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台所に転がっていた
折りに入っていた桜餅は
ちんまり小さくて
一口でも食べ切りそうだ
桜色が濃すぎて
鮮やかでキッチュで
どう見ても体に悪そう
だから少しニヤけながら食べよう
....
高崎線の電車はスローダウン
ターミナル駅にゆっくりと進入する
携帯電話から窓の外へ顔を向けると
常磐線の線路上をこちらよりもゆっくりと
白地に赤帯の見慣れない電車が
高架ホームに進入しよ ....
二階の窓から曇る夜空を眺めている
降りだしそうな雨をむしろ望んでいる
雨に撃たれてしまいたい
世界に射抜かれる前に
この街を焼き払おうか
*** ** *
持ちきれないほ ....
その手を離さないで
今の僕は放たれて
たちまち空に
吸い込まれてゆく風船で
空の奥のそのまた奥
何もない空間を漂って
あなたの知らない街に
あなたの知らない姿で
降りて ....
キィィィィ ンンン
鳴っている
塾帰りの娘を迎えに来て
路肩に車を止めてエンジンを切る
ガラス1枚隔てられただけで
街のノイズは膜を張られ
夜の静寂が濃くなるから
ィィィィィ ....
豊洲から有明へ
ゆりかもめ沿いに
豊洲駅を東へ歩く
すぐに現れるガス資料館を抜けると
広大な空き地が広がる
新開地とはこんな
空っぽの場所を指すのだろうか
遠景は遠すぎるが故 ....
夜を走る電車
十五両編成の最後尾
ゆっくり居眠りしようと
乗り込んで席を確保した
はずだったのに
次の駅から
スノーボードと思しき
荷物を抱えて乗り込んできた
二十代前半の女性が
暫 ....
主の居ない実家の風通しに行って
帰京する日の昼食は
親父が通いつめていたラーメン屋
生前
親父は帰省していた僕が帰京する日には
決まってこのラーメン屋で一緒に昼食を食べた
それだけ ....
お囃子が始まる
和太鼓/篠笛/摺鉦が
絡み合って
今日は表彰式のアトラクション
小さなホールに響く音は
ことのほか大きく力強い
お囃子の調子に乗って
繰り広げられる足踊りは
艶 ....
濡れた足で汚してしまうとしても
恐れることはないはず
そう信じたくて
貴方に話しかけようとする
はじけてしまう言葉を
ただ見送る
見送り続ける
君の後ろ姿など目に焼き付けるものか ....
僕とは繋がっていない
世界中を止めどなく
流れる/溢れる情報なんて
信じられない
新しいセオリーなんて
存在したこと
あったのだろうか
すべては既視感に
満ちていて
それは瑞 ....
飯能市街を抜けて山間へ
僕の運転する車は
滑らかに進んでいく
しだいに狭まる谷を抜けると
山間の集落が現れる
カヌー工房とか
材木屋とか
しゃれたパン屋とか
横目に見ながら ....
軽やかな部屋
羽ばたくように
真鍮の鈍い光の反射
中空にあるのは
現世から浮かびあがろうと
何ものにも縛られたくないと
軽やかな意識で瞑想したいと
でも思っているのか
未熟なま ....
分からないままに歩き続ける
たどり着く場所なんて知らない
まして此処が何処かなんて
想い描く余裕もないから
ただ流されるがままに
諦めて誤魔化して色褪せていく
その世界を壊せばよい ....