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ながい歌のあとに
みじかい言葉があった
冬の夜の
ひろい海のまえで
そこらに捨ててきた
古い自転車のことも忘れて
ぼくたちは手をつなぎあった
なが ....
愛することができたものと
愛せなかったものを
苔色の水面に
あなたが浮かべる
夕暮れはしだいに
薄くひろくのびてゆく
冬空を流れている、 ....
接続詞を
石の上に載せ
はげしさを宿した鉄でもって
あなたが叩いている
灰色の部屋に閉じ篭って
その外を通りがかると
カンカンと逞しい音がきこえる
....
カモシカの眼が二つ
側溝で雨にうたれていた
遠い昔の話のような
青空の粒子が今、
その奥で消えようとしている
ビニールコートのフードをおろして
ほろ苦く ....
小学校は
投票所になっていた
冬のひととき
ぶらさがるカーテンの波を
光の風が揺らす教室
長靴にしのびこんだ
濡れ雪を気にしながら
ま ....
画板のうえに
赤と
青を置く
青のための赤と
赤のための青
意味
固い殻を剥かれた
何者かの咳
冬になるときみは
樹下の落葉をひろい集めて
ぼくの胸のうえに載せ
火をともしたものだ
それ以外に
やり方のないような手つきで
あのなつかしい ....
積み木の赤い部品が
緑のうえにそっと載る
駆け抜ける電車の影が
血の気のない床を砕いて
それから
途絶えて消える
轍のひとつも残さず
....
おまえはだれだと
蟻が訊く
秋枯れの
木の根をしいんと横切り
くたびれた靴の色より
鮮やかなぼくの影
ジャック・ダニエルを呑んで
やってられないとつぶやく
おぞましい闇を
月明りが潰す
猫のようなきみの手も時に
すばしこいジャブを繰り出す
痣模様 ....
1
夜に錠をかける
炭酸水に精液を混ぜる
クレジットカードに鋏をいれる
2
美術室
置きざりのままの
パレットに絞った絵具のこ ....
頭の中に
一匹の犬が眠っている
擦れてしまって読みとれない
古い名札のついた小屋で
静脈のほそい暗がりを
血液がそっと滑ってゆく
夜、
....
痩せた熊が
水底に沈んでゆく
両の眼を開けたまま
だだっぴろい冬は
晴れた日の砂漠のようにきらめき
しろい女は
しろい男の唇に
海より ....
小さな鍵のうえに
丈夫な檻をかぶせる
はかり知ることのできない
うしろ暗いかなしみの末
その幼さだけが頼みの
あなたの白い歯が
深い夕闇にとっぷりと ....
生臭い夜に
九本の足が生えている
洗いたてのシーツに置かれた
ただひとつの丸い石
きみの汗がそのうえを伝い
鼠がねぐらに帰るように
闇の奥へ ....
肌のきらめきだけで
月が出ているとわかる夜
きみの胎が優しく
蒼い氷をはらんでふくらむ
白いシーツのうえで
ふたつの影がみっつになり
....
金色の水がつたうと
かたく四角いその壁は
栗鼠のようにまるくなる
ひとびとの話す声が
物陰にひしと隠れる秋
きみの舌は木枯らしをつかみ
それからねむ ....
バスタブに水を張って
女の手のひらを投げこむ
まだ、
切り落とされたばかりの
まるい骨ののぞく
その切りくちにも似た
鮮やかな真夜中
....
幼い男児が
朝、
一匹の蜥蜴を手に捕らえる
厚い辞書に差し込んだ
すみれ色の栞のような朝
膝を折って
床の上に散らばった
数枚の紙の、種類をかぞえていた
たえがたい白さは
閉じたドアを容易くすりぬけ
光へと落ちぶれ
痩せた手の甲に ....
精一杯
わらい疲れたあとはさ、
窓際にいってごらん?
夜を徹して
つみあげられた花が
ひとときに燃やされてゆくからさ
空のはじっこに
....
座るきみの膝に
とうめいな猫がねころんでいて
真っ赤なりんごを撫でている
僕のじっぽんの指は
オルガンの鍵盤に載せられ
ゆるやかにだまりこむ
....
椅子の上に
左脳がひとつ置かれていた
色褪せた譜面から
いくつかの音符はこぼれ
床のうえでひょこひょこ跳ね
透き通った窓は、わたしたちと
青 ....
あいするひとよ、
ほんとうの
きみのその気持ちは
とうめいな廊下になって
蜘蛛の巣がからまったような
きょうの丸い月にむかって
ひたむきに伸 ....
割れた
イチジクの実から
生まれたかったわたしは
椅子に座っている
文鎮よりも正しく、
鶯よりも所在無く
かたすみで
ひざまづいているような
夜の闇に
蚊取線香のけむりが
しろく冷めてゆくのを
いのるように
きみは見ていた
....
巨大な
塊から切り落とした
その赤い棒は
どろりとしていて
静かなのだが
耳を押し当ててみると
きいーん、
きいーん、と
響きが高速回転し
....
その石には
一房の夜が埋め込まれていて
羽をひろげた名もない鳥が
宙返りをして遊んでいる
ならば
僕は
手のひら一杯の嘘をあげる
その重みで
....
夜半、
食器棚の中に
銀色の双眸を宿した
生温い女がはいっていて
その白い吐息は
ガラスの扉を曇らせていた
他にはいっていたのは
腐っ ....
{引用=(煙突)
獣たちの
輝いていた瞳は
もう、眼窩にひそみ
昼の祝祭は
夜の灰となり
細い導管を
遡る
(車)
....
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