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寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた
蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか
四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
....
{引用=破産者の口笛}
あなたのうなじの足跡
夢からずっとついて来て
真昼に座礁した
摩耗してゆく面差しの焔
古びた空想科学
瞑る金属片の美しさ
叶わないで狂うわたし
鏡の海に爛熟 ....
{引用=習作たちによる野辺送り}
鏡の森から匂うもの
一生を天秤にのせて
つり合うだけの一瞬
混じり合い響き合う
ただ一行の葬列のため
*
軒の影は広く敷かれ
植込みの小菊は ....
巨人の頭蓋の内側で
天井画を描き続けている
孤独なロウソクのゆらめき
舌の閃き いのちの虚飾
わたしたちは互いの羞恥をめくり合った
どの顔も黒焦げのまま燃え残りくすぶり続け
追慕は灰の ....
{引用=犬も食わぬ だとしても ただ己の生前供養として
またも雑多な感傷を一つの籠に盛り合わせてみる
秋を想わざるを得ない日 繰り返される儀式として}
{引用=ひとつの面差し}
睦まじ ....
{引用=忍路・蘭島}
翡翠と書いてカワセミと読む
そんな宝石が飛び去る刹那の後姿を
有難い気持ちで見送った
3500年前の環状列石は
見かけも手触りもありふれた石
そりゃあそうだろう
....
{引用=涼を狩る}
池の青さ
屏風と扇子
ボタンを外した
指は行方知れず
アオダイショウ
そっと跨いで
墓地へと続く
坂の木陰
吸った唇
....
記憶の黒点だった
太陽の鏡の目蓋の中で
ある者は熱に歪み
ある者は乾いて燃え上り
誰もが己の影に憩いを求めては
その微かな流れの干上がる時を待っていた
わたしは 光を青く投げ返す黒蝶が
....
{引用=追憶儀礼}
二人の時間はまだらに溶けて
いることすらも忘れてしまう
美しい他者 異なる種族
愛はアルビノ ひそやかな野性
{引用=お茶碗欠いたの}
月は隠れてR ....
{引用=二人の旅行}
迷い込んだ蝶が鍵盤にとまった
ゆっくり開いて
ゆっくり閉じて
あなたは水へと変わり
音楽は彫像となって影を落とす
わたしは感覚と記憶
去るものと共に流れていった
....
{引用=少女アデリーの失くした人形のために}
暑い日にはアスファルトに足をとられてしまう
あえぐ憐れなペンギン
目標を喪失した花鋏
放置されたまま錆びて行く殺意
間の抜けた 横顔の
驚きで ....
{引用=どうしようもないこと}
絶望を綴ることに何の意味があろう
だが綴ることで絶望は虚構に変わり
また綴ることで希望すら捏造し得るのだ
詩は演劇性を持つ
演劇は祭儀であり呪術である
....
猫のように見上げる
空のまだらを
鳥に擬態した
ひとつの叫びが
紙のように顔もなく
虚空をかきむしる
骨の海から引き揚げた
もつれた糸のかたまりを
自分の鼓膜にしか響かない声を持つ ....
アンテナの上
カラスがめずらしく寒そうだ
度を越した愛撫
風だけがご満悦
抗いながらも抗えず
樹々もさんざん掻き毟られる
その有り様を見て見ぬふり
家々の窓はぬらっと景色を滑らせる
― ....
静けさでいっぱいの部屋
その中心は何処かと
へその尾や砂時計
そんなくびれで繋がって
むやみに染み出して来る
圧力 その張力
部屋は膨らみ丸みを帯びて
閃輝暗点 歪んだステンドグラス
....
{引用=不実日和}
声は裂ける傘のよう
いつかの夏を絞りながら
蜜蜂の愛撫に
義眼を転がして
女の雨脚は
蜥蜴たちの抱擁をほどく
鞄の中で犯された
天使の羽根が舞う丘
青い爪を持たな ....
{引用=週末}
雨はガラス越しの樹木を油絵に似せ
開きかけた梅を涙でいっぱいにする
雨は河住まいのかもめを寡黙にし
水面の泡沫は作り笑いに変わる
だが雨は歌っている
運命のように ....
{引用=人魚}
樹はなめらかに地に裾を広げ
自己と向き合う静寂に包まれている
幹は根元の少し上から二股に分かれ
片方は太く もう片方はやや細い
幹が重なって見える角度を探すと
上に向かって ....
哀しみあるいは悲しみを
膝の上に乗せて
よく眠ってくれるから
ひと時煙をくゆらせるように
ギザギザした鍵を
胸に刺したり抜いたりして
酒と音楽でにじんだ幻を孵したい
ああこの夕暮れが ....
{引用=まどろみ}
種子は雷鳴を聞いた
意識の発芽前その核が
ひたすら芯へと引き寄せる
死に疑似した時間の中
最初に震動があった
そうして微かな熱
やがて忍び寄る水の気配
たった今 ....
