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明け方の夢の中へ
二人の少女を置き去りにした
二人が望んだことでもあった
彼女たちはわたしの一部だった
寝付けなかった
疲れはたまっていたし
酒もしこたま飲んではいたが
職場のとばっ ....
わたしは曇ったガラス窓
指先で書く文字の向こう
許容できない現実が冬の仮面をつける
ひとつの痛点が真空を真中から押し潰す
円く膨らむ響きの肢体 震えの侵食を
包む衣としてまなざしは海
....
低い天井に音楽が響く
裸の天使の鳥籠のよう
ひりひり見開く傷口
冷凍肉のかたまりに
ガラス金属プラスチック
カラフルな鋲をボウルいっぱい
焦点を拒む視線
ただ瞳の中にゆれる灯が
焦 ....
{引用=鬱蒼}
鉈で枝をはらう
雑木林に入口をつくる
入ったからといってなにもない
暗く鬱蒼としたそこに
誰を招くわけでもないが
時おりもの好きな通行人が
ちょっと覗いては去ってゆく
....
{引用=空白葬}
空白を肥やそうか
みかんを剥くみたいに
あの赤裸々な寡黙
仰け反って天を食む
ことばの幼虫
インクのように膨らんでゆく影
化石は顔を残せないから
ハンマーで殴っても
....
手持ち無沙汰に膝にのせ
撫でたのは 猫でなく
ことば以前のなにか
死者からの便りのように
ふとカーテンをはらませて
沸騰する
静けさに
肌をそばだてながら
缶ビールの残りを一気に飲み干 ....
{引用=鳥たちよ}
ヒヨドリが鳴いた
喉を裂くような声で
天のどこかを引っ掻いた
それでも皺ひとつ寄らず
風の布は青くたゆたい
樹々の新芽を愛撫するが
ささやき返す葉はまだない
公 ....
{引用=ヴィーナスの骨格標本}
ぼんやりした横顔に秘密がひとつ擬態する
ぼくは夢に絡まったままコーヒー自殺を図った
飛行機に乗る人とよく目が合う朝
青く濁った空の吐瀉物からなにを紡 ....
{引用=ラブソング}
ひとつの風景の前に立つ
触れそうで触れない
右の肩と左の肩
あなたはわたしの
わたしはあなたの
鏡像――大地の無意識から
掘り起こされた太古の心象
願望に歪みふく ....
{引用=老けてゆく天使}
明るい傷口だった
セックスはままごと遊び
片っぽ失くした手袋同士
始めから気にしなかった
一個の果実のような時間
なにも望まなかった
白痴のように受け入れて
....
{引用=カラスのギャロップ}
北国の春は犬連れでやって来る
ぬかるんだ地の上を
着物の裾を汚しながら遅れてやって来る
太陽は雌鶏
ぬかるみが半分乾いたころ目覚ましが鳴って
あとは忙しく吹い ....
{引用=冬の髪の匂い}
雪の横顔には陰影がある
鳥は光の罠に気付かずに
恐れつつ魅せられる
歌声はとけて微かな塵
雪はいつも瞑ったまま
推し測れない沈黙は沈黙のまま
やがてとけ
かつて ....
{引用=衝突}
虚空をただひたすら遠く
時の道を踏み外すところまで
それとも落下
全ての存在の至るところ
深淵の
真中の
針先で穿たれたような一点へ
そんな慣性のみの
生の旅路であ ....
床暖房に腹ばいで熱燗を飲んでいる
外は激しい吹雪
絵の具の花の赤い一行が見えた
わたしの一番小さいマトリョシカは神隠しにあったまま
帰らない
夜の袋にしまわれたまま
アカシアの棘 ....
冬の太陽が弾丸みたいにサイドミラーではじけた
盲人の手を引いて地吹雪を渡る声
活字から落ちて 雪と見紛う
針葉樹を穿つ弱々しい木洩れ日たち
瞬間から瞬間へ
印象から印象へ
生の ....
寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた
蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか
四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
....
{引用=破産者の口笛}
あなたのうなじの足跡
夢からずっとついて来て
真昼に座礁した
摩耗してゆく面差しの焔
古びた空想科学
瞑る金属片の美しさ
叶わないで狂うわたし
鏡の海に爛熟 ....
{引用=習作たちによる野辺送り}
鏡の森から匂うもの
一生を天秤にのせて
つり合うだけの一瞬
混じり合い響き合う
ただ一行の葬列のため
*
軒の影は広く敷かれ
植込みの小菊は ....
巨人の頭蓋の内側で
天井画を描き続けている
孤独なロウソクのゆらめき
舌の閃き いのちの虚飾
わたしたちは互いの羞恥をめくり合った
どの顔も黒焦げのまま燃え残りくすぶり続け
追慕は灰の ....
{引用=犬も食わぬ だとしても ただ己の生前供養として
またも雑多な感傷を一つの籠に盛り合わせてみる
秋を想わざるを得ない日 繰り返される儀式として}
{引用=ひとつの面差し}
睦まじ ....
{引用=忍路・蘭島}
翡翠と書いてカワセミと読む
そんな宝石が飛び去る刹那の後姿を
有難い気持ちで見送った
3500年前の環状列石は
見かけも手触りもありふれた石
そりゃあそうだろう
....
