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あなたのことが心配で戻ってきました 
と言う男がいて 
へっと思った
あたしは 
その男のことをそのとき初めて見たのだけれど
まるで ずっと昔から知っているようなふりをして
腰のあたりで  ....
  働いて
  働いて
  四角い紙と
  円い金属



  立ちっぱなし
  犬が過ぎる
  犬が嗤う
  中也の
  失くした椅子



  生きっぱなし
 ....
わたしはものがよくおぼえれらなんいです
ですらか思い出すとこも思い出せない
わたしはとてもとてもばかです
ばかを恥じることに恥じ入こるともありません
どこからどこでまがわすれたこなとの ....
人は何故、殺すのか
人は何故、殺せないのか
普通の者は
殺される側への意識的感応で踏み止まる
が、普通の人間も
対象を下位に置く精神操作なしで、人は殺せるのだ
相手を敵、脅威と見做さずとも ....
抱えるほどに
桃を買って
浴槽に投げ入れる

熟れながら
毛はかたく
肌にするどい

桃とわたしの内側は
べたべたしてきている
あのころのぼくをときどき思い出す

お寺で不動明王をみた

石でできたお不動さんだった

こわい顔というより

こっけいなほど醜い顔をしたお不動さんだった

つぎの日図工のじかんに ....
バスが停車するたびに
バスガイドが代わる代わる乗り込んでくる。
口元に引き寄せたマイクから
日本から海外まで。観光地から
狭い路地から、台所から、寝室から
行くこともない土地の話を
そこに ....
楽しかった、お茶碗。
お茶も、嬉しそうに、みんな飲んでくれた。
地元に詳しい郵便配達の人の話が
とても怪しくてゾクゾクしたものだった。

公になった館の中で
黄色くなった木目を見つけては
 ....
浅葱色の風 信念(まこと)を抱き
今 時代(とき)に抗う 刃となる

強き眼差しは 鬼の如く
ただ 前を行くのみ
決意の背中は 恐れも捨て
ただ 直(ひた)走るのみ

三日月(つき)に ....
 
 
それは、わたし
眠たい壁の一種
舌の裏で
縄跳びをする子供たち
名前の回数だけ跳んで
空想のまま
その間、冷蔵庫に向かって
嘘をつき続ける
アフリカ行きの
切符を手に入れ ....
白いスカートにコーヒーのシミをつけて
笑う少女の無邪気さを
貴方はそうやって嗤いますけれど
残念ですね
口の端にケチャップがついてますよ。

文学少年気取りの
私たちのエスプリなんて
 ....
踏んでいく、
鳥のかげ、

貝の、ねむりを、
ちぎって、

また、
植えて、
海を、まぶして、
足もとへ、

ふとんで、
生まれたての、
両親を、
ジュゴンのように呪って、 ....
あの子、読み込みが止まると
一気に喚き出すのです。

家の場合、何かの理由で
しょっちゅう読み込みが止まるものですから
その度、慰めなくてはいけません。

私は、このまま待つか、再読み込 ....
僕は今から体内を洗練する
温度を感じぬ裸足で外に出る
海に向かい血の付いた右手で空を切る
許しを得るために
残虐の対価として僕は
上記のように清らかに生きなければならない

 ....
暇な休日の午後は静かだから
通りを走る車の音と
入ってくる風のゆらめきが
時折 妙な空白をつくってくれる

不思議な夢から目が覚めたら
何度も記憶をなぞるように
おぼろげな記憶を
 ....
くべられた思い出の
立ち昇らす影


天を焼く記憶
遥か古代からの


捧げられる供物は
二つとなく二度とない―



胸を焦がす影を
作り出す光


背 ....
意識の断片が浴槽に張り付いていて書き終わったら全てが水の中にあるといいなと思う。 連番の悲しさでした。
私たちは、順を振られた日から兄弟でした。

順が有ったからの兄弟なのに
連番の定めが、ちらつき始めた頃には
私たちは、順のことを憎み創めていました。
可笑しな話です。 ....
 
 
植物群が眠っている
僕の知らない言葉の中で

息を吐き出すように
近所の商店街は
ゆっくりと潰れていった

帰りたい、と父が言う
他にどこに帰るの、と母が言う
帰りたい、 ....
頼りなげな黒い煙は
空に還ることもなく
密閉された風景の中へ
呆気なく取り込まれていった

昨日の端から一刀両断に
切り離された時空に
冬物の黒い服を着せ
ひたすら透明な汗をかいて ....
 (崩落する車輪
   から滲み出た
暗い空 が二つに
   わかれ
   水星の前輪と金星の後輪で
   疾駆する 子盗りの
   群れ)

お ....
{引用=  ――Raymond Carverに}

  男の頭を
  少し傾けるとレイに
  もう少し傾けるとアル中患者になる



  注意深く
  あなたは頭を傾ける
  朝
 ....
つめたい指で そっとすくって
両手の隙間から バイバイ
おばあちゃんのエプロン洗って
ごめんなさいって返しにいくの

でておいで 今日の太陽
あなただけが正しいのかもね
ここでの全てが終 ....
言葉の中を泳いでいた。
やがて小さな言葉に行くほかなくなった。
そこに潜り込まねばならず、感覚でしかないが引き寄せられたのち、言葉は残らず去ってしまった。
目を覚ますと、それでまた言葉の海が ....
つつましい
緑に幹を染められていく桜の木から
舞い飛ばされた便箋は
アスファルトを焦がす日光で
降り続いた雨とともに入道雲になった

反射光の
ちかり、ちかりと眩しい海岸線が
潮の香り ....
僕は遠い昔に生まれ
すでに死んでいてしまいたかったな
神話は失なわれ
青空はなんにもない
空虚な哀しみに
剥げ落ちてしまった
今日の空を見上げると

夜の美しい闇も
ざわめきのライト ....
  死人の眼には
  海
  それは彼が
  最後に目にしたもの



  命をかけて成し遂げたいことが僕にはあった
  今は無い


光が爆発した
扉を開けると
そこはまるで別世界だった
今まで聴こえていた
懐かしい歌も
無邪気な笑い声も無い
時間は壊れて
だけどまだ生きていて
ようやく
ひとりぼっちだっ ....
溺れる。
溺れている。

 ペットボトルの海に溺れる。
 水を喉に下す。束の間呼吸を犠牲にしながら。
 口を離して喘ぐように息を吸う。
 酸素を求めるはやい心臓。
 それは君と同じだから ....
このよに
おばけがいるとしたら
それはにんげんだ

だから
ほうっておきなさい

ひとたび
たすけたならば
そのひとは
あそびほうけていた
だから
ほうっておきなさ ....
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