世界は
もっと不思議なままでよかったのに
虹の七色
逃げ水
姿見
知ってしまった全てが
恨めしい
君よ
その背中を覆う漆黒は
僕の夜だ
初めに与えたのは君のほう ....
水びたしの指で
コンセントに差しこもうとした
叱られた
しらない世界はいっぱいある
目のまえのオーブンの火照りもしらない
けれど追いかけたりしない
食パンにまかせて
いいとおもう
....
どうにもやるせない自転車です。雨水の玉つぶてなサドルの革を「そうでもなく茶色だ」と言って、拭き取ればままよ、と走りました。光、スロウ、アウェイ。そして溶解するするりとした残像を肴に、ウィスキーに言い訳 ....
自動ドア
が開いた途端もうなにも聞こえなくなるくらい饒舌の坩堝なのだった
新参者が特等席でハバをきかせている
いたるところで人が出逢い
魅了され きつく絡み合い 約束を交わし 駆け引きをし 嫉 ....
くっきりとあなた
顔 も良く分かり
なめらかで豊かな曲線 も
温かくやわらかな感触 も
鮮やか
昂り も
息遣い も
鮮明に
ただ 熱心に セックス
透明な セックスをすると
夢精 ....
僕は、いつものように、
かのん、と救急車に乗っていた。
かのん、は三つで
救急車はキライで
でも、救急車のおじさんはヤサシイ、
って言う。
透明な酸素吸入マスクのゴムがきつくて
イヤイヤ ....
乱視の交差点が光にまみれている
穴に落ちてしまわぬよう
慎重に渡る
いつか
二人で広げた新しい傘の下
けれど赤と青は紫にはならず
個体であることのかなしみを知った
ほ ....
俺はそうやって空を飛ぶ、毎夜。
昨日は肉を喰った。かたい肉だ、ブラボー!
だから俺は肉が好きさ、裏切らない。
肉喰えば俺はまた空飛べる、今夜も。
いつまで肉を喰える体でいられるか分からない、
....
ゆふぐれに君とふたりで春の墓地ここでひととき幽霊しようか
「五千年前の約束忘れたの?」花火しながら妹が問ふ
昆虫がふたりの為の出会いなど知らづに運ぶ花粉かな
警報機こわし ....
批評だ批評だ批評が必要だとネットで吠え続けて、おそらく数年になる。私自身は、地方同人詩誌での合評会や蘭の会内部でのわずかな批評と、詩集そのものに対するいくつかの批評をのぞき、自分の作品に長文の批評をネ ....
目覚めている時の、
彼女の姿は写真には写らない。
僕はこっそり、眠り姫、と呼んでいる
なぜって?
眠っている、その姿だけは写せるからだ、
盗むことが出来るからだ、
と、僕だけが知っている。 ....
家にある薬箱のなかの服用薬を全部飲んでしまったことがある。19のときだ。頭痛薬からキャベジンから風邪薬から、とにかく服用薬は全部飲んだが、水虫の薬など外用薬は飲まなかった。死にたくはなかったのだと、思 ....
森をゆく足音は割れていて
でもそれは 決して
壊れてゆく訳でもなく割れていて
それはいくらか湿っていて
でもそれは 決して
濡れている訳でもなく湿っていて
微かに遠のくように響き
でもそ ....
今の日本において「詩人」は既に職業として成立しないと言っても過言ではない。職業として成立しないとは言い換えれば需要がないということだ。
私はかつて詩人が果たしていた役割を(エモーションの供給)今 ....
本当のことを言いましょうか。たまには、ね。
私が本当の本当に愛しているものは、ひとつの作品ではなく、ひとりの詩人ではなく、私自身ですらなく、詩そのもの。私という小さな詩人と、私という小さな詩人が ....
批評は愛(詩や詩人のためを思っての行動)なのか。
批評はエゴイズム(己の利益だけを考えた行動)なのか。
私は、その人によって違うし、その時々によっても違うと思う。
どんなに酷評したって、 ....
二ヶ月ぶりに会って
しばらく動けなくなるくらいのセックスをしたあと
夕方にゆっくりと起きだして
二人でシャワーをあびた
あなたのマンションのユニットバスは
浴槽がとても小さくて
ど ....
いま、右手首がひじょーに痛い。うちの飼い猫の血膿をふきとろうとしたら、ズタズタに深くひっかかれた。場所が場所だし、猫の爪は鋭くてカミソリみたいなものだから、自分で見てもリスカの傷に見える。おもしろがっ ....
私が人様にはじめて認められた文章は、詩ではなく評論であった。それは静岡県民文学祭で芸術祭賞を受賞した。今の私からみると暴論みたいなところもあるし、古くなっているところもあるし、そもそも「評論」と名乗っ ....
爪を押し上げ肉に潜り、
毛穴を探って血脈にただ一筋たらしこむ。
静脈弁にせきとめられぬよう青黒い血に混じりつ、
手相をなぞる舌先にしたがい、
体の内から君の命数をはかる僕の唾は、
キスミント ....
深夜、男友達から『お前のことずっと上海してた』と電話。ひどく
驚き、『ごめんなさい』とだけ応えて電話を切る。自分の言動を振
り返り、しばらく彼には会わないでおこうと決める。図らずも点と
点 ....
週末の淀んだ駅の構内で
すれ違う人々の心の{ルビ懐=ふところ}に
「ある独りの人」がおり
優しくうつむいていたり
寂しくほほえんでいたりする
「ある独りの人」は
(声をか ....
決まって
微熱がでるのは
実らなかった果実を葬る準備の
涙の熱さ
下腹部の奥深く
あなたのオスは死んでいて
私のメスの両腕が
それでも離すまいと
必死に掴む時の
痛み
....
報道ステーションを見ていたら、イラクで誘拐監禁された三人のうち二人が記者会見に応じていた。という書き出しだとニューススレに書けこのやろーと言われるかもしれないが、私はニュースの話をしたいわけではない。 ....
とかげの足音を拾っていくと
「かげろう」と呼ばれる庭で行き詰まった
兄さん
あれは生き別れの兄さん いいえ
姉さんだったかもしれない
が、
見えたりもする
通りすがりの犬 ....
その日の雨が
今でも時々僕の肩を濡らす
廃園の木下闇に
置き忘れられたブリキのバケツ
松葉を伝い落ちる雫が
想いおこさせる
もうひとつの心臓
眠れぬ夜毎
消え残る雫がほのかに光 ....
影と
影が
重なり合うので
夜でなくても
うずくまりながら
なにかしらの気配が
ぐるぐると周回する
忘れられたまま
中心もないのに
ライカ
私の声が聞こえますか
....
風が私の輪郭をなぞる
私は風によって顕れる
その刹那
私は世界だ
世界が終わるとも
声は続く
風の意志は続く
世界は風によって名付けられ
名は風に隠されている
声は名 ....
ああ今日も夜がふけていくよ
風がびょうびょう吹いて
トタン屋根に映る雲がごうごう流れて
乗りそこなった月の船は地平線の向こうです
星のない空は
なんだかとっても寂しくって
電信柱を伝わ ....
宇宙犬ライカは
本当は「クドリャフカ」という名前で
ロシアの犬だからなんとなく
大きな犬なんか想像しちゃいそうだけど
彼女が実は体重5キロくらいのきわめて小さい犬だったのは
(言い忘れてた ....
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