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{引用=
誰も知れない部屋に
愛しい疲れて飽いた私のプシケ
その瞳の黄金の闇に恋をしてから
どうにも朝が眩しくて
指先に掴めない月光を纏わせて
草原で花冠を編む
春雨のような声で静寂 ....
高崎線の電車はスローダウン
ターミナル駅にゆっくりと進入する
携帯電話から窓の外へ顔を向けると
常磐線の線路上をこちらよりもゆっくりと
白地に赤帯の見慣れない電車が
高架ホームに進入しよ ....
A201号教室の
錆びたドアが閉ざされた
入ってったのは
元女優の議員達だ
外に聞こえないと思って
いい気になってんじゃねえ
俺の糸電話あんたらの
タンポンのひもに繋がってんだぞ
....
私は
水面を眺めるのが好きだ
こころが癒される
趣味は写真撮影
水の流れや
水面に揺れながら
ゆらゆら写る
風景を愛でながら
写真撮影する
今日は
暖かな春風に導かれ
何 ....
自転車で
それは
全身がうす桃色に塗られており
まるで幸せを知った少女みたいだった
現実に乗っているものとは違い
錆なんてどこにも見当たらなかったし
ペダルはきいきいと不快な音 ....
おれ猫好き
猫無表情
猫したり顔
猫困り顔
猫泣き顔
猫笑い顔
猫怒り顔
猫脅し顔
猫そのまんま
咬む猫
吠える猫
眠る猫
そっぽ向く猫
ふとる猫
何かした ....
双児の肉片を
野良猫が咥え
片鱗に花を咲かせて
モリアオガエルを
抱き寄せる
ふと夜空に顔を上げて
星の瞬きを見つめても
あなたは落ちてこない
赤が赤があることに
素直に頷け ....
柔らかな日射しに包まれて
梅のほんのりと香る今日の良き日に
鳥となる準備は整った
目まぐるしい日常の中に
留まることを許してもらえない代わりに
整理整頓を行うための箱を貰ってきた
捨てるべ ....
朽ち果てた誰も訪れる者もいない廃園
寂れた石畳の道をひとり歩く
色褪せた花壇には花一輪すら咲いてはおらず
春を謳歌していた面影はどこにもなかった
かつてこの花園で一輪の花を摘んだことがあっ ....
{ルビ辛夷=コブシ}の白い花が
ほころんでいました
図書館の前の小さな広場に
冬の終わりを 告げるように
けしてそれは、桜のように
春の訪れのあでやかさなどでなく、
可憐な細い花弁 ....
{引用=
冷たいコールタールに沈んで
薄い唇を堅く閉ざせば
沈黙が真実さえも無に返して
上辺を撫でる風には奪うことができない
追憶の時間を抱き締めている
強張らせた体が化石になって
....
今日の夕食は、牛のステーキだった
レアにしろ、ミディアムにしろ
それはもう食べ物にしか見えなかった
それはほんの少し、葡萄畑の匂いがした
僕達は一瞬だけ、目一杯の緑
風を感じてしまったのだ
....
葛城山の一言主神は
悪事(まがごと)も一言、善事(よごと)も一言
言い離(はな)つ
葛城山の一言主は
若建(わかたける)※1の
悪事(まがごと)一つ糾せなかった。
葛城のウカラ ....
壁にはたくさんの時計が掛かっている。
それぞれが、ばらばらな時間をさしている。
しずかな部屋に、音だけが響く。
せわしなく動いているのもあれば、
今にも止まりそうなものもある。
それぞれ ....
現実世界にこそ悪夢がある
わたしたちは同列を見比べれば
無秩序な鉄槌を下しているのだ
(ジョゼフ・メリックの泣き声を耳にしたか?)
コンマ数秒という早さで鉄の雨が降りだす
今日は ....
深海魚の朝
濃くなる陽射しが
少年とベッドとの境界線を
徐々に明確にしていく
窓を開けると
雨上がりの観覧車と
同じ匂いがする
生まれてくる場所を
間違えたわけではないと思 ....
ぼくの町の
冬と春の境界は
一日で線引きされたように
唐突に 暖かな風が吹き抜ける
山に一方を封じられているものの
海からは潮の匂いとともに
サイタ川をさかのぼり
荒んだ寒風を
穏 ....
うぶごえをあげた春が、もう
街にすがたをみせる
通りの角から
にぎやか過ぎるその声音が、
あたしを助けにきてくれる
手をひくように
階段をのぼったら
勇気をほんのすこしばかり だして ....
二階の窓から曇る夜空を眺めている
降りだしそうな雨をむしろ望んでいる
雨に撃たれてしまいたい
世界に射抜かれる前に
この街を焼き払おうか
*** ** *
持ちきれないほ ....
使い切れないほどの金はどこへ消えたのか
使い切れないほどの人間はどこに消えたのか
抱えきれないほどの食べ物はどこに消えたのか
ウンザリするくらいの笑顔はどこに消えたのか
この国には ....
まっすぐな 道も
あったのかもしれない
どこまでも続く、単調さがいつか
ありがたいものだと、
気づかされる
そんなもの本当にあるの?
真実は、蛇のように曲がりくねった
螺旋のそれ ....
私には
赤いゴムの水枕に
特別な思い入れがあります
私が夜毎に使う枕
その枕は{ルビ理由=わけ}あって
たぷたぷ
揺らいで水を鳴らす
赤いゴムの水枕です
水道の水を ....
日が長くなってきた
暖かい日がちらほらと
そろそろ学生遍路が道に迷い
路傍で空を見上げる頃か
蝉の鳴き声が聞こえる
まだ冬の終わりだと言うのに
耳鳴りだろうか?
幻聴だろうか?
....
生まれたときから
屈託のある顔をした君は
赤ん坊のくせに徹底していて
怒り出すと
……いやっ
興奮し出すと
顔が赤黒くなるまで興奮して
泣いているのか怒っているのか
とんと僕には分から ....
横隔膜、という膜がある
橋の上を歩いているときに
初めて知った
何かの香料の良い匂いがしていた
早く帰りたかった
知っていることが増えて
もっと上手に嘘がつけると思った
....
とあるマスターはこう言った
「一時の情に流されてはいけないよ」
と 熟練の笑みを浮かべながら言っていた
手元には注いだばかりの冷えたグラス
何度目かのおかわりすら忘れれば
カチリ ....
太陽が死んでしまって
僕らはどこへいけば
光を見つけられるのだろうと
凍りついた足で
凍りついた息を吐きながら
凍りついた道に迷う
破壊の二文字に踊り狂った
少年少女も
目覚めるこ ....
大きな引き出しは
アングリ口を開け
ようこそ、よくできたお客様です。
などと歯の浮いた世辞を言って
そのくせ、舌なめずりの音が
家中に響きわたっている。
それでも人の良いインテリ面した ....
℃、インターナショナル。
――クライン・ブルー!
震える 指の、
「ナンデ簾乃ぉー?
オラ、もさげに
馬火きーナ、緋釜℃
餐ゲな女、
恥もこして 零零
麗しき ....
昨夜の雨を吸った落ち葉はぶよぶよと柔らかくなり
いくら踏みしめても何の音も鳴らさなかった
足跡さえも吸収してしまいそうな弾力は
寒さを忘れそうなほどの優しさで失望を覚える
冬はいつだっ ....
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