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‘帰っていけばいいよ’ 風は囁く
蝉の亡骸を無造作に 転がして
叢の端に 吹き寄せた月夜
またひとつ失った 夏の終わりに


冷え始めた孤独は
あたしを そっとしておいてくれない
 ....
透明な木漏れ陽が ころころと
転がっている 密やかな苔の森に
生を終えた 蝉が仰向けに凝然と
夏の終わりは こっくりと乾き始めた


風が流れて 何かを囁いて過ぎた
手を繋いでいたよ ....
突然の夕立が 
アスファルトに湯気を立てて 
逃げ込んだ バス停の屋根
あたしはスカートを拭いていた


飛び込んできた
雷の音と いっしょに
きみの白いカッターシャツ
どきどき ....
布団は ばあちゃんの香りがしている
少し脚が不自由だけど 元気で
働き者のばあちゃんが干しておいてくれた
布団は日向の香りが充満している


ばあちゃんは もう年だから
同じ話を ....
夏の終わりに芽が出た
タネなしスイカの芽

「おいしい! タネなしスイカ」
なんて表示してあったのに
割ったスイカには
遺伝子の反乱で 何粒かの黒点

「過剰表示やんねえ」
なん ....
子供が泣いている
蝙蝠はやっと 暗い棲家から出て
超音波にのって 藍色の虚空を回る
バネ仕掛けの翼で 熱を切って

抱き上げてあげないと
キッチンの窓から するりと
アメーバみたいに ....
小さな青い駅で
列車を待っていた
朝の図書館に出かけて
行き先を調べてきたのに


真鍮のカランに しがみついている
蝉の抜け殻を見つけた瞬間
どこが あたしの行き先なのか
分か ....
深い青の湖をふちどる
あざやかな緑の白い林
いたずら好きな妖精たちが
短い夏を跳ねまわる棲み家


あなたは淡い緑のドレスと銀の靴
さざなみを立てる風に吹かれるままに
いのちをよろ ....
夢の続きに揺蕩いながら 目を凝らした
鶏小屋の薄暗がりに 白い卵を探した
ゆるやかな夏の朝に 竈の煙は薄らいで
元気なお釜は 薪の爆ぜる音に合わせて


谷を抜ける風は 川面に小魚を追 ....
夕立の後 虹がかかった 山に
川は澄んだまま 流れていた
やさしい人が暮らしていた 美しい村に
笹の葉はしゃらしゃらと 風に語っていた


肌に川の香りを残して
葉洩れ陽は丸く ころ ....
透明な大気に満たされていた
谷あいの小さな あの村に
あたしの夏は いつも帰っていった
斜面のトマト畑で 見上げた空に


悲しみはなかった 日暮れの蜩の声にさえ
秘かに憧れていた  ....
夕焼けが一滴
グラスのソーダ水に落ちる
オレンジ色の泡が 壊れて跳ねて
テーブルに無数の 黒い点を残した

その夜
洋燈の芯は燃え尽きた
実りのない会話は 肌に
染み付く灯油の 匂 ....
金色のひかりが
静けさの青を深くする

ねむっている
あなたのまつげに
いとおしい夢のかけら
燃えのこる 十七夜

はじめて あなたに
抱きしめられた
風が囁く笹の月夜
まる ....
街の喧騒に負けないように
大きな声で叫びつづけた
まわりが大急ぎで進んで行くから
似合わない早足で歩きつづけた


聞き流してきた やさしいささやき
見過ごしてきた かわいい野の花
 ....
牛が草を食む音が 聞こえてくる
静かな午後の平和に 仔牛は乳房に寄り添う
サンエチエンヌの草原で 見渡している
あの日 旅する雲は東へ アルプスを越えて


熱に浮かされたような 隊列 ....
未亡人は すすり泣いている
孤児は 不安な目で放心している
やわらかな雲の 灰色の朝
日が沈むまでの 茫漠とした一日


ネクタイを締めた賢者どもは
気の利いた冗談を交し合って 笑う ....
アックア・アルタの夜
サンダルを脱いで 広場を歩いた
さざ波を切って進む 船の気分
月はぽっかりと バシリカの塔に突き刺さった


小橋のたもとで 割れたガラスが
きらりと光る リス ....
黄昏の土手道の 足に触れる草の香り
手を引かれて ゆっくりと帰り道
新月の宵 目をこらして 気がつくと
お地蔵さまの前掛けに 灯り始める


祖母の乾いた 日なたの匂いが
「淋しかあ ....
国境に近い南の町に続く
砂埃だらけの道を
重い荷物を担った
若い兵士たちが行く

きみのしあわせは
ほんとうにそんなところにあるの?

きみが持っているはずの
すばらしい力や瞳の ....
街灯は 歌いもせずに
夜のムフタール通りへ
きみは行くべきじゃない
と 投げ捨てるように言う

ホテルの玄関で
前脚にギプスをした猫が
にやっ,と笑った気がした
ちょっと不敵な眼
 ....
かららん
ころろん

約束してた夏祭り
浴衣の帯は苦しいけど
少し急ぐ下駄の音が好き

髪をあげた少女の瞳に映る
裸電球のあこがれ
くっきりと 影法師が揺れる

うす暗闇で手 ....
夜が明けたよ
夜更けまで降っていた
淋しい雨も いつの間にか上がって
ギャラリーの軒下に逃げていた鳩たちが
ライオンの頭に集まり始めた

いろんなことがあったんだよ
いわれのない憎悪 ....
なだらかな丘を映した 湖はのどかで
ラズベリーのいばらに 縁取られた小径で夢見た
ふと目で雲を追う詩人のこころには
気の遠くなるような 循環が刻まれていただろう

自然などという言葉が  ....
移動遊園地のメリーゴーラウンド
イルミネーションに 子供が歓声をあげる
いつまでも追いつかない 振り向いた笑顔
もどかしい楽しさを思い出す


丘の上の石段に座って 
町並みの彼方に ....
まるくなった猫の眼 チャイナドレスの黒い髪
いつものことのように 振舞う
カフェは満員だったけど 手を上げると
席を作ってくれる シェルブールから来たギャルソン


もう 彼の故郷に行 ....
火の山は
融けた岩と灰を降らせた
あたしのこころに壁を作った
驟雨の日 傘を置き忘れてきた


古びた駅舎のベンチにぶら下がって
薪ストーブの熱に 涙は乾いて小さな結晶に
誰かが  ....
泉の底は 緑の湖につながっている
透明な砂 さらさらと音をたてて
樹液の雫 ガラス細工のように
あたしの言葉は 沈黙 拒絶する

森や小川は
たくさんのことを囁きかけ
眉間のあたりが ....
元素は廻る
この星の総物質量は
減ることはあっても
増えることはないのだから

自然は元素を使って
様々なものを作り,壊して,また作る
海底に蠢く蟲や軟体動物
土中のバクテリア
 ....
静寂のクレーターの縁に座って
古いモノクロの写真を見ていた

塚山は緑に覆われて
そよ風は 海の方向から
茶色い戦いの記憶は 靄の彼方に
透けるシルクに描いた 絵物語

善悪の彼の ....
枯れ井戸の底に蹲って
見上げている 星空
赤い色の流れ星が 切り裂く

家路を急ぐ 羊飼いの少年
今朝通った道は,塞がれている
黒々とした金属光沢の壁
青ざめた月の光ほど孤独

 ....
殿上 童さんの藤原絵理子さんおすすめリスト(169)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
Clair_de_lune- 藤原絵理 ...自由詩6*14-9-1
追憶に- 藤原絵理 ...自由詩10*14-8-29
夕立の後の香り- 藤原絵理 ...自由詩614-8-17
盆帰り- 藤原絵理 ...自由詩914-8-15
西瓜- 藤原絵理 ...自由詩614-8-13
夕暮れの魔女- 藤原絵理 ...自由詩414-8-2
ひとつの夏に- 藤原絵理 ...自由詩514-7-26
湖_妖精- 藤原絵理 ...自由詩214-7-23
夏の歌III_朝- 藤原絵理 ...自由詩214-7-21
夏の歌II_風景- 藤原絵理 ...自由詩214-7-18
夏の歌- 藤原絵理 ...自由詩814-7-17
Peace- 藤原絵理 ...自由詩514-7-14
月夜恋歌- 藤原絵理 ...自由詩114-7-13
風に吹かれて- 藤原絵理 ...自由詩814-7-9
Atom_Heart_Mother- 藤原絵理 ...自由詩7*14-7-1
宮殿で- 藤原絵理 ...自由詩4*14-6-29
広場- 藤原絵理 ...自由詩3*14-6-28
蛍の歌- 藤原絵理 ...自由詩9*14-6-26
国境の橋- 藤原絵理 ...自由詩4*14-6-23
巴里- 藤原絵理 ...自由詩5*14-6-20
夏祭り- 藤原絵理 ...自由詩9*14-6-18
広場の朝_Ldn.- 藤原絵理 ...自由詩5*14-6-17
ピーター- 藤原絵理 ...自由詩8*14-6-16
丘のソネット- 藤原絵理 ...自由詩7*14-6-14
ノクチュルヌ- 藤原絵理 ...自由詩7*14-6-12
高原の駅に- 藤原絵理 ...自由詩6*14-6-11
緑のソネット- 藤原絵理 ...自由詩5*14-6-10
自然ということ- 藤原絵理 ...自由詩4*14-6-9
月世界- 藤原絵理 ...自由詩5*14-6-6
流れ星の夜- 藤原絵理 ...自由詩6*14-6-4

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