昨夜は いかにも憂いでして
お風呂にも入らずに
眠ってしまったのです
予定のない日です
お昼過ぎ 湯をあびながら
ほうっ、と つばを吐きました
また その ....
地球の公転軌道がほんのわずかずつ
ずれていることを憂うガリレオの
思いを想い過ぎて
抑うつ気味になった僕は
バナナがいいと聞いて
毎朝食べるようになった
いつか太陽の手をはなれ
地球 ....
あんなに耳障りだった蝉の声も
虫眼鏡で集めたみたいな痛い陽射しも
まるで色あせ始めた遠い物語
なだらかな坂道を自転車でおりると
向かい風がほんのわずかの後れ毛を揺らす
時折小石が顔を ....
今日も現場で草むしりをした
なぜ草むしりをするのかを上司に聞いたところ
みっともないからだそうだ
お客さんが来たときにみっともないからだそうだ
アメリカやフランス発で
雑草の効果的な生か ....
・
幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....
暖簾靡いて
初秋を告げる
静寂の下
淡い酸味を懐かしむ
この青空はあの日と変わらず
期待を寄せてチャイム待つ
理由もないまま急ぎ足
畦道の花が愛おしい
掌ほどの綻び
ふふふ、 ....
海蛸とファックしたい
大の男など 優に飲み干せるようなでかいのと。
入水孔に脚を突っ込んだら
くたびれた汗を丸ごと吸い取って
内臓はコールタール色に (それは金属の臭いか)
....
ひとの悲しみは
心と身体で感じて
はじめて分かるものだ
あたまで理解しても
思えているかは分からない
ひとの悲しみを聞いても
いいことを言わないようにしている
....
いろはにほおずき くちづけしたね
緑のこころはあかい頬だった
いろはにほしくず ながれておちて
二人のなみだと彗星だった
いろはにほのぐれ ゆうやけこやけ
あなた ....
街を歩く自信がなく
最初から社会の構成員であったかのように振舞う皆は立派だ
奇跡みたいな乳をしたくびれをした夏の女
奇跡みたいじゃなくてもうずく
新宿ですれ違う一人一人をよけて歩くのは至難の業 ....
夏の夕暮れ
散歩する僕を突き放すように
雲は遠く空を覆っている
沈んで行く太陽に照らされて
黄金色に光っている
あたりには
雨の匂いが満ちてきて
遠くから雷鳴が聞こえる
....
祖母が倒れた晩
私が寝ていた土蔵の屋根から
人魂が立ったと聞いたのは
ずいぶん後のことだ
祖母のねんねんこの中から
見つめていた風景の記憶は
溶け残る雪がへばりついた
色のない晩冬の ....
予行練習を
重ねて挑んだ
あなたの恋人になるための試験
ライバルはたくさん居るから
隅々までリサーチして
差をつけるために
あなたが好きな
ガーベラの花を持って
告白したのに
結果は ....
朝焼けは随分きれいで
青紫のしじまに黙りこくり
そっとアクセルを踏み込む
見慣れた速度で
過ぎていく風景をやり過ごす
少し肌寒くなったようで
エアコンのスイッチを消した
仄かに燃えて ....
見通しのいい場所で
感じないのは何故だろう
グッバイガール
細い月はハイヒール
運命はやはり
あると思うんだ
遠く遥かなものに
励まされてきた
君は近くのものに
励まされ ....
高き塔 自由の名を聞く都市煙る
上腕骨 燃えて滴る髄の文字
海の深度が落す魚影
時刻む魚群深まる海の意味
明るさに愛と慈悲のみ栄えてる
音楽が満ちて今 ....
進駐軍の通訳のような連中が幅を利かせている
俺たちを蔑みながら
いつも背伸びして奴らの目の中を覗き込み
ご機嫌を損ねないように細心の注意を払っている
それがいい生活ってのにありつく術なんだ
....
炭酸の如き 享楽に
歩幅を合わせる 雨の音。
炭酸の如き 生活に
歩幅を合わせる 雨の音。
炭酸の如き 一日は
妖精たちの ママゴトです。
炭酸の如く 人生が
....
田植え前の伊那谷は
全ての田に水が張られ
まるで大きな湖のように
風がきらめきになり遥か渡っていく
いなごを追い、桑の実を摘み
駆け回った子供の頃が懐かしい
濃紺から薄墨へ幾重にも幾重 ....
帰り道、そこは国道が傍にあるので車の音がごうごうとするのですが、一瞬はまるで、その一切が無くなってしまったようでした。
鳩が仰向けになっていました、体には少しも傷がついていませんしかし、首か ....
真夏の道
揺れる蜃気楼の向こうに
君が見えた気がして
通り雨
子供達の笑い声が
吸い込まれた雲
秋の気配を
忍ばせた空気に
形を変えて流れてゆく
夕暮れ
空の色が紫に変わる ....
木の葉落ち風語るを聞き
光のために木の葉みな手を広げ
幹 黒々と明日を夢見ている
「見」
見ているのに見えていない
僕の眼はたいてい当てにならない
1秒先の出口も1cm後ろの奈落さえ
感情の濃霧に包まれたら何も見えない
「嗅」
....
生まれたばかりの
息子の写真を
四歳になったばかりの
息子に見せて
これは誰
とたずねていた
すると
赤ちゃんとこたえる
でもこれがおまえだよ
とおしえると
にわか ....
スキップする/スキップして笑い/唄う
遠ざかってしまった青い空も雲の上には
きっと、まだ残っているのだろう
目に見えないからと諦めてしまうのは
いけないことではないのでしょうか
背伸びした位 ....
届かないと思っていた扉の取っ手は
いつの間にか腰の位置になっていた
背が伸びて視野が広がる
遮っていたものに追いつき追い越し
世界の大きさに少しずつゆびが触れる
もうすっかり ....
白い部屋の
白い窓辺のあなたに
向日葵を届けたい
朔の闇夜の月を
輝かせるほど
明るい向日葵を贈りたい
七色の虹が
黄色であふれるほど
たくさんたくさん贈りたい
あなた ....
花守る刺す飛ぶ火なる蜂であり
左腕 巻かれたる記章 包帯なり
魂の裸体しずかに座りおり
だきしめる
骨ごとだきしめる
フルパワーが続くまで
たましいがふれあっている
鈴のねがきこえる
宇宙からきこえている
じかんのまえで
ぼくらは迷える子羊だ
....
川底で
歌う 水草
舞う くらげ。
青や緑の
小さな波が、
彼らを邪魔せず
漂う時、
橋から注ぐ
私の影は、
何度も何度も
揺らぎます。
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