ピーター
藤原絵理子


なだらかな丘を映した 湖はのどかで
ラズベリーのいばらに 縁取られた小径で夢見た
ふと目で雲を追う詩人のこころには
気の遠くなるような 循環が刻まれていただろう

自然などという言葉が 気恥ずかしいほどの
さりげない無限のくりかえし 太陽の周りを
地球がまわった回数だけ 年輪はつくられる
命あるものに与えられた恩恵と架けられた十字架

なんていう氷河のため息
削られた岩はかつて 虚空で核融合反応を
企んで許されなかったものの残骸

「ほんの一瞬だよ」 と風は笑う
目に見えぬ柔らかい指先で 岩を削る
白い柵ごしに茶色のウサギがこっちを見ている


自由詩 ピーター Copyright 藤原絵理子 2014-06-16 23:07:11
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