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おなじ水が
おなじ水のほうへ
ながれてゆくように
僕らは
さかなになりました

僕らはいつしか
濡れたからだで
水辺に立ち尽くしていました

はじめて会った
気がしませんで ....
 
あなたと
ともに死ぬつもりになって
恋をしたい
というときの
あなたとは
あなたなのか
あなた以外なのか
そのどちらでもないのか
わからないまま
あなたと恋をしたい
わたしが ....
 
無鉄砲な人ほど
やさしい人はない
人を撃つことの
痛みを知ってるから

無鉄砲な人ほど
ひどい人はない
人を撃つことで
守ることができたのに

社会は答えを
ただのひとつさ ....
 
木枯らしに吹かれて
落葉たちが駆けていきます
その先で
誰かが待ってるかのように
子供たちが
追いかけていきます

それは
生きるための
練習のようにも見え
あるいはいつか死 ....
 
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった

ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたよ ....
 
故郷での暮らしは
けっして貧しいものではなかった

手に入るものは手に入り
手に入らないものは手に入らない
ただそれだけだった

小さな都会で暮らして
もう二十年になるけれど
 ....
 
僕と妻にとてもよく似ていて
そのどちらにも
似てはいない
それが彼なのだ

君はいったい
誰なの
と息子の目を見てそう問うと
不思議な顔をしてる

ふと思い出す
僕と妻は
 ....
 
ひとさし指で手紙を書く
砂のうえに
潮が引くときだけ
ゆるされる

返事が来る
潮が満ちるときだけ
あなたから
光と光の
波にさらわれる

こぼれた文字の
貝殻をひろう
 ....
 
そういえば
結婚式しなかったね
ときどき妻が言う
僕は聴こえないふりをする

本当に
妻がそう言ったのか
確証のないまま過ぎてしまう
日々の幻聴のように

出会ってから
十 ....
 
羽を跳ねる
パネルを器用にとじて
鳥は止む

空は青く
そのかなたに生えた
おなじ色だけのソーラーを
背中で掴もうとする

てのひらを合わせる
人と人にも似た
ぬくもりから ....
 
さわいでる
奪われたものを奪うため
あの山なみの
とても深いところで

秋の次は冬がきて
春はかならずやってきて
めぐりめぐって谷底を
ながれる夏の
水はもうな ....
 
獣たちがさわいでる
奪われたものを奪うため
あの山なみの
とても深いところで

秋の次には冬がきて
春はかならずやってきて
めぐりめぐって谷底を
ながれる夏の
水はもうなかった ....
 
斜路を行く
山脈をのぼりつめて
そのむこうには
街がある

ひとは呟く
おさない子供のように
どうして汽車は
ひとを乗せて行ってしまうの

はく息が白い
煙のように
あら ....
 
自転車を漕いでる
全速力で
ふみきりまで
息子を荷台にのせて
遠くから汽笛の音が聞こえる
蒸気機関車だ!

夢をみていた
眠りにつくまで
SLを夢みる
少年だったはずなのに
 ....
 
たくさんのくだが
生き物としてひとつひとつ
呼吸してる
反面そこにはいつも
ニヒルな顔して詰襟を着た
兄がいた

たぶん
高校生だった
彼のことを今は誰に聞いても
知らないと ....
 
ぶるぶるとふるえてる
風もないのに
双葉のような腕を
ふるわせて

僕の息子だ
それはまるで捨てられたように
道端に生える雑草と
何がちがうというのだ

それが僕の息子である ....
 
雑音が聞こえる
鞄の中から
聞こえる声を聞きながら
母は呆けた

雑音が聞こえなければ
昔のような
声で母は話した

鞄の中から
雑音が聞こえると
途端に母は
声を濁らせ ....
 
こころが風邪をひくと
遠いどこかへ行きたくなる
誰かとバスを
待ちたい気持ちになる

まだ幼かった
あの日の僕と母のように
むかえに来たのが
バスではなかったとしても

見知 ....
 
いつからか
真夜中になると
ダンクシュートの途中で
目を覚ます

眼下には
シュートを終えて
遠いところへ歩きはじめる
祖父がいた

ボールがやわらかく
バウンドしながら
 ....
 
