四二.一九五キロをみな包丁持て走る (摂津幸彦)
俳句は怖い。恐ろしい。どのくらい恐ろしいかって、「俳句」というキーワードでぐぐってみたらいい。いくつひっかかると思う。どれだけのひとが、どれだけ ....
その人がやってくるのは
ほんの少し
光のかけらをわけてくれた
下弦の月の白い顔が
空に溶け込んでいく時刻です
おやすみなさい
お月様
インクびんのふたを閉めて
閉じ込めたのは月 ....
年がら年中ことばを弄ぶには
シャツの数が足りない
きみだってそのはちみつ味のキャンディで
うちくだきたい距離があるんだろう
不健康そうなエンジンのおとを聞きながら
注意深くみちばたの草を ....
巨大な石版にきざまれた
柘榴石の星座がきしむ
西の方に5分ほど
かちりと音を立てて静止していた時が進む
一億光年の夜が流れ
廃棄物処理場に水たまりのような鏡
割れた月が赤々と燃えている ....
何故戦争をするのか
あたまがわるいからだ
つまり人間が、起ってほしくないことについてばかり考えているからだ
創造しなくなった
日和見は全員銃を持つ
日本男児はアジアの幼女をレイプ ....
赤く青く黄いろく黒く戦死せり (渡辺白泉)
なんだかだんだん非ジョーシキでなくなってきた「俳句の非ジョーシキ具体例」、今度は時事ネタである。それも茶化すわけにはいかないたぐいの時事ネタである。 ....
駅のホームで国歌を斉唱します、国歌を斉唱したいのです
どこの国歌でも構いません、僕は斉唱したいのです
恋人はホームの先端でフェンスを噛み砕いています
ものすごい音をたて、あるいは音をたて ....
日曜日
春が冷たい手で触れるから
さわられたぼくは立ち竦む
でも 散ってゆくものを
追いかける道は見つからない
東京はどこもかしこも
アスファルトで
ぼくたちの走る土は
見当たらな ....
ツタヤの女が面倒臭そうに歩いてる
外に出た用事の一瞬の間
おれはタバコの自動販売機の取り出し口に手を突っ込んでる名前も知らない女を
バックで轢き殺す
ことを想像 ....
ローソクもつてみんなはなれてゆきむほん (阿部完市)
このひとは現役ばりばり俳人で、ネットで検索するとたくさん句を読むことができるので、探して読んでみてほしい。普通の有季定型俳句も書く人なのだけ ....
○月○日
家に帰ると兵隊さんが押入れでもぞもぞしている。目が合うとピシッと敬礼しながら、「人道支援です」と言う。人道支援なら仕方ないのだろう。たぶん。兵隊さんは押入れでずっともぞもぞして ....
*(この文章は、ジュテーム北村さんから、「同時多発朗読」の連絡を受けた後、
行った朗読と、過ごした時間についての個人レポートです。
なお、ジュテームさんからの連絡は「21時に」とのことでし ....
母を脱ぐ
血を浴びて
いまだ名もなし (高柳重信)
すでに忘れられたとおぼしき「俳句の非ジョーシキ具体例」シリーズ、まだ終わってはいない。天災のごとく忘れたころ(実を言えば他のネタが尽 ....
1.
今日から失業者ですわコラ。知能程度の低い友人どもはねちっこく解雇解雇と書き立て
ますが、私が会社を首にしたのですよコノヤロウ。
日本国をアジアにするべく完全失業率のアップに貢献したのだ ....
以下は、9.11テロがあった年の10月10日にギルドに掲載したものです。
数千人死んだテロ、ひでえ話だとは思いますよ。でも、なぜ今さらそれだけを? アメリカがどこぞにぶちこんだ劣化ウラン弾を ....
今日は早朝バイトがないけれどまだ起きている。テレビではもうイラクの三人の人質について報道しているのだろうか、いや、まだ報道しているんだろうか。テレビを見る気がしないのでわからない。わからないけどたぶん ....
使っていない電話器が時々鳴る
コードは何処にも差してない
その受話器が持っていた番号は
もう何処にもないんだよ
遠い昔つながっていた
あなたの電話番号も
もう何処にもないんだよ
あな ....
遠い国で鳥があの娘を
拾って育てる
鳥はあの娘に名前をつける
あの娘は鳥に名前をつけることを考えている
鳥はあの娘に
おいしいお粥を作らせる
あの娘は庭のいちじくを
鳥にもいで来させ ....
どこか遠くの知らない国で
雪がしんしん降っている
大きな街の片隅で
人と人が出会う
どこか遠くの知らない街で
風がヒューヒュー吹いている
大きな街の片隅で
男がひとり
生き ....
風の強い夜だ
下弦の月のまわりに
虹色の光の輪を作っていた薄雲が通り過ぎる
窓辺に焼きついた油色の日々が
ガラス板から流れ落ちる
星々がさわさわ震えている
明滅する交通誘導棒を持ち ....
夜が呼んでいるような気がしたので
誰かが待っているような気がしたので
自転車のかごにウイスキーボトル入れて
僕はさんぽに出たのです
どこか遠いところで
凪いだ海のおなかの中
呼び交わす ....
鳥は自由に飛ぶ
一本の線によってへだてられた空間を
風つかいのグライダーのように滑空し
大気をはらんだ凧のように静止し
熊蜂のように羽ばたいて流れの外に飛跡を残したりして
そして時には それ ....
Boy
話のわかる先輩とグラスを重ね
生意気を言い放っては
頭を撫でられている
Boy
姉さん達より自分の肌を瑞々しいと言った後
懸命にフォローの言葉で繕って
やっぱり頭を撫 ....
濡れている
何もかも濡れていて
ガスが漏れる音が聞こえて
でもそこにはガスなんて存在しない
濡れてもいない
聞こえるし
濡れている
あ
白い歯
大きく ....
なるべく精確に言葉を使いたい、と思う。だから、言葉がひきずっている余計な意味は、極力、排除する。
しかし、詩歌を書くとき、最も力強いのは、言葉の持っているしっぽではないか、と思うことがある。
....
「 あぁ あぁ あぁ あぁ
嗚呼 嗚呼 嗚呼 嗚呼 ・・・ 」
休日の公園
木々の上から
{ルビ烏等=からすら}ののどかな調べに
地上の鳩等も舞い踊る
噴水のほとり
餌 ....
まけじゃんけんというものをおそわりました
さきにあいてがだしたてに あとから
わざとまけるてをだすじゃんけんだそうです
ぱーには ぐーを
ちょきには ぱーを
ぐーには ちょきを
ま ....
海岸沿いに露出した三十年まえのゴミ山のうえ
新しい嘆きがそっくりひとつ捨ててあった
壊れた自転車
割れたブラウン管
骨の折れた傘
骨折り損のくたびれ儲け
破れた心臓
そんなもののうえに
....
少年や六十年後の春の如し (永田耕衣)
加藤郁乎と同じくらいに、このひと永田耕衣もすごいおひとなのであった。加藤郁乎に比べるとかたちが非常に整っているので一見まともな印象を受けるが、上記引用の俳 ....
遺書にして艶文、王位継承その他無し (加藤郁乎)
どこが俳句なんだと悩まないように。作者が俳句と言やそれは間違いなく俳句なのだ。加藤郁乎は、この手のすごい俳句をものす私の大好きな俳人の一人。彼の ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22