西瓜
藤原絵理子


夏の終わりに芽が出た
タネなしスイカの芽

「おいしい! タネなしスイカ」
なんて表示してあったのに
割ったスイカには
遺伝子の反乱で 何粒かの黒点

「過剰表示やんねえ」
なんて言いながら
庭先で ぷっぷっと
タネを吐き出しながら食べた

そのタネが
夏の終わりに芽を出して
秋の終わりには
庭を占領してしまった

冬の寒さにも負けず
大雪に埋もれても 凛として
伸びて枝分かれして
あたしの庭を覆いつくした

春になると
工事現場のヘルメットほどの
黄色い花をたくさん咲かせ
どれほど大きい実が? と期待した

また夏が来て
タネなしスイカが実った
夕暮れに 巨大な実ははじけて
町中に黒い小さなタネを積もらせた

「なんか,悲しいね」
「高度資本主義社会やからなあ」
あたしたちは
遺伝子組み換えの冷奴をつついた


自由詩 西瓜 Copyright 藤原絵理子 2014-08-13 23:00:19
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