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トランプ遊びしてる
息子とカルタで

きっと何か間違えてる
けれどもそれは
それで楽しい

ためしに
どっちが勝ってるの?
と息子に尋ねると
嬉しい
とだけ答える
 ....
 
 
湯舟に浸かると
そこは港
ゆっくり岸を離れてゆく

目を瞑れば見えてくる
この世にひとつだけの海を
満天の星々を頼りに
湯舟はどこまでも行く

扉が開く音がして
お風呂 ....
 
 
玉葱のにおいがしている
玉葱が匂いになって
何かしている

夏祭り
まだ日は高く
午前中のうちに宿題を終えた
小学生たちが集い
がまん大会に参加する
冷水が満たされた青い ....
 
 
夜が青く明けてゆく頃
除雪車の音が聞こえている
ひとつの戦争のように
降り積もる雪を魂に置き換えて
作業は続く

まどろむ真冬の月の目は
わたしたちと同じ
出来事だけを音で ....
 
キリンのように
長い首だったので
保育園の先生を
キリン先生と呼んでいた

心の中でも同じように
お友だちはみな
そう思っていたらしくて

ある日お友だちの誰かが
キリン先生 ....
 
象が海を渡っていく
かわいそうに
目が見えないのだ
かわいそうに
と人は言うけれど
思ってもいないことを
言葉にしてしまう
人もまた十分かわいそうだった
かわいそうに
何度も言 ....
 
始発のバスに乗ると
一人でどうしたの
と尋ねるので
怪我をして病院に通ってることを
運転手さんに話した

発車時間が近づくと
大人がたくさん
バスに乗り込んできた

知らない ....
 
わが家にも念願の街が出来た
これからは部屋の名前を
町名で呼ばなければならない

陽だまりヶ丘一丁目
そこに僕がいる
居間の窓際の辺りだ
二丁目から三丁目
キッチンが見える街まで ....
 
まだ顔を知らない
姉からの手紙が届く
意識だけの

わたしはまだ
返事が書けない
体を持たないから

真夜中
母に触れたがる
父を感じる
わたしの命のはじまり

いくつ ....
 
春が訪れた
ある晩
列車に乗って
終着駅にたどり着くと
妹はまだ
待ってくれていた

春夏秋冬
それからもうひとつの
季節があった
かつてひとつの
家族でいられた季節

 ....
 
鉛筆の匂いをさせて
あなたは春になった

尖った芯が
しだいに丸くなって
やさしくなった

声、かもしれないものを
たくさんスケッチした
知ってる言葉も
知ら ....
 
鰈を煮る
味を染みこませるため
クッキングペーパーを被せると
白い肌や
薄黒い鰭や
卵の赤い色が透けて見える

顔に布を被せられた
祖父の顔にも
同じ色が透けて見えていた

 ....
 
陸上競技の大会で
入賞した
優勝ではなかったけど

おにぎりが
少し塩辛い気がした
母さんが少し
変わった気がした
僕も

晴れわたる空
というわけではなかったけれど
い ....
 
兄さんが帰ってきた

兄さんは
少し自信のなさそうな
顔をしていたけれど
兄さんの声は
あの頃と変わらない
兄さんのままで
兄さんがいないあいだ
僕がどれだけ不良になって
自 ....
 
たかのり君
と呼んでしまった
生姜焼き定食のことを

もちろん
たかのり君が
生姜焼き定食であるはずはなく
けれども
一度そう呼んでしまえば
そのようにも思えてきて
こんがり ....
 
調律が合わなくて
ピアノが港を発ってゆく

小さな港で
すばらしい音楽を奏でていた
そんなピアノが

指先から音がした
触れてはいけなかった
白と黒の鍵盤に
わたしの小さな罪 ....
 
ふとその人の
意図してることに気がついて
糸がふるえている

わたしは煙草を銜えながら
返信メールを
打ちはじめたけれど

意図の糸が
いつまでも
ふるえているので
確信を ....
 
ひさしぶりに実家に帰ると
お父さんが
船になっていた

甲板には母がいて
いつものように洗濯物を干したり
いい匂いがしてくる
調理室で料理をつくるのも
やはり母だった

嫁い ....
 
青が好きなのです
その悪魔は
あくまでも青が好きなだけで
かんたんに
ひとは悪魔になるのです
わたしの

青が好きなのです
わたしも
ほんとうはそのことを
まだ告げてはおりま ....
 
