高原の駅に
藤原絵理子


火の山は
融けた岩と灰を降らせた
あたしのこころに壁を作った
驟雨の日 傘を置き忘れてきた


古びた駅舎のベンチにぶら下がって
薪ストーブの熱に 涙は乾いて小さな結晶に
誰かが あたしの名前を呼んでいる
損なった物は 二度と元に戻れない


雨だれが 地面から掘り出す
角の丸くなったガラス片は眼球
白く細い石灰石は骨 壁の中の水溜りに


列車は定刻通り 再び誰もいなくなった
行き先を失った いくつもの悲しみが
雨に濡れたアジサイの横に佇んでいる



自由詩 高原の駅に Copyright 藤原絵理子 2014-06-11 22:09:34
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