{引用=
鴉の眼に宿る一閃の煌きが人々にとっては畏怖でしかなくとも
夕暮れに戻った巣の中では献身的な愛を育む母鳥であるかもしれない
そう言ったおまえのイメージからははっきりと
精巧な素描の上に ....
{引用=
そこにいないということで
目隠しをして
だけれども
部屋の片隅に
座っているおとこ
夜が
真空管のラジオから
トラッドフォークを
紡ぎだし
おとこの耳を
慰める
....
{引用=晴れやかな正午に
土砂降りの深夜に
ショーウィンドウ越しにわたしの海辺に寄って
砂浜で輝く貝殻を拾う
追い越して先回りする足取り
空瓶がひとつずつ埋まっていくたびに
はばたきの向こ ....
{引用=
図書館へ向かう碧いスロープの
脇に咲く珊瑚の合間を縫いながら
ゆらゆらとスカートの尾ひれを漂わせて
記憶の深海へと迷い込む
見たこともない
七色の藻屑を拾い集め
繰り返し剥 ....
{画像=101015121000.jpg}
君はどこに行っていたのと
神話が問いかける
ここまで
ずいぶんと時間をかけて
きたのに
ほんのちょっとの不在で
だいなしにしたね、と
....
断片的に腐敗してゆく
囚われの大地に
種子が落ちて芽吹き
雨が枯れようと
禍々しさのない陽に
両の手を広げ
受け入れる
知識を持たず
本性に従って生きるものたち
裸の木立 ....
ずっと寄りかかっていた
揺るぎない背もたれとして安心しきって
あなたが感じている重たさも
慈愛で受け入れて
融かしてくれているのだと思っていた
いま、青に導かれて去ろうとしている
....
{引用=
どれほどの心が割愛されているかを考えれば
事象としてのみ繋がることを選んでゆく日々
シーニュの隙間から零れ落ちてゆくものらの
見えない表情を想うほど愛を思い知ってゆく
あどけな ....
死んだ少女の手を取って
「タリサ、クミ」とイエスは言われた
少女よ、起きなさい
へべれけにされマワされて
中学生の少女は自殺した
夏の未明、背伸びの季節には
恋に恋する期待もあっただろう
....
風邪ひいた
鏡の私が情けない顔で
くしゃみを3発
脳味噌が揺れる
くしゃみを3発
モナ・リザもくしゃみをする
その時
?泣く女?もくしゃみをする
アイスランドもくしゃみにぶれる
世界 ....
声
八月の
舌の上で溶けてゆく氷
その所作
吐息
歯
の並びを
ひとつひとつ
読み上げる
その要約の中に
静かに埋もれてしまいたい
針を
正午に合わせた時計が
生物的な誤 ....
男は94ページを読み終えると、時計を目にした。
7時23分。
昨晩から雨が続いている。
グリーンの縁の窓から臨む景色は、霧がかっている。
溜め息をついてはみたものの、こんな休暇も悪くは ....
子を探す母親は
探して探して町じゅうを
探して探してあちこちを
空き地を路地を公園を
橋下を覗き川面に目を凝らし
袋小路を野を丘を
森を林を墓地を巡り
家という家訪ねて回り
隣の町を裸 ....
砂漠には
牡牛や熊や鳩や鷹
大昔
それらすべてはひとつであったと
髭づらの人が
乱れる息を
掌の中
上手にすり合わせ
微笑み
「悪疫は煮沸消毒いたしましょう」
「悪疫を煮沸消毒いた ....
{引用=前書き:
毎日暑い日が続きます。毛深い方、そうでもない方、弁別すれば薄い方、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
ご好評をいただきました「陰毛を考える」もいよいよ最終回となりました。
引 ....
※アメリカのライト・ヴァースの経緯については「ライト・ヴァース雑感2」をお読みください。→https://po-m.com/forum/showdoc.php?did=215625
こちら、 ....
豆腐がテーブルの下に入ったまま
出てこようとしない
いくら呼んでも
何の反応もしないでじっとしている
仕方なく椅子をどけて
自分がテーブルの下に入る
特に豆腐に恨みがあるわけでも ....
きのう手紙がとどきました。ふるさとのこころの箪笥から。
【前略 私は あなたの本当の母です。あなたは 親に「橋の下でひろってきた」と言われると喜んで、高貴な産まれを夢想するような娘でしたね。卵が先 ....
乗馬パンツを試着する
膝に白い羽毛を見つけ
これにファルコンの綴り
を刺繍してもらう
*
まわるまわるルレットの
太陽
を日付変更線で切り取り
新しい布地と縫い合わ ....
{引用=
「おはよう、
せっせとお弁当箱に昼食を詰める
この世界のなんらかに収まりなさいと
話しかけてくる忙しげな背中
通学路に捨てられた雑誌には
艶びかりする牡牛の角と蛙の屍
女の子の ....
私がとても遠いのだと思っていた人は
すぐ目の前にありました
なぜならその人は海だったのです
必要とあれば向こうから
そうでなければひいていきます
私がどんなに駿足でも
どれだけ望みを握 ....
{引用=領域を徐々に侵してゆく不均一な煙のような
その渇きは}
意識の最も深い階層に砂の粒はあふれ
ああかつてのそこはなんであったか
今を放浪する怪物の名は私の三分の一足らず
どうして気 ....
その現代詩、セルダムイリーガル
なんてちょっと格好いいじゃん
自由詩に
もし決まりとか約束事とかがあるなら
張り切ってぎりぎりを狙うよ
NGワードがあるなら別の言葉をさがす
使われ ....
}羊水(春)
コイン・ロッカーのコインが着地する
その音を聞いて
呼気をつきはなす
わきまえてなまえを呼んでも
まだないのだから
うぶごえをあげる
こっちへ来なさい、
と あな ....
{引用=
旅群の影に腰掛けて
静かにナツメを噛んでいた
夜露に濡れた
クサカゲロウの卵塊が
孵化した途端
光に溶けて
満ち欠ける月が映る
瞳を抉り出し
過去を刻んだ証人として
....
バナナのプロパガンダ
バナナは長い
バナナは黄色い
バナナは湾曲している
バナナは南国産である
バナナは安い
バナナは皮剥きやすい
傷みやすい 黒ずんで行く
バナナは可愛い
バナ ....
広大な宇宙は光に満ちてても君がいなけりゃただの闇だね
{引用=
またいつもの
自転車にのって
ぼくがむかっていた
先とは
どこだろう
でも
いまは
どこだろうがかまわないおもいでいっぱいなのは
はたして
ど ....
泣く女
泣く女は階段の下で
セーターを編んでいる
赤い毛糸と緑の毛糸で
哀れな女
シンデレラは靴の片方をなくした
シンデレラは靴の片方を探している
シンデレラは義足の片足 ....
{引用=
紙上に佇む
痩せ細った枯れ木
磨り減ったペン先がつけた
掻き傷の隙間に
深く根を張るインクの滲み
どこに行くとも
なにを残すとも
示さぬままに
埋まってしまった行の終わりの ....
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