折れ曲がった空に
草野春心



  その日 空は折れ曲がっていた
  梯子の上ではくたびれた猫が
  真昼の光を嫌になるほど浴びていたし
  グラスに注いだ麦茶は埃を被りつつあった
  


  忘れ物はのこさないでくれ
  煙草ばかり吸っていた しけた部屋で
  剥がしたポスターの痕みたいな
  そんな顔をして微笑むのは
  きみの退屈な恋人に向けてだけにしておいてくれ



  テレビには 大嫌いな野球中継
  中途半端な戦力差だが赤いユニフォームの方が勝ちそう
  折れ曲がった空から送られてくる光たちは
  その色や角度を少しずつ変えてはいるが
  基本的に 誠実で
  健全で
  穏便そのもの
  だからそんな顔をして微笑んでも
  無駄なんだ 幾つになっても




自由詩 折れ曲がった空に Copyright 草野春心 2014-04-27 10:51:29
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