体温を逃がさないように
君は丸くなって僕の隣りで
いつものように
まだ寝息を立てている
まるで小さな生き物が
昨日も生き抜きましたと
陽光に告げるように
寒い、寒い、いつもの朝
....
1
目の見えない私には
百科事典は
何の指針にもならない
漬物がよく漬かる重さだから
重宝しているんだ
それだけだよ
2
これはぼくのばいぶるなんだわからないことは ....
1
ばあちゃんは、朝一度
仏壇に線香をたいて
夫と長女に行って来ますをする
六畳間は、線香の匂いでいっぱいになる
2
煙たそうな赤ん坊の叔母さんとじいちゃんを見ながら
中学生 ....
なぁ、注さん。ちょっと、話をしようか。
高木と志村は、浮世のしがらみというか・・・仕事で、ちょっと来れないんだよな。
加藤は、あいつ、渋滞に巻き込まれているんだ。
(中略)
注 ....
この闇が続く限り
きっとどこかに
眠れない心を抱えた誰かがいて
その誰かもまた
違う誰かを求めてる
私もその誰かになりたくて
こうして今夜も眠れずに
昨日と地 ....
掃除がてら、倉庫の中を漁っていると
どかした箱が崩れて 戸棚に当たり
中から石鹸液の瓶が転がり落ちて
割れて
辺り一面に
昔の病院、独特の
何とも言えない、嫌な雰囲気が立ち込めた
....
愛する人
僕が君の何だろうなんて
もう聞かないよ
思ったより
色が白くて
胸が大きかった
今
僕の腕の中で眠っている
それで僕は何もいらない
愛す ....
春を燃やせ
はにかんだ木漏れ日から
涼しげなふりをする風から
蒔き散らした種の芽吹きを妄想している
八重咲き紅梅一輪をちぎり
呆けたアスファルトで踏みにじれば
一滴の紅は血となり火 ....
起き抜けの
一杯の珈琲と一本の煙草
まだ寝惚けた頭には
今日が昨日で
昨日が今日で
起き抜けの
一杯の珈琲と一本の煙草
ボサノバなんて聴きながら
一日に一度しか味わえない
その味 ....
今夜は
ウイスキーの水割りを飲んでるよ
僕はあんまり
ウイスキーは飲まないのに
なんだか
無性に君の声が聞きたい
別れを言い出したのは君なのに
僕を振り払った ....
ぬくもりは、いつも
土の匂い 木の匂いで出来ている
どれほど年老いても、銭湯の湯気の中
その存在感には
富士山も
霞んで消えて、行くばかり
角材を担ぎ上げる姿 のこぎりをひく横顔
....
まあるいね
こんもりと
きいろいね
くっきりと
わらってる
うたってる
さぼてんの
はちのすみ
はるですよ
はるですよ
ここにいま
いきてるよ
{引用=右手と左手のための協奏曲 より}
とんがり帽子を取る
薄くなった頭に汗のしずく
赤い丸い鼻を取る
熊のパンチがかすった曲がった鼻
メイクを落とす
遍歴の刻まれた深い皺
白 ....
口笛を吹く余裕はせめて
いつも残しておきましょう
両手の荷物が重くても
家路がどんなに遠くても
それは放課後のチャイムのように
君の心に響くでしょう
何も見 ....
寂しいと口にした時点で
もう旅ははじまっていた
終わりのないかなしみの
端っこまでずっと歩いてゆくような旅
そんな途方もない旅が
もうすでに始まってしまったんだ
....
切って砕いて
煮込んだら
あとはおいしく
頂きます
生ではとても
食べられない
あなたの冷たい
その言葉
投げつけられた
その言葉
まだ明け切らない静けさが、寝苦しかった空気を風に乗せる
この町の朝は早い、大きな篭を天秤状に担いだ女性が傍らを通り過ぎる
現地語の上手く話せない僕は、取繕った笑顔で「おはよう」と呟いた
彼女たち ....
君がどんどん
僕を切り取ってゆくので
ついに僕は
一粒だけになりました
海辺の砂のように
乾ききった一粒の僕
君は少し
ためらいながら
僕を道ばたに ....
簡単にすむのなら
言葉なんていらない
分け合えるのなら
心なんていらない
何もかもを取り去った世界を
君は美しいと言えるのかな
まるで
寂しい子供のように
優しい言葉を
待っています。
冷たいのはいやだから。
傷つくのはこわいから。
寂しい子供は寒空の下
どんな言葉が
欲しいでしょう。
一体僕は寒空の ....
痛みはたたんで隅に寄せ
汚れたこころは洗います
今日は晴れていますので
明日までには乾くでしょう
昨日も今日も洗濯日和
明日もずっと洗濯日和
必要なのは雨ではな ....
一縷の日常は
屈託のない笑顔で
いつもわたしの中に
入ってくる
わたしは日常に潜む
狂気に対し確信を持った
威勢を放ち
猛然と立ち向かっていく
結局は壊しそして生まれ
平衡感覚を保つ ....
こんなにちっぽけなものでも
ここにある と 静かに語る
ただ黙って積もり
その日の風に 明日の模様を描く
その日の波に 昨日の夢を揺らす
永い永い時間を抱いて
ここにある と 静か ....
全ての嘘は
真実に終わる
この口から紡ぎ出された偽りの声
いいえ
真実はいつだって一つなのです
君は言うけど
君は、言うけど。
僕はいつだって
君の嘘が欲しかった
嘘を吐 ....
わがままなやくそくされてても
あすになったらはぐらかされる
おこれないことをわかっていて
わらってごらんとえがおでいう
たまにさみしいふりをしながら
なみ ....
1.
そして、僕はそのカードを引き当てる
"Falling in Love"
もう一度16歳の少年に戻ったように
瞬く間に"恋に堕ちる"
そし ....
旅立ちの鳥は
透き通る光は
風浴びる葉は
ものいわぬ詩人
羽ばたきが
きらめきが
さざめきが
彼らの言葉
不器用な友は
無口な父は
すれ違う人 ....
駆け抜ける人のあとを
幾千の眼が追いかける
逃れるために人は走る
眩いばかりの光を持って
幾千のその眼を
閉ざすために人は走る
好奇の眼
愛情の眼
羨望の眼
....
生きていたいから
愛していたいから
永い夢を見ていて
今はどうしていいかわからない
狼はきっと赤ずきんを食べる
生きていくために
愛していくために
そんな夢を見たって
僕はどうして ....
鉄の匂いがするこの街に
朝日が射して金属を照らす
尖ったままの花は
心の奥に刺さったまま
あの子はずっと笑ったままで
消えてゆく星を見ていたんだ
耐えきれない時間が
二人を包んで
....
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