{引用=鳶}
暮れかけの空
トンビたちは思い思いの弧を描く
風に乗り
風を切り
風を起こし
また受けて
狩りの照準を
時折水平に起こし
淡くたなびく雲の帯を
くぐるつもりか遠く巡っ ....
{引用=愛憎喜劇}
遮二無二愛そうと
血の一滴まで搾り出し
甲斐もなく 疲れ果て
熱愛と憎悪
振子は大きく揺れ始める
愛も親切も笊で受け
悪びれることのない者
理解できずに困惑する ....
真っ逆さまの光の頂
集めた八重歯を笊で濯いで
女は大きなアサガオの
白い蛾に似た花を吸う
小さな蜘蛛が内腿の
汗の雫に酔っている
生木の煙 風の筆
飛び交う無 ....
{引用=予想図}
わたしの人生の尺に
息子の人生の尺はまだ収まっている
わたしの息子への関心は非常に大きく
息子のわたしへの関心はそれほどでもない
{ルビ直=じき}に息子の人生はわたしの尺か ....
{引用=冬の朝顔}
白い背表紙の本を開くと朝顔の種が落ちて来た
種は発芽して瞬く間にわたしの妄想に絡みつき
ひとりの女の形を編み上げると濃淡を宿す紫や白
水色やピンクの花を幾つも付けたのだ
....
{引用=生者と死者}
安全地帯の植え込みで
ラベンダーは身を縮める
風花の中
一株一株寄り添うように
周囲には細く背の高い
雑草が取り巻いている
枯れ果てた骸骨たち
立ったまま風に ....
{引用=道程}
一つの結晶へ
近づくほどに遠ざかる
道程の薄闇
ああ目を凝らせ
不安を透かした薄皮を
一枚また一枚と剥離させ
焔のような白い裸婦像が
現の真中の空ろを炙る
* ....
{引用=最悪について}
第一に
記憶と紐付く負の感情一色に染まった景色を満喫しながら
自ら最悪だと帰結する狭く閉ざされた思考の環状線を延々
巡り続ける一人旅
第二に
自覚のない最悪人間 ....
{引用=銀杏一葉}
フロントガラスのワイパーの圏外
張り付いた銀杏一葉
冬の薄幸な日差しに葉脈を透かして
用途を終えて捨てられた
ひとひらの末端 美しい標本
飛び立つことはないはずなの ....
{引用=うつけもの}
わたしの頭は憂鬱の重石
悩みの古漬けぎっしりと
{引用=しゃくりあげて}
願いは鳴いた
言葉を知らない鈴のように
子の骨を咥え 風の狐が走る
芝 ....
そらの珊瑚さんのただのみきやさんおすすめリスト
(721)
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いのちの湿度
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ただのみ ...
自由詩
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21-11-13
ひなびた温泉宿で芸者の幽霊と興じる真夜中の野球拳あとひと息あ ...
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ただのみ ...
自由詩
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21-11-6
知らずにもとめて
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ただのみ ...
自由詩
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21-10-31
最初から灰だった書物へのオマージュ
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ただのみ ...
自由詩
3*
21-9-19
傷んだ果実の盛り合わせ
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ただのみ ...
自由詩
3*
21-9-11
玉手箱
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ただのみ ...
自由詩
7*
21-9-4
オリンピックとコロナとわたし
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ただのみ ...
自由詩
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21-8-8
おまえがアーメンとは言えないものを
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ただのみ ...
自由詩
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21-8-1
憑きものばんざい
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ただのみ ...
自由詩
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21-7-10
生前供養
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ただのみ ...
自由詩
8*
21-6-19
嵐と晴天
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ただのみ ...
自由詩
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21-6-6
死作――詩に至る病としての
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ただのみ ...
自由詩
5*
21-5-30
安息日に詩を書くことは許されるか
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ただのみ ...
自由詩
10*
21-5-22
ガラスの精進
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ただのみ ...
自由詩
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21-5-16
鈴の舞踏
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ただのみ ...
自由詩
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21-5-10
愚の原石
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ただのみ ...
自由詩
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21-4-25
頭痛の小悪魔
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ただのみ ...
自由詩
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21-4-18
モノクロの天国と極彩色の地獄
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ただのみ ...
自由詩
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21-4-11
この夕暮れが
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ただのみ ...
自由詩
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21-4-7
至って不真面目
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ただのみ ...
自由詩
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21-2-13
視破線
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自由詩
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21-1-23
サイレントチンドン
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ただのみ ...
自由詩
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21-1-16
中る
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ただのみ ...
自由詩
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21-1-9
哀愁の強行軍
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ただのみ ...
自由詩
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21-1-3
冬の花びら時の河面
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ただのみ ...
自由詩
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20-12-27
寒波と二日酔い
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ただのみ ...
自由詩
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20-12-20
隠喩のような女たち
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自由詩
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20-12-12
悲しみは理由を求めている
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ただのみ ...
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20-12-6
空論のカップに口を付ける冬の横顔
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20-11-29
返り討ちに合った復讐者
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自由詩
5*
20-11-25
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