも見分ける鋭い目も
もっと聞きたいと思うこころ
飽きることなく見つめてしまう
忘我の時をいつまでも
得ることは失うこと
あらたな構築と古きものの破壊
たえ ....
不滅の太陽の血を飲んだ
魂は気化し地下茎は炭となり
盲いた幽霊のように手探りで
誰かの夢の中
朧な形象のまま
頬をつたうひとすじの水脈もまた
過去からのもの
借りものの幽霊


傾 ....
包丁で縦にまっぷたつ
eringiの断面はしろく均一
なにもない  別段
はらわたを期待したわけでもなかったが
ningenの断面が
eringiみたいなら気色が悪い
それともこんなに単純 ....
夜の雨に置き去りにされた眼孔ふたつ
うらめしげに空を見上げている
空は覗きその身を映す 
今朝は薄曇りを着ている
一羽の烏が横切った 
互いの胸中を ほんの一瞬
実像と鏡像に引き裂かれて
 ....
海は薄く
曇り空
祖父の白目のよう

  *

憂鬱 ぬれたシャツ
窓ガラス 溺れる目
切れた唇から飛び降りた
ことばが膝に刺さって赤く咲いている

クジラがしゃべったみたい
 ....
神の可視化
行為としてではなく内なる皮膚の芽吹きとして

肺呼吸を強制された魚だった
光の泡がはじけていた

見晴らしのよい死者たちの丘で
まとう心象もなく声はすぐに散ってしまう

 ....
銀の絃まなうらに響き
吐息に狂う去年の蝶
苦味に触れてくちびる腫らし
ささえ切れずにいのちを散らす

わたしの生は福寿草の見た夢
風にそばだてながら
太陽のパン屑を拾う
土が乾くころ燕 ....
コンパスは串刺しの太陽を食らう
インクの肢体その所作に風で眼を濯ぎながら
めくれる笑顔の残像が染みになる鈴を吐き戻す娘の青い蝸牛菅で
処方されなかった秘密は気刻みに棘を起てる時計
流れに垂直の ....
生はうたた寝の夢
死は深い眠りに落ちること
起床ラッパで墓から出でる
そうでないならそれもまたよし


 辻に立つ風
  霧雨をまとい

 枝をくぐった
  ツグミの声に

  ....
鱗がすべて剥がれると
女はかたちを失くして空になった
砕けた酒瓶のモザイク
背徳のステンドグラス
これら切り傷はすべて風景によるものだ

昼の弁当を持たない子供は母の靴紐で綾取りをした
 ....
音色から剥がれ落ちた濁りが殻を持つ前に
殺意をなぞる千鳥は瞳に霧を孕む
記憶の上澄みが凍りつく立方体の朝

日陰でふるえながらほほ笑むものがそうだ
やわらかい舌の根元に産み付けられた偽証の卵 ....
明け方の夢の中へ
二人の少女を置き去りにした
二人が望んだことでもあった
彼女たちはわたしの一部だった

寝付けなかった
疲れはたまっていたし
酒もしこたま飲んではいたが
職場のとばっ ....
わたしは曇ったガラス窓
指先で書く文字の向こう
許容できない現実が冬の仮面をつける

ひとつの痛点が真空を真中から押し潰す
円く膨らむ響きの肢体 震えの侵食を
包む衣としてまなざしは海
 ....
低い天井に音楽が響く
裸の天使の鳥籠のよう
ひりひり見開く傷口
冷凍肉のかたまりに
ガラス金属プラスチック
カラフルな鋲をボウルいっぱい

焦点を拒む視線
ただ瞳の中にゆれる灯が
焦 ....
{引用=鬱蒼}
鉈で枝をはらう
雑木林に入口をつくる
入ったからといってなにもない
暗く鬱蒼としたそこに
誰を招くわけでもないが
時おりもの好きな通行人が
ちょっと覗いては去ってゆく
 ....
{引用=空白葬}
空白を肥やそうか
みかんを剥くみたいに
あの赤裸々な寡黙
仰け反って天を食む
ことばの幼虫
インクのように膨らんでゆく影
化石は顔を残せないから
ハンマーで殴っても
 ....
手持ち無沙汰に膝にのせ
撫でたのは 猫でなく
ことば以前のなにか
死者からの便りのように
ふとカーテンをはらませて
沸騰する
静けさに
肌をそばだてながら
缶ビールの残りを一気に飲み干 ....
{引用=鳥たちよ}
ヒヨドリが鳴いた
喉を裂くような声で
天のどこかを引っ掻いた
それでも皺ひとつ寄らず
風の布は青くたゆたい
樹々の新芽を愛撫するが
ささやき返す葉はまだない

公 ....
そらの珊瑚さんのただのみきやさんおすすめリスト(669)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
偽聖母/逃げ水の男- ただのみ ...自由詩1*23-8-20
リュウグウノツカイ- ただのみ ...自由詩3*23-8-12
百鬼百景- ただのみ ...自由詩5*23-8-5
怪異のはだえ- ただのみ ...自由詩6*23-7-30
惚けの呪法- ただのみ ...自由詩5*23-7-23
ものうい夏_- ただのみ ...自由詩4*23-7-17
惰性- ただのみ ...自由詩3*23-7-9
かつて人を打った石の記憶_二編- ただのみ ...自由詩1*23-7-1
六月の寡黙- ただのみ ...自由詩2*23-6-24
カタコトや- ただのみ ...自由詩2*23-6-17
快楽を乗せて- ただのみ ...自由詩2*23-6-10
転生の樹- ただのみ ...自由詩2*23-6-3
死者の数だけ歌がある- ただのみ ...自由詩3*23-5-20
生死の花束- ただのみ ...自由詩3*23-5-14
虚構の翼- ただのみ ...自由詩1*23-5-7
夜と雨の幕間劇- ただのみ ...自由詩3*23-4-30
影の居場所- ただのみ ...自由詩4*23-4-9
少年癖- ただのみ ...自由詩3*23-4-2
春雨詩織- ただのみ ...自由詩3*23-3-25
地図と蓄音機- ただのみ ...自由詩3*23-3-19
白痴美返し- ただのみ ...自由詩4*23-3-12
バンドマン帰らず- ただのみ ...自由詩2*23-3-4
恋情- ただのみ ...自由詩1*23-2-18
二人は森に住む- ただのみ ...自由詩1*23-2-11
逃避ではなく殺害- ただのみ ...自由詩6*23-2-4
すべてはじめから- ただのみ ...自由詩2*22-12-17
冬の禁断症状- ただのみ ...自由詩4*22-12-10
歓喜の歌から逃げだして- ただのみ ...自由詩6*22-11-19
純粋遊戯- ただのみ ...自由詩2*22-7-10
不憫な子_そう呼ばれたかった大人たち- ただのみ ...自由詩5*22-4-17

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する