かなしみに
慣れてしまったなら
ほんとうの
かなしみなんて知らない

かなしみが
暮らしになったなら
かなしみは
いつもともだち

ほんとうの
かなしみを
ひた隠しにした ....
 
ヒトのかたちを持たない
友だちが
殖えている

わたしのマイミクシィは
ついに五十をこえた

文字で言葉を話すから
人間なのだろう
とは限らないけど

ふと思う
彼らはた ....
 
先生おトイレにいってきます
そう言って
だれもいない廊下を歩いていた

ある教室の前で
あれは冬だったのか
夏だったのか
さだかではないけれども
とにかく寒く
暑かったかもしれ ....
 
そらのどこ
とぼくがたずねると
きみは
そらのとこ
とこたえるのだった

だからぼくはまた
そらのどこよ
とたずねてしまうからきみは
そらのとこよ
とこたえつづける
いつま ....
 
バスが終点に近づくと
乗客はわたしたち家族以外に
誰一人いなかった
息子が車内をみまわして
どうしてみんな座らないの、と
終点に着くまで
そんな不思議なことを
言い続けていた

 ....
 
しあわせだけでは足りなくて
ふしあわせなら
もっと足りない
ものたちが
ホームから
改札口へ流れ込み
潮の匂いだけのこして
ぼくときみは立ち尽くしていた

立 ....
 
歯磨き粉は
なぜ
粉でもないのに
歯磨き粉と
呼ばれているのか

ある日わたしは
天日に干して
ほんとうに
粉にしてしまったら
お日様に向かって
舞い上がっていった

 ....
 
素数って
なんだろう

素麺みたいなものだろうか

こどもの頃
母は休日になると
素麺をつくってくれた

ぼくは
いつもわりきれない気持ちで
それを食べていた

世の中 ....
 
小指をにぎる
強くて
弱い力で

たしかに
そこにいる

母さんの
子でよかったと
思う日も来るだろう
君にも

けれども今は
ひとまず母さんに
なれたみたい
よか ....
 
おとなの勝手な事情で
離れ離れになってしまった人には
当たり前のようだけれども
子供の頃に出会っているものである

勝手なおとなになる前に
離れ離れになってから
その人はいつまでも ....
 
心臓にも
記憶があるらしいんです、と
その透明な
心臓をもつ少女は言った

にくたいが
ほろびてもまだ
記憶というたしかなものが
あったとは

わたしは思って
しかし
何 ....
kauzakさんの小川 葉さんおすすめリスト(354)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
- 小川 葉自由詩809-3-25
湯舟- 小川 葉自由詩909-3-24
繰り返される玉葱と匂い- 小川 葉自由詩509-3-23
除雪車- 小川 葉自由詩709-3-20
キリン先生- 小川 葉自由詩409-3-20
盲目の象- 小川 葉自由詩4*09-3-19
知らない大人- 小川 葉自由詩609-3-16
街になった家- 小川 葉自由詩5+09-3-15
意識の手紙- 小川 葉自由詩509-3-14
ある晩、春は- 小川 葉自由詩509-3-10
春の似顔絵- 小川 葉自由詩709-3-8
- 小川 葉自由詩409-3-7
美しい夕暮れ- 小川 葉自由詩709-3-6
兄からの手紙- 小川 葉自由詩409-3-4
とおい水- 小川 葉自由詩15+*09-3-3
航海- 小川 葉自由詩1009-2-28
ふるえる糸- 小川 葉自由詩4*09-2-25
- 小川 葉自由詩809-2-24
ブルーデビル- 小川 葉自由詩2*09-2-22
遠距離バス- 小川 葉自由詩509-2-21
ロボット- 小川 葉自由詩4*09-2-20
おといれ- 小川 葉自由詩709-2-19
そらのとこ- 小川 葉自由詩1009-2-18
light_the_light- 小川 葉自由詩6*09-2-15
足りなくて、見つめ合えば- 小川 葉自由詩4*09-2-14
歯磨き粉- 小川 葉自由詩109-2-8
素数- 小川 葉自由詩409-2-5
母さん- 小川 葉自由詩409-2-3
おとなの事情- 小川 葉自由詩209-2-2
透明宣言- 小川 葉自由詩5+*09-2-2

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