しとしと
詩と死が降って来る
意味と響きの言葉の間(あわい)
貴女の声が木霊して
深い深い沈黙のなか
詩と死が現に孕まれる
)そのとき空が落ちてきて
)そのとき宇宙が爆発して
....
葉桜ふさふさ
夜の川
光はしずかに
水流の
運転手さんが
桟橋で
蛙のひとつを
あいまいな成功
諦めるのではなく
ただ助けていく
葉 ....
ゆらゆらの揺れ
新緑、風にざわめいて
ゆるりと季節は移り変わる
未だ生かされて在る
このわたくしは
鬱な心はそのままに
只管打坐、只管打坐
ただ一心に此処に座す
幼年の己、
....
頭の上に
王冠を乗せる
例えそれが
幻だとしても
春の日向を
掴めるだけでもう
靴紐の長さが
短くなる
旅人の靴が
動き出すまで
たくさんの爪が
剥がれるように
桜 ....
冬の立ち込める並木道は
身を縮めて、息をひそめて
葉ずれや雲を流す空の息吹きを
まとい、深い憂いに口を閉ざし
軽々に言葉を弄さない
冬よ、あなたは何を思うのか
その白き顔(かんばせ)に ....
洗面器の中に
水を張って
浮かべた夜空は
もうひとつの庭
駆け回りながら
届かないと
諦めてしまった
心に集まる
大地の音感
聴き返す時間を
貰えるのなら
門限は破ら ....
誰もがそれとわかるように
名前をつけてみましょうか
花と名前をつけます
蜂と名前をつけます
光と名前をつけます
だけれど君がそれを指さすとき
花と戯れる蜂や蜂と戯れる花を
輝かせ ....
マスクに包んだ
内緒話で
毒抜きをしてる
唇に何故
チューリップ色の
花が咲くのか
這い上がれ
地上で黙する者よ
線路の外側を
守ってるから
命は雪崩を
起こさなくなる
....
少年のために
踏まれた影絵
羨みが混じった敵意が
無数の視線になって膝の下を
赤い雨だれのように飛ぶ
そこにいた誰かが
自分じゃなかった
そんなことで
ニトロの羽は抜け落ちる
....
風がゴーゴと吹いて
安らかに眠れない夜を繋ぎ合わせて過ぎていく日々
この命をささえる仕組みも経年劣化して
無情に軋んでいるけれど
その痛みに壊れてしまいたくはない
言葉にならない不安 ....
ひとりの部屋には
ひとり言や鼻唄が
響くだけ響いては
ちいさく、ちいさくなって
ちりやほこりのように積もっていく
忘れたころに気まぐれな
神さまが通り過ぎると
つかの間、舞い上がり
....
長い間 探した虹は見つからず
今日の行方を、風に問う
僕の内面にある
方位磁針は
今も揺れ動いている
風よ、教えておくれ
ほんものの人の歩みを
日々が旅路になる術を
群衆の ....
やわらかな肉に
流れる
清冽な水を
むさぼり飲み
やわらかな宇宙を
貫く
輝きの光を
集める
ことば、コトバ、言葉 を!
欲望の卑猥を魂に焼き
スコンとまっさらな地平から
....
何万フィート雲の上
翼を生やして空をとぶ
何万メートル水の中
鰓を身につけ透きとおる
何万マイルの地の底で
硬くかたく流れゆく
幾千万の街を越え
笛を吹くのは
ただ一人
かる ....
眠ることが
難しい夜に
錠剤を飲んで
心で溶かす
落ち着くようにと
処方された時間を
私のために
使ってくれる人
先に夜の歯車に
挟まれて
君を置いて行く
かも知れな ....
天井にふくしが貼りついている
頼りなく「ふ」の字が剥がれかけている
重力に耐えかねている
見えないおもいに耐えかねている
布団の上で僕はそれを眺めている
貼り直す気が起きないことに
僕 ....
とまどい生きて 夜の果て
時過ぎて わたしは老いてゆく
いつまでも夢の中 さまよいゆくが
現実に生きてゆきたくも ついに秋きたり
病におかされ 苦しみ悶え
一瞬に旅立ちたいのに
神が許さな ....
傷口のどこかで感染したから
血管が浮いて逃げようとしてる
体温計の届かない場所で
熱を出しても解らなくなるね
目覚まし時計が鳴るまでの間
ゆっくり休めと世界を止めて
君の心臓に合流でき ....
プロペラが回る高い天井と
かき氷のブルーハワイは
沖縄の島を連想させる
ヘリコプターと青い海の距離が
どの位なのかは知らないけれど
兵士が着ている迷彩模様は
裸になっても付きまとう ....
果たして
もう死んでもいいなんて思える日が来るのかな
その前に意識不明の混沌に陥ってしまわないかな
それが一般的だから
死ぬ直前は何がなんだかさっぱり解らなくなって
それでいい
死ぬ恐 ....
とても天気が良くて
気持ちいい風が吹いて
少し眼を細める光が射して
心を許せる友だちが数人いて
いつ聴いても飽きない音楽があって
偏見の目で見られても胸がときめくひとがいて
からだ ....
ある日私は女を撃ち殺した
明日からずっと平和だったらいいなあ
女の笑顔が許せなかった
それから何年か
十数年か
私は悩み続けて
ある日私は私の頭を撃った
キンとしてそれだ ....
風が揺れるから花はお辞儀する
ギロチン前の首は繋がって
空が落とした星のカケラ拾う
風が揺れるからブランコは叫ぶ
体重のない魂を乗せて
行列に並ぶ子供たちを待つ
風が揺れるから水面 ....
屍の歩行
眼孔虚ろな屍の歩行
背に虹のような色とりどりの傷
水蒸気の中で何も呟かないままに
解れた縫い目で足跡は塞がっていた
火は酔拳のように揺らめいている
消えるまで眼孔を落葉のよ ....
流れ出た血が固まるように
女は動かない
動かない女の前で暫し時を忘れ
見つめれば やがて
そよ吹く風か 面持ちも緩み
――絵の向こう
高次な世界から
時の流れに移ろい漂う
一瞬の現象で ....
植えても植えても
分かれるもの
内に 内に
入り込むもの
誰かのためにと始まったのに
そこに自分は居なかったのに
小さく小さく
ひらいたもの
光を見 ....
秒針はびっこを引いていた
分針は静かなカタツムリ
わたしたちは同じだけ出会う
あなたは追い越し未来へ わたしは
逆行しているまるでそう見えたでしょう
同じ今を黙殺しながら互いにず ....
なぜみんな
ほんとうにみんな
よごれていってしまうのだろう
うたがうこともしらず
きずつけることをおそれ
そっといきてきたものたちの
こころのかいをこじあけ
よごれたみずがしんにゅう ....
カラスはいつも何処の空でも
四羽で飛んでいる
たまに三羽にはぐれたりしているけど
新宿の変な巣みたいなビルをセンターに
古いのか新しいのかよく分からないビル群
ここで ....
左手首に微かに残る
傷跡の意味をあなた
は知らない。あの夏
のよく晴れた朝に私
が台所用洗剤と乾燥
剤を飲み込もうとし
て苦しんだことをあ
なたは知らない。ふ
うちゃん、ふうちゃ
ん ....
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