{引用=涼を狩る}
池の青さ
屏風と扇子
ボタンを外した
指は行方知れず
アオダイショウ
そっと跨いで
墓地へと続く
坂の木陰
吸った唇
....
記憶の黒点だった
太陽の鏡の目蓋の中で
ある者は熱に歪み
ある者は乾いて燃え上り
誰もが己の影に憩いを求めては
その微かな流れの干上がる時を待っていた
わたしは 光を青く投げ返す黒蝶が
....
{引用=追憶儀礼}
二人の時間はまだらに溶けて
いることすらも忘れてしまう
美しい他者 異なる種族
愛はアルビノ ひそやかな野性
{引用=お茶碗欠いたの}
月は隠れてR ....
{引用=二人の旅行}
迷い込んだ蝶が鍵盤にとまった
ゆっくり開いて
ゆっくり閉じて
あなたは水へと変わり
音楽は彫像となって影を落とす
わたしは感覚と記憶
去るものと共に流れていった
....
{引用=少女アデリーの失くした人形のために}
暑い日にはアスファルトに足をとられてしまう
あえぐ憐れなペンギン
目標を喪失した花鋏
放置されたまま錆びて行く殺意
間の抜けた 横顔の
驚きで ....
{引用=どうしようもないこと}
絶望を綴ることに何の意味があろう
だが綴ることで絶望は虚構に変わり
また綴ることで希望すら捏造し得るのだ
詩は演劇性を持つ
演劇は祭儀であり呪術である
....
猫のように見上げる
空のまだらを
鳥に擬態した
ひとつの叫びが
紙のように顔もなく
虚空をかきむしる
骨の海から引き揚げた
もつれた糸のかたまりを
自分の鼓膜にしか響かない声を持つ ....
アンテナの上
カラスがめずらしく寒そうだ
度を越した愛撫
風だけがご満悦
抗いながらも抗えず
樹々もさんざん掻き毟られる
その有り様を見て見ぬふり
家々の窓はぬらっと景色を滑らせる
― ....
静けさでいっぱいの部屋
その中心は何処かと
へその尾や砂時計
そんなくびれで繋がって
むやみに染み出して来る
圧力 その張力
部屋は膨らみ丸みを帯びて
閃輝暗点 歪んだステンドグラス
....
そらの珊瑚さんのただのみきやさんおすすめリスト
(736)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
二人は森に住む
-
ただのみ ...
自由詩
1*
23-2-11
逃避ではなく殺害
-
ただのみ ...
自由詩
5*
23-2-4
すべてはじめから
-
ただのみ ...
自由詩
2*
22-12-17
冬の禁断症状
-
ただのみ ...
自由詩
3*
22-12-10
歓喜の歌から逃げだして
-
ただのみ ...
自由詩
6*
22-11-19
純粋遊戯
-
ただのみ ...
自由詩
2*
22-7-10
不憫な子_そう呼ばれたかった大人たち
-
ただのみ ...
自由詩
5*
22-4-17
平和主義者の丑の刻参り
-
ただのみ ...
自由詩
3*
22-4-10
アルカイック・モノローグ
-
ただのみ ...
自由詩
2*
22-4-3
パンドラがあけた大きい方の玉手箱
-
ただのみ ...
自由詩
5*
22-3-27
言葉の煽情的ボディライン
-
ただのみ ...
自由詩
8*
22-3-20
ポケットには丸めた鼻紙だけのくせに
-
ただのみ ...
自由詩
5*
22-2-5
泥棒する青空
-
ただのみ ...
自由詩
5*
22-1-30
火傷と神隠し
-
ただのみ ...
自由詩
3*
22-1-2
雪原を駆ける海馬
-
ただのみ ...
自由詩
2*
21-12-26
いのちの湿度
-
ただのみ ...
自由詩
7*
21-11-13
ひなびた温泉宿で芸者の幽霊と興じる真夜中の野球拳あとひと息あ ...
-
ただのみ ...
自由詩
3*
21-11-6
知らずにもとめて
-
ただのみ ...
自由詩
8*
21-10-31
最初から灰だった書物へのオマージュ
-
ただのみ ...
自由詩
3*
21-9-19
傷んだ果実の盛り合わせ
-
ただのみ ...
自由詩
3*
21-9-11
玉手箱
-
ただのみ ...
自由詩
7*
21-9-4
オリンピックとコロナとわたし
-
ただのみ ...
自由詩
3*
21-8-8
おまえがアーメンとは言えないものを
-
ただのみ ...
自由詩
4*
21-8-1
憑きものばんざい
-
ただのみ ...
自由詩
5*
21-7-10
生前供養
-
ただのみ ...
自由詩
8*
21-6-19
嵐と晴天
-
ただのみ ...
自由詩
6*
21-6-6
死作――詩に至る病としての
-
ただのみ ...
自由詩
5*
21-5-30
安息日に詩を書くことは許されるか
-
ただのみ ...
自由詩
10*
21-5-22
ガラスの精進
-
ただのみ ...
自由詩
3*
21-5-16
鈴の舞踏
-
ただのみ ...
自由詩
2*
21-5-10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
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14
15
16
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19
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