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脊髄に刺し染みるような
氷雨の降る土曜日
灰色のレインコートを着た老婆が
僕の口に腕を突っ込み
ずるずるずるずると
一頭の小熊を引き摺り出した
....
六月
君は椅子に掛けて
ジグソーパズルをやっていた
薬缶が沸くのを待ちながら
壁にもたれて
僕がそれを見ていた
六月
外は雨で
夕方の部屋に ....
別の女の
別の乳房を吸う
長い街道を歩いてくる
晴れた日の草原のような
パッヘルベルのカノン
男は捻じ曲がった枝
女は雀蜂の巣
青空の ....
{引用= 「歯」
数匹の
蟻とともに
おまえの白い歯が
焼かれている
雨は
降らず
風だけが、その
匿名の乾きを
旗印のようにたなびか ....
今夜の
君の手の指は
ストリップ劇場で
ストリップ嬢が使う
あのポールによく似ている
ブラディ・マリーの朱い滴を
君が薬指から舐めとるとき
....
僕らがコンビニと呼んでいる
長細い直方体には
どんなものでも揃っている
弁当もポテトチップスも
洗剤や電池や、ティッシュまで
だから僕がその日
その、冬 ....
固いタイルに
きみはうつ伏せ
ぼくはぼく自身より
長く鋭い針を
きみの背骨の中点に差し込む
素早く、直角に
屹立させる
こうして
線と
....
きみの腹を
綺麗な
正方形にくりぬいて
そこを通して僕は
桜吹雪が舞うのを眺める
蒼い春にも
暗い冬にも
きみの正方形から
桜吹雪が舞うのを ....
縄文土器を
保健室に忘れてしまい
取りに戻った
夏の日
熱く
熱く光は燃え
廊下を歩く人たちも
ブラスバンドの行進曲も
そう仕向 ....
しんしんと
雪のように眠っている
君の
シャツの
胸のあたりに光がにじみ
そこだけが
かわいた月面になる
白、
黄、
水色 ....
ゆうがたという言葉が
雨をよけて
まもなく
やってくるので
部屋の掃除をしています
なにかを
つぐなうようにして
秋が
入って
くる
ピアノを弾いて
いる
君の指の
一本だけが折れて
しまって
いた
あの歌 ....
あなたを
埋めてしまわなくては
なりません、突然の雨に
暴風に、雷に
あなたが苛まれないために
土深く埋めてしまわなくてはなりません
スコップに土をすくい、 ....
髪のみじかい{ルビ女=ひと}よ
するどい傷のような
月の居る夜に
はじめての女よ
きみが歌うのなら
ぼくは歌わない
使い終えたはずの
あの夏の歌は ....
サイダー、
君が
つぶやいたらこぼれた
向こうの街が
透けてみえそうな
蒼だ
ここは
いつまでも夏だ
サイダー、
河が
うねりな ....
集めるものは
二つあればいいと思い
待っていたのだが
一つとしてこなかった
神無月の午後
去ってゆくものと
去っていったものと
去りつ ....
俎板に
茄子があるのを
きみはじっと見ている
ぼくの
右の掌のうえで
きみの
ながい髪が
穏やかにきらめく
素晴らしい午後
....
ほんの少しよごされた
ガラスでできたコップに
最初の朝陽がまっすぐに注ぐのを
僕はじっと見つめている
....
宇宙が
じっとこちらを見つめる夜
惹かれあいたがっている
わたしよりもきっと
歯磨き粉のほうがさびしい
わたしはあなたを愛しています
日は沈み夜が街をつつみます
空を飛んでいた鳥たちは
どこへ消えていったのでしょうか
わたしはあなたを愛しています
なぜならあなた ....
行ったね
ふたりで
いくつも話したね
井の頭公園
横浜の観覧車
行ったね
ふたりで
名前もしらない
とうめいな扉たちを
な ....
たえてって言ってた
ぬるい食事に
吸いおえた煙草に
このうえない馬鹿の
ひとつおぼえ
ひとつわすれ
ひえた夕陽
干からびた光に
....
からすのかってでしょ
からすのかってでしょ
と、
きみは、
無愛想に歌いながら
目に見えぬいっぽんの釘を
目に見えぬ大きなクヌギの樹に
ロボットよ ....
猫よ
おまえは邪魔だから
どこまでも流れていってしまえ
そう言うと僕は
ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
便器に放りこんで
「大」のレバーを回したのだ ....
光が白いので
裸体だけが空気にうかび
瞳の深みをもとめて
幾度も反射されている
きこえる
ひかりがきこえる
波打ち際に
わたしは耳を置いてきてしまった
遠い日の
あなたが歯をみせて笑ってる
くりかえし
....
硬いひざにきみの
頭をのせて
ひとつ、
ふたつ、
みっつ、
よっつ、
いつつ、
歳をとるように静かに
きみはまどろんでしまう
....
世界にはたくさんの場所があり
たくさんの営みがおこなわれている
その日、僕が
することを選んだのは
床屋に行き
髪を切ってもらうこと
ひどく ....
僕の中に小さな女の子がいる
無垢な目に鋭さを湛え
頭には白い花のかんむり
僕の中に女の子がいる
僕は彼女に恋をしている
それは君じゃない
君 ....
いとしい夜に
枕がふたつ
いい歳をして
ひつじを数える
悩みはつきず
喧嘩はたえない
僕たちの日々に夜が
静かなのはいい
....
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