・
十月も末になるとパソコンが
鼻をすするような音を立てながら起動するようになる
動作もどことなく鈍くて
悲しいつらい気持ち悪い
という類の言葉は迅速に変換されるのに
楽しい嬉しい気持ちい ....
その日、僕は仕事を置き去りにして
青山墓地に向かった。
そして、
その日、僕の何かが壊れた。
さよなら神様
神様は本当に死んでしまったのだ。
五歳の僕は
毎月現れる本屋から
月 ....
制服の胸で何かを育ててる紺の靴下はいた娘ら
文庫本読んでる君の眼の中に寄せては返す海が見える日
昼下がりだらりと畳でねむってるわたしだんだん蛇になってく
そこだけが青 ....
夜も更けて
もうすぐ
最後の曲の余韻につかまって
奴等がやって来る
隙間だらけの言い訳で
目隠しした僕の回りを
ゆっくりと巡り始める
イヤホンの内側で突然に
発 ....
剥き出しになった電線に
切り刻まれた夕日から
滲み出すオレンジ色の血潮
一夜にして枝葉を落とされ
無念の拳を空へ突き上げる
街路樹の黒い影
夢見るように
朽ち果てていくことさ ....
方向をみうしなった鳥が落ちる屋根の上に
座っていました体育座りで
ころころとまわりながら屋根を落ちていく二つの塊り
君の唇の くれない が
僕の内側を伝い落ちると
日常が育んだなけなしの植物群は
夢見るように朽ちていった
君の爪の くれない が
僕の外側を掻きむしると
日常に着せたつきなみな制服 ....
うっすらと
冷えた微風にほんのりと
さやかな湿度とキンモクセイ
夜道をスーツは落ちてゆく
まよこを電車が落ちてゆく
ほんのりと
さやかな湿度と焚火のなごり
胸 ....
目には目を
目蓋にはものもらい
いつまでも憎しみを握っていられない
自分の握力の無さを嘆くべきなのか
歯には歯を
歯茎には歯肉炎
いつまでも恨みを呼吸していられない
自分 ....
期待に答えるふりをして
いち、にの、さん で ストップ
サイドステップとあっかんべ
まんざらでもないようだけど
足下、気をつけてね
知ってか知らずかどうでもいい
偽物だって ....
「東」
筋違いの愁いを下瞼に溜めたまま
勘違いの寝グセを直そうともせずに
東のゲートが開けば光とともに流されていく
煌めいているふりをしながら流されていく
....
トビが啼かずにまるく飛んでいる
白い朝の港の防波堤は
カラスの群れで
黒く染まっていた
ひゆん ひゆん ひゆん
と息をしている
ひゆん ひゆん ひゆん
と啼いている
ひゆん ひゆん ....
歩行する足と足の間に光は群れて
喉仏に蝶を飼う人
コツコツ ブーツの足音 世界が美しい
海いつとなく揺れ 波のはしる
詩歌集見ると舌舐めずりのロクロッ首
....
余韻に浸ることもせず
整理整頓に勤しんだ
空になったスチール缶はまるで
私に代わって愚痴を溢してくれそうな気がして
現在、机の隅で待機中
誰も尋ねやしないだろうから
ここぞとば ....
すくらんぶる交差点の信号機は
恋をする瞳の奥みたいに
ふと止まるときがある
いつか愛の記憶を出発する
終電を逃して
おしゃべりをしながら
取り残された恋人たちは
再びくちづけをする
....
10日、前日の余波がある。軽く流す感じで12句ほど書く。
一週間の実験も終わる。10月10日の作品。
墓標 闘争の現場あの世は激しく
墓石に糞蠅ギラギラと密集
灰を壺に貯め ....
道を歩いていたら
言葉が落ちていたので
拾いながら歩く
拾った言葉を並べてみたら
詩のようなものができたので
額縁に入れて飾っておく
紅葉が一枚
はらりと落ちて
そこからまた言 ....
立体的な画像に目を奪われ
グルグルと頭では
スプートニクが回っていた
七夕に願いをかけるなら
それはマジックで黒く染まっているでしょう
現実はいつも甘い薫りで
姿を ....
廃墟 と呼ぶ 騒がしい 時間は 鎮まる わかってしまいたくないのに、目を離せない いっしゅんの うちに 瓦礫の 写真は ....
湯をもとめ
山林にはいる
猪か、獣の臭いがする
腐葉土を踏み
靴底を滑らせてゆく
真実は
湯をもとめてはいない
獣を撃つことのみ
思考している、否、体が ....
晴れた空に幸せそうな雲が
まだ明るい日のひかりが
高層のビルに当たっている
こんな時間帯に
悪だくみをする人もいるだろう
美しい歌を聴かせる人もいるだろう
失意 ....
夏に残したこころの跡
枯れた芝生に吹く風が
冬の星にも吹いている
光はあんなに小さくて
悲しみは無菌室の中で
明るく仕舞われている
ブルースよ、未来を幻視せよ
....
7日夜、9句出来る。成果もあまり期待しないで始めてことなので嬉しかった。
風が懐かしい歌歌っている
深夜 細る月を待っての進軍
蛍光下に投げ出された本
風に郷愁 ....
おどおどした目で
悲しみ選んでいる人々に
営みの地平から
白い抒情よ、立ち上がれ
響きあうこころと足音
蛍光灯でがらんとしている人々
悲しみは漂白されている
....
*
ぬくい雨とつめたい雨が交互に降る
六月とジューンのあいだの青い溝
雨が上がった朝
夏至の朝、光について考える
前を歩く女が引く
空のキャリーバッグのキャスター音が低く響く道
その ....
黒い空だけが
、羽をひろげられる
あかしだと想ってた
すすけた煉瓦の路地裏
12の時に踊りを ならった ◆―◆―◇
誰もがあきれて 笑っていた
黒煙のあがる炭鉱の街で、
他の子達 ....
傷つきやすいこころがあるならば
ひとを傷つけるようなことをしてはならない
喜びを感じるこころがあるならば
ひとに喜んでもらえる自分でなければならない
キンモクセイは夜のどこにあ ....
町の夕方がきらきらしていた
台風一過のレモンの色で
ほどけた空が明るくなっていた
それを美しいと思えることが
いついかなるときもそうあれるように
三百万年まえも
三 ....
情報隔離週間と銘うち、読書、音楽鑑賞を控えた。
{引用=脳髄のインプットを減らし、自身の脳がどれだけアウトプットするかを
試してみたかった。書物は西東三鬼の句集をパラパラ捲る程度。
....
何度もあなたを殺していた
言えなかった言葉を尖らせたナイフで
いつの間にか覚えてしまった
人格者の微笑をまとったまま
何度もあなたを殺していた
愛憎の糸がこんがらがったロープで
い ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27