もはや何にも感じませぬ

他人が何を言つたつて

まるで水を飲んでいるやうです


そのくせ気分は沈んでいて

むつと口を結んだまま

全てを見て見ぬふりばかり



少しばかりの優越感と

溢れんば ....
背骨のひとつひとつが
はっきりと「かなしい」と言っていた
自転車の上は 夜

星の流れる音は多分
ゆっくりと漕ぐ車輪の音に似ていた

あの夜に

22年と半年生きたことで
とても重 ....
ここではまるで反転したかのように
辺りは真っ暗で影だけが白い
「言葉」という絵の具を
ぼくたちの真白い影に落として遊ぶ

「あい」は心臓になり
「くう」は胃になり
「ほしい」は ....
何かがちょっとおかしい
あなたも
わたしも
穴の開いたバケツで水を汲んでるみたい
すくってもすくっても満たされないの
何かがちょっとおかしい
あなたも
わたしも
「遠い親戚です」と呟きながら
脂ののった秋刀魚を食べる
身を骨から器用に削いで
大根おろしをちょんと乗せて
神経質に醤油を垂らして
「遠い親戚です」と呟きながら
秋刀魚の塩焼きを食べている ....
オレンジジュースを買う。

嗚呼、わくわくするぜ。この世は全く無意味だが、俺はオレンジジュースを買って飲む。


誰も邪魔はできないだろう。
明日もし

 京都が海に沈むなら

  鈴虫寺で バルサンを焚く
桜島

あいつは

男だ
おおきく吸い込んだ
この世界の何かが
わたしの中で今
その命を終えようとしないままで

だれかの心に入りたくて
いつだって柔らかに拒絶
知ってることと知らないことがあること
わたしは勿 ....
どのページが
めくられたのか

あまりに細い指先は
忙しさの数だけ
忘れてしまう

それがつまりは
ふたりであることの
やさしさを
難しく
する

純粋であるほど
不確かに ....
ユンケルの細いストロー 缶詰のさくらんぼを食べて
その種を庭に植える私を
君が笑った
「その種は芽を出さないよ」
そう言って笑った

正しいことが好きな君は
合理主義を重んじる君は
いつだってそんなつまらない ....
これでもか 笑えるめーる 君にそーしん きみと僕 ゼリーポンチと珈琲と

喫茶ソワレのブルーの中に
さよなら

気泡みたいなことばを
無造作に夕暮れに飛ばしてみると
橙にすっと溶けていったのは
声が震えていたせいかもしれなかった

車輪の音、渇いた
ペダルを思い切り踏みしめて
陽炎 ....
体の傷は

ばんそうこう貼って

内側に押し込めてると

湿ってなかなか治りにくい

さらけ出してしまえば

乾燥して早く治る



心の傷も


案外お ....
行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた


振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる


今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている


「いつも利用する ....
惰性で生きている
其の銃口はチョコレートで塞がっている
テレビでピエロが首を吊る時代に
ドアを叩く
憂鬱はもう止まらない

ロックンローラーは死んだ 右手に一輪の薔薇を握って
最後に音を ....
空の意味がない タン、と小気味よく
鼻先の時間は切って捨てられてしまった
あたしはきっと
カチカチのパンに 申し訳程度に塗られた
バター、なのだろう

いつからハムじゃなくなったのか
覚えていない けど ....
黒い顔をした羊のくびすじに
抱きついて
ゆっくり数えている
通り過ぎてゆく星の数がそのままわたしたちのへだたりの時間でもある
シルク
流れていった
じぶんを失ってゆきたい
シルビア、
 ....
撃ってさ
食ってさ
寝てさ

起きてさ
切なくてさ
泣いてさ
それが何を解決するわけでもなくてさ
辛くてさ
考えてさ

猟、やめますってさ
言ってさ
銃を返してさ
昨日撃っ ....
目を閉じれば、朝が来ないかも知れない。

明日、が、無くなってるかも知れない。

俺、が、亡くなってるかも知れない。

世界、が、失くなってるかも知れない。

次の幕開けを待つ、暗闇の ....
考えが考えになる前の
弱くふわりとした場所の
まるい{ルビ柔毛=にこげ}に浮かぶまぶしさ
手のひらにのる
手のひらを吸う


ふたつに分かれた音のひとつが
もうひとつの背を ....
{引用=



 明け方の空に
 白鳥座は見えないのですが

  九月なら9時ごろ
  天頂に見えます




あるとき あの人は
白鳥に呑まれた魚だった
その十字架にぶ ....
日の当たる柵の上に座っている
町に何匹ものこがねむしは
踏み潰れて
鉄の車輪の
切りつける音は輪を描いている
灰とか
羽を
風が吹いたらめくり上げて
ひとつ眠って
目を覚ます頃には
 ....
わたしはニュースを見た
あたらしく建てられた家の
正午の寝室の小さなテレビで
あの日から時は止まっている
止められたのだ
動くこともない
三十年ものあいだ
沈黙したままで
少しばかりの ....
  鈴虫が鳴いている
  求め合う淋しさの塊
  夜闇が僕をそっと押し包む



  黄金の月が揺れている
  煙のような薄い明日
  きりなく君を探し続ける



  ....
声というのは
ふるえです
静かな水面に
小石を一つ
落としたような

円く広がる
その道のりで
小さくか細く
なりはしても
どこまでもどこまでも
同心円状に続いていく
とてもタ ....
高架橋の両端にある平和堂と近鉄を
駅前ロータリーに群がるくるうまを
白眼を
スカートを

高架橋の両端にある平和堂と近鉄を
駅前ロータリーに群がるビルディングを
アスファルトを
三角に ....
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