いとしいという気持ちは
どこにもたどりつかない
ただ生きてくださいと
おもうばかり

あなたはもうそれで
十分素晴らしいのだから
なにひとつあきらめることも
うしなうこともない

 ....
こころの透明な日に海がやってくる
あてどもない迷いに逢いにやってくるのだろうか

迎えるすべをしらない私はとおい砂浜で貝を観察したり
でも思い出に似た貝殻をさがしてみる

光沢を失った風景 ....
風が、頬を撫でていった
仰いだ空を、雲は流れた
この道を往く
我は旅人
風の想いの吹くままに  
街の喧騒に負けないように
大きな声で叫びつづけた
まわりが大急ぎで進んで行くから
似合わない早足で歩きつづけた


聞き流してきた やさしいささやき
見過ごしてきた かわいい野の花
 ....
達者でありましょうね、きっと
必ずや笑んでおいででしょうね

喜びようの一つ一つを隔てなく
過ちようの一つ一つさえ隔てなく
見届けてくださった、あなたですもの

わたしがなにを望 ....
私の重みで、凹んでいる
タイヤの椅子のブランコが
ぎっしり…ぎしり…と{ルビ軋=きし}んで、ゆれる

軋んで、ゆれていくほどに
ぷらたなすの樹は、詩いだす
ざわつく若葉も、踊りだす

 ....
 
もしも猫だったら?

あたいは、段ボールの角で凍える子猫さ

何も信じやしないさという目をして、何かを待つ捨て猫さ



 
「ママ、なんでみどりなのに、あおっていうの?」
信号を指さして
そう問う
まだ乳くさい我が子を
天才だ! と思った遠い日

わたしは
なんと答えたのだろう

仮に
みどり、と名づけ ....
零れ落ちる花弁を無碍に季節の風が運んでゆく

ちょっと絡めただけの指先が愛しくて

君の名前をそっと呼んで見る

僕は花盗人君の唇を奪うろくでなしさ

君にあずけたこころはいつか返して ....
やわらかな ・ ひのひかり ・ ぬるいかぜ ・ はるのあめ
ゆきがとける ・ つもり ・ つもった ・ ときが ・ とける
とけて ・ あらわれる ・ いろたち
いまが ・ うごきはじめる

 ....
お父さんの部屋は半分おなんどで
机の横にさびたバス停がありました
お父さんが3年前
会社の近くのがらくた市で買って来ました

私と妹は大喜びしました
お母さんは
「何考えてるのよ、こんな ....
声がする
崖っぷちに
かろうじて
爪を立て
呼んでいる
誰かを
よるじゅう
求めている
雨に打たれて
傘も持たない
家もない
母もない
優しい思い出も持たない
痩せた猫が
 ....
こんなにたくさんの
文字が 並んでいるのに
どうしてさみしいんだろう

文字でなんか温度を感じられない
そう言われて涙したのは私

向こう側にいるはずの
だれかの息遣いを知らない

 ....
ひとは
あるものにも
ないものにも
こだわってしまうね

しぬためにいきるのか
なんて
考えそうになる夜 うっかりと

一番上の層を
ながれながら
探している半身


ほか ....
コトバにしなくちゃ
わからないんだって

コトバにするから
けんかになるんだって

いいたいことためて
風船になった
どんどんふくらんで
はれつしちゃった

ひりひりするから
 ....
恨み尽くして血に染まり
幽霊花だ、地獄花だと忌み嫌われて
墓場の隅まで追いやられ
歯噛みしながら散る曼珠沙華

お前憎しと今年も咲いて
わが身は白い彼岸花
恨みはいずこ、血の色いずこ
 ....
ちっちゃなころに大切だったものが
いまになってちっぽけに思えてしまったら
きっとそれ以上に大切なものなんて見つけられない

  おもちゃ箱をひっくりかえして
  いろんな色のガラスのかけらを ....
 それは激痛すらも無く 
 いつのまにか緩やかな時のまにまに 
 我胸から{ルビ抉=えぐ}り取られた 
 空虚の闇 




{引用=誰もいない深夜の映画館の 
スクリーンに映し出さ ....
光のにおいを
燃やすにおい
雪のにおい
水のにおい


空の青を掻く
音だけの吹雪
足もとにすがる
片羽の群れ


かがやきのない
氷の雲から
落ちてくる虹 ....
風から風へ
季節が変わる
いつもの風景が
広くなる

時から時へ
季節が生まれる
いつもの時間が
穏やかになる

音から音へ
季節が奏でられる
いつもの音声が
豊かになる
 ....
 詩と詩論
〔序〕
 27のとき詩人になりたいと思い立った。その頃小説も短歌も翻訳もやっていたが、最もなりたかったのが詩を書く人であつた。詩を熱心に読むことが好きだつたせいでもあろう。
 大学へ ....
目の見えない人が歩く 
前にいる友の背中に手をあてて 

目の見える僕も歩く 
いつも前にいる 風の背中 に手をあてて 

そうでもしないと 

ささいなことで気ばかり{ルビ焦=あせ} ....
仕事納めの年末に 
1月から他部署に移動するAさんと 
老人ホームの風呂場を{ルビ掃除=そうじ}した 

「 わたし家では掃除なんか
  ろくにしないんですよ〜  」 

とにっこりほほ ....
中央図書館を出ると 
すでにとっぷり陽は暮れて 
人々が行き交う広場の真ん中には 
イルミネーションのまばらなさえないクリスマスツリーが 
それ以上でもそれ以下でもない素朴さで風に揺れていた  ....
夜に、わたしは 
はしたないほど口を開けますから 
どうぞそこから私の中に 
入っておいでなさい
 
内側から私を喰い尽くして 
やがて空洞になった私の躰は 
それでもまだぬるま湯ほ ....
真夏の日差しの照りつける
石畳のオランダ坂を下っていると
左手の幼稚園の中には
元気に足踏みしながら歌う
水色の服を着た子供達

入り口には
ひとりはぐれて泣いている男の子
笑みを浮か ....
兄、あるいは姉と呼ぶべき
生まれなかった命にむけて

もしかしたらこの時代は
貴方たちの手で変えられたかもしれないと
そんな期待を寄せるわたしは
我が侭だとわかっています

 ....
ふらふらと酔っ払いの千鳥足
さみしがり屋のピエロは口笛吹いて
今宵も月夜の道を歩いています

膝を落とし 手を差しのべ 愛を乞う
寒がりな裸の心を胸に{ルビ潜=ひそ}めて

夜空 ....
強い風は迷う心も持っていくんだよ


たくさんの迷いがビルの間をすり抜けるから

窓がキラキラと磨かれる


飛行機が飛びにくいのは

隙間から迷いが入り込むから


強い風 ....
雨水がさらけ出したものは
きっと未来
微量の酸に溶かされて

口には出せない罪だから
沈殿した
醜い鍾乳石

自分達の罪だか ....
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さらわれて、ゆく- 千波 一 ...自由詩414-7-9
ぷらたなすの樹__- 服部 剛自由詩614-7-8
捨て猫さ- 殿上 童自由詩13*14-5-11
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はる- 北野つづ ...自由詩313-4-14
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