蛍の歌
藤原絵理子


黄昏の土手道の 足に触れる草の香り
手を引かれて ゆっくりと帰り道
新月の宵 目をこらして 気がつくと
お地蔵さまの前掛けに 灯り始める


祖母の乾いた 日なたの匂いが
「淋しかあない 淋しいことなんぞ」
語りかけてきた せせらぎの合間に
藍色に霞んだ竹林が 闇に沈む前に


過去の方角から
笹を手にした子供らが駆けてくる
あたしを追い越して 未来の方へ歓声が遠ざかる


笹の葉を透かして洩れる 
去って逝った人の面影が 揺れる
遠い遠い思い出に 微笑だけが浮かぶ


自由詩 蛍の歌 Copyright 藤原絵理子 2014-06-26 18:37:00
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