広場
藤原絵理子


アックア・アルタの夜
サンダルを脱いで 広場を歩いた
さざ波を切って進む 船の気分
月はぽっかりと バシリカの塔に突き刺さった


小橋のたもとで 割れたガラスが
きらりと光る リストランテの裸電球に
あたしが残してきたものを
思い出させる フルートの音色 流れる


悲しみの壁に 消えかけた文字
予言者の言葉は ひび割れて 月の光に
剥がれ落ちる 運河に沈んで 海に流される


素足に触れた 甃の意外なぬくもり
見回せば ここは宮殿の広場 
箒に乗った魔女が 低空飛行でカッフェに入った


自由詩 広場 Copyright 藤原絵理子 2014-06-28 22:54:02
notebook Home 戻る