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躰のほとんどを
ねじれた袋におさめて
わたしたちは泣いていたね
はんぶん透けて
はんぶん凝ったような
美しさ 見えかけの 東京の月
あの時のきみがずっと
ぼくの傍でねむっている
少しだけ、雨の匂いをさせて
笑いながら喋りつづけた
言葉はむなしい闇にのまれた
若く優しいだけでいられた
....
桃を食べていた
指で口をぬぐった
戸が開いて何かがわたしにふれる
液状の 概念じみた何かがわたしにふれる
死んだ後もそこに在るとされるものだ
それは 戸を開け ....
昼過ぎまで 魂をみていた
ローソンに車を停めて
海辺の商店街で
わたしに友達はもういなかった
腐った犬などがわたしの腕だった
わたしの歯が彼らの瞳だった
....
並び替えた語らが
愛想笑いをしている
竹林
空腹の蛇だった
噛まれた耳だった
おりていく夕闇だった
感じられる前の淋しさだった
吐気がして
ねむっていると
あおい空がみえた
わたしたちは睦み合いつつ
観念の ふやけた泥団子に成り果てていたが
憎しみながら ねむっていると
吐気 ....
割れた幾何学が
積み上がっていく夕
雨のような寂しさを身にまとうひと
抽斗は
開けられることはないのだろう
なにか次の出来事を準備していた
裸体たちは 敢え無く 黒炭の
テクスチュアの内にほどけて
やわい鹿も
二頭ばかり居る
私 という語は ざらりとした
塗料を風に削がれて
あおい粉塵だ
詩を拒むので或いは詩を映すので
建物はこんなにもあかるい
うたわないディランと
自殺をしないカート・コバーン
ビー球の 転がりのなかを
夕焼けが駆け抜ける
きみにあこがれる
いつか人生に
椅子を失くす日、
....
晴れた
青い ひかりたちのなかに
つくえが 落ち葉を待っている
いりくんだ緑にはずむ
からすうりのかなしみは
朱く 苦く あまく
なんども 熟れ ....
the amazing, blazing lights
have started to orbit your sight.
so look at these magnolias,
swi ....
あなたがきて
雨がふった
かなしくはない
幸せでもない
木がゆれた
日が落ちる
あたりがくらくなる
街のかげが 夜になっていく
....
その途中で
錆びた窓は停まった
おおきな 古い瓦屋
やすでたちは疲労のように
みている
その途中で
砂埃は窓の面から
私たちの瞳に ....
青空にむかって
わたしたちは歌った
夜はながく とても寒く
深く 生きながらにして
かたちのなかで毀れていた
シャツをきて お茶を飲み
静か ....
東京の歌は
唇のようにさけんで
凄くかなしかった
打ち棄てた愛が 不意に
わたしの頬を張る
日が沈み 胸が冷える
老いた男の
灰いろのまな ....
二月の
雨が こおっていく
あなたからの 一時間未満の
電話からの ことばからの
つめたさが こおっていく
ひとつも
かなしくない
ふるえ ....
滅入る
ひ影
破裂音の
木像
(言葉なしで祈る)
団地という
語の 重量と
つりあっているものらが
そこらへんにある
昼間を 歩いて
菜を刻み
嗅いで
寝た
{ルビ金=かな}ざるを日にかざし
台所の女は ほほえんでいる
苔色の直方体のなかで
いつでもない時間が
積まれていく
赤い車の
座席で
わたしたちは
部分的に
毀れた
雪がふり
たばこを吸い
腿にふれ
窓をぬぐい
寒かった
糸球になって いつしか
あお空へうかびあがっていった
幼年期のぼくらのなさけなさ
小さな 薄明るい唇の
きれいなおさげ髪の女の子
もう 全然 うつくしくは ....
磨り硝子の夢のなかの
喫煙所で ぼうとしていた
鳩たちの群れる高円寺駅北口
ふっていない雪は うつくしく
心の端のほうで消し去られていく
足したあとで引いた
寒い店で電気ブランを飲む
夜の新宿 昔の女の耳の形で
魂は柔らかく{ルビ凝=こご}っている
お前には情熱というものがないと云われた
....
忘れた後、
しずかに思いだした
ひかりのように笑って
銀色の並木道を駆けていく
なめらかで黒い髪の毛
もう 振りむかず、
ひとふさの歌に ....
やさしさが
夢のかげになって
ぼくをとおりすぎた
にわか雨がふる
じき 夕暮になる
街がせわしなくなる
この時を忘れられないかもしれない
....
正しくあろうとして
わたしたちの舌はもつれた
東京で あなたを愛そうとして
口付けを重ねるしかなかった
偽らない わたしの目に
毎日の夕暮は かなしか ....
芥子色の毛球が
冬 おもてで鳴っている
うるうると 陽のひかりが
今 すこしだけ まぶしいのです
水のかざりを戴いた
からの土が 喫茶店をはね、
わ ....
湿りけのある
くれないの緑の葉、
あしもとに踏みしめていく
いつの日か わたしは何故か
あなたに抱かれていた
撃たれるように
撃ちころすように
....
かたい骨のなかの
やわらかい骨にふる
いっしゅんの雨にうたれて
街はくずれた
犬たちはしんだ
わたしがほろびた
そうして きみへの優しさが
只 ....
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