駅のホームで
乗り換えの汽車を待つ
少し味の濃い
月見そばを食べながら

かけそばにしようと思って
左ポケットを探したら
小銭が思ったより入ってたので

長い線路を
そばのよ ....
 
本家にはいつも
猫がいた
本家とよばれる所には
いつだって
猫がいるのだった

お盆とお正月に
本家に帰ると
やはり猫がいた
けれどもその猫は
おなじ猫ではなかった

お ....
 
父さんと
楽天の試合を見にいった
けれども本当は
野球よりも球場を一周する
小さな汽車に乗りたかったから
父さんは入場券をポケットにしまって
試合が終わるまで
何度も何度も汽車に乗 ....
 
秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる

えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う

目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて ....
 
見た記憶と
見たかもしれない記憶を
理解しあおうなんて思わないほど
ふたりで見つめ続けてしまう
ひとつの景色
 
 
庭の土を見てる
花ではなく土を
理由もわからずに

そこに横たわる
土の言葉で
言葉などなかったように
懐かしく対話する

知らない時を生きた
土の中に
句読点をさがしたら ....
 
孤独の森に迷いこんだなら
出口を見つけることは
容易ではなかった

孤独の森を
歩き続けることは
苦痛でも
それは森のせいではなかった

森は伐採され
孤独は終わりのない
 ....
 
ニュースを繰り返す
缶蹴りの午後
配線のため

テレビを消す
敗戦が聞こえる
空に花が咲いてる

母はアンテナ修理する
一人しかいない
父を受信するため

カランダッシュ ....
 
はじめて
家族旅行に行った
夜の宿で
そこは二楽荘というんだけれども
楽しいことは
一つや二つどころではなく
三つも四つも
心配など
なにもなかったから
いくらでも夢中にはしゃ ....
 
やわらかいものが
やわらかいものに抱かれ
育むものが
育まれたことをよろこびとした
この命の果てにある
未来がまだ懐かしかった頃

時は懐かしく
時はまた経験として
かつて見た ....
 
もう会わない人たちが
改札を通過する

昨夜知らない人たちと
あんなに
飲んだはずなのに

今朝はやけに顔のない
彼らの名前を
だれも知らない
 
あおばさんの小川 葉さんおすすめリスト(445)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
おなじ水のほうへ- 小川 葉自由詩1208-11-23
「無鉄砲社会読後感」の読後感- 小川 葉自由詩608-11-21
無鉄砲社会- 小川 葉自由詩6*08-11-19
子供たちの秋- 小川 葉自由詩708-11-17
一億年前の休日- 小川 葉自由詩2008-11-2
手のひら- 小川 葉自由詩708-10-29
不思議なこと- 小川 葉自由詩508-10-28
人指し指から、お願いします- 小川 葉自由詩12*08-10-20
聴こえないふり- 小川 葉自由詩12+08-10-17
ソーラーパネル- 小川 葉自由詩9*08-10-11
世界山脈〔第二稿〕- 小川 葉自由詩208-10-9
世界山脈- 小川 葉自由詩408-10-8
斜路- 小川 葉自由詩2*08-10-8
臨時列車- 小川 葉自由詩1008-10-6
影のない犬- 小川 葉自由詩3*08-10-4
赤児と緑児- 小川 葉自由詩2*08-10-2
- 小川 葉自由詩17+*08-9-29
バス停- 小川 葉自由詩4*08-9-29
真夜中にダンクシュート- 小川 葉自由詩2*08-9-27
左ポケット- 小川 葉自由詩708-9-26
毛を舐める猫- 小川 葉自由詩7*08-9-23
僕らの休日- 小川 葉自由詩16*08-9-17
微炭酸- 小川 葉自由詩11*08-9-14
ひとつの景色- 小川 葉自由詩308-9-11
花と土- 小川 葉自由詩508-9-2
孤独の森- 小川 葉自由詩3*08-9-1
カランダッシュと電波- 小川 葉自由詩4*08-8-31
未来がまだ懐かしかった頃- 小川 葉自由詩508-8-28
未来がまだ懐かしかった頃- 小川 葉自由詩708-8-28
大都会- 小川 葉自由詩308-8-21

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