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雨は世界のかなしみなのだと
あなたは言った
何処かの誰かの何かがこぼれ
気化したあとに上昇し
消化しようと昇華する
雨は世界のかなしみなのだと
あなたは言った
晴れて ....
まばたきが
夜を夜に迎え入れる
十二月が
十二月の指をすり抜けてゆく
遠く青空は鳴りわたり
音の紋は燃えひろがる
水を駆る光
光をついばむ無数のくちばし
....
遥かな過去にも未来にも、二度と訪れない
今日という日に巡り逢う、隣の人の心象に
{ルビ閃=ひらめ}く火花を――灼きつける。
宇宙に灯るマッチの如き、我が生よ。
逃げないで
まだ終わらない
忘れてしまいたい昨日も
何か一つのきっかけになる
見つめてみて
自分が歩いてきた道を
そしてこれからを
なにもないよ
....
荒地の隅の
暗がりの
花火のように遠い花
すぐに見えなくなる
上を向いた眼
何も映さない眼
見えない何かが
のぞきこんでは過ぎてゆく
うたがひとつ
消 ....
空に向かって融けてゆく
指のかたちの切る花
切る花
空に向かってかがやく花
鏡に映る 名前の無いもの
欲めると同時に満たされるもの
すぐに消える言葉の背を
長い長 ....
どこからともなく
ゆくえをさまたげようとする
いたみが
むねにひろがります
さいきんはもう
おくすることもなくなりました
ただずっとくもんするばかりではありますが
それをこまったなと ....
どしゃぶりの雨の中
ガタがきた車の中
壊れたワイパーに途方に暮れて
となりのあなたと虹を待つ
蝉時雨のなきごえに
あなたの涙が隠された
湿った言葉じゃ拭えなくて
そっと震える ....
ほんの
小指のつめほどの
ささやかな背に
滑らかに乗る
勤労の
まる
悠長に
せわしげに
その身に負わされた太陽の名を
あちらこちらへ
振りまいて
唐突に
発つ
....
所変われば旨さも変わる
しかも賞味期限つきときたもんだ
あんたとあたいの正しさも、そんなもんだろ
真っ白な紙を見て
僕は、こう考える
ここでは、
何にでもなれる
どんな事でも出来る
どんな世界にも行ける
なにかを
創造するということ
言葉を通じて
....
夜風に揺れる柳は指揮棒
無数の電灯や家の灯りを観客に
雲の幕に覆われた月が
月光という合奏と共に現れる夜
デクレッシェンドして
新月になり
クレッシェンドの頂点で
今宵は満月を迎 ....
ばねをまいたら羽ばたくブリキの飛行模型
月の船に帆をかけて
静かな表を滑っていく
月の裏側には人差し指を立てたウサギ
聞き耳を立てる
パイロットは
ブラックボックスが正常か、と
今120 ....
透明な木漏れ陽が ころころと
転がっている 密やかな苔の森に
生を終えた 蝉が仰向けに凝然と
夏の終わりは こっくりと乾き始めた
風が流れて 何かを囁いて過ぎた
手を繋いでいたよ ....
曇の裏側 霧の糸
半分の眠り 半分の過去
器からあふれる
布地の光
闇を描き足す指の痛み
静かに眩む暮れのまばたき
ふいに近づき 消える影
遠のくことさえ知らぬ影 ....
握った手を決して離さないでください。
そこに初めて僕はあなたを感じる事が出来るのです。
握った手を決して離さないでください。
それはゆらゆらと僕を子供に戻すのです。
握った手を決し ....
あの頃のぼくたちにイスはひとつしかなかった
半分こして座ることもできたのに
いっしょに座ることもできたのに
どこまでもきらびやかで
まぶしい灯りの下
見えないものは
どこまでも見えないままでいる
通りすぎる車という車の硝子を
緑色に塗りつぶしている
何をされても
何 ....
砕かれたもの
傷つけるもの
時代の浪間に
弄ばれて
俄に湧き上る想い
だが全ては白い泡のよう
摩耗して往く
意思 手足
蒼淡く ひと欠片 ....
あれは炎だ
理由も道徳も求めない炎だ
まごうかたなき赤い炎だ
怖れを知らぬ
黒い鳥が炎を目指す
命とはそういうものだ
せめて美しい君を覚えていよう
たった一日でしぼんだ朝顔
....
たった一つの顔しか持たないので
たった一つの表情しかとることができません
たった一人の人としかしっかり話すことができません
たった一つの正義しかまなざすことができません
沢山の見え ....
雨の光が近づいている
屋根を何かが通りすぎる
動かない空気のなか
かけらが降り
消えてゆく
灰が灰を縫っている
ひとつのなかのふたつの目
花の生まれる瞬を見て ....
微量の毒が体を巡る
指先の痺れが保証する
狂気の時間
血球の日が暮れて月が昇る
ぶくぶくと
抑圧された
悪人の善心が
善人の悪心が
小人の大欲が
滲む
裏返り
また戻り
....
世界は、愚かさに溢れている
愚かな発言、愚かな行動
愚かな戦争、愚かな恋愛
何がどう愚かなのか…
人は愚かさから逃れられない
けれど
愚かさは人としての証であり
愚かさは人としての力 ....
『私の掌ではどうやら
弱弱しい明りを灯すのが精一杯で
家々の間をすり抜ける風に
ぼんやり浮かんだ姿も歪んでしまいそうです
辺りは賑やかで真っ暗で
まるで
幸せなお伽噺の途中みたいです』
....
まんまるのお月様に手を伸ばして
掴めるはずよ ほらもう少しよ
散らばった星を払って退けて
目を輝かせて 持って
時間は有限 心は無限
そんな時が好きだった
空も ....
紙の鏡が風のなかにあり
風ばかり映して黙っている
光の重さに
歪みまたたく
覆うことなく
重なることなく
ただ端は端に
先は先に触れ火を放つ
地に降 ....
うまれるもの。
うすかわをむいて
むききったさきに
にじみでるしるは
なつかしいうみの
あじがする。
*
うまれかわるもの。
せつなにきりかわる
でいた ....
あの水平線の向こう側と
言うけれども
水平線は
向こうには無いのかも知れないと
眠るような
丘からの眺めに
呟いた
遠くで静けさが
音している
丘の上には
段々の
畑の向こう ....
色味の無い世界に
たった一人だけ鮮やかに舞っている君
美しくはないよ
汚れていないだけだ
眺めているだけで鮮やかになれる気がするよ
ゆっくりと砂になっていくように
僕は足元から錆びていく